低コストの連続穿孔機による「エルエスカッター工法」を開発・実用化

2009年05月28日

株式会社熊谷組(取締役社長 大田弘、本社:東京都新宿区)はかねてから「効率的割岩工法の開発」の研究を進めてきました。その一環として硬質岩盤を機械掘削でも効率的に施工でき、かつ掘削時の振動・騒音を低減する割岩工法に必要なスリット造成を容易にかつ低コストで行えるようにした独自の連続穿孔機(エルエスカッター:特許登録済み)を三菱マテリアル株式会社(取締役社長 井手明彦、本社:東京都千代田区)と共同開発、数現場での試験施工により施工性、耐久性に関する改善をしてきました。このほど国土交通省九州地方整備局発注の佐賀497号山彦トンネル新設工事の坑口部硬岩掘削区間に本格採用しました。(トンネル名称は仮称)

1.背景

硬岩地山で山岳トンネルなどの岩掘削工事を行う場合には一般的に威力の強い発破工法で施工しますが、工事に伴う騒音・振動を抑制して周辺環境に与える影響を小さくすることを目的として機械掘削工法が採用される場合、掘削困難あるいは生産性が極めて悪化することになります。切羽面にスリットを設けることで、掘削効率向上や騒音、振動の低減が実現できますが、工法コストが問題でした。
そこで、低コストでスリットが造成できる工法の開発をめざし、汎用の削岩機に簡単に装着できる独自の連続孔穿孔方式によるスリット造成機を利用したエルエスカッター工法を開発しました。

2.従来技術との比較

従来のスリット造成機では、図-1の上段に示すように穿孔する孔は隣接する先行孔の一部分とラップすることで、スリットを形成する方式でした。この場合、1回の穿孔動作でできるスリット幅は穿孔径からラップ長を差し引いた長さしかできませんでした。
本システムでは、図-1の下段に示すように、先行する孔に平行して穿孔しながら孔間をリニアカッターで破砕する当社独自技術です。この方式により、1回の穿孔動作でできるスリット幅は穿孔径+孔間と従来方法よりも長くすることが可能となり、スリット造成時間の短縮、施工の効率化を図ることができます。

図-1  スリット形状の相違

3.従来技術との比較

独自の連続孔穿孔方式により低コストでスリットが造成できるエルエスカッターの主要構成部品を、図-2に示します。
本システムは、先行する孔にガイドパイプを挿入、平行して穿孔しながら孔間をリニアカッターで破砕してスリット造成する独自方式を採用しています。
この装置は、ガイドパイプと穿孔ビット・ロッド・アダプタおよびリニアガイドで構成されています。
このエルエスカッターは、トンネル現場で一般的に使用されている削岩機ジャンボのガイドセル先端へ安価な治具で簡単に取り付けて、使うことができます。

図-2 連続穿孔機エルエスカッターの構成

4.今後の展開

新開発の連続穿孔機により多彩なスリットパターンを造成し油圧くさび、油圧ブレーカあるいは高電圧破砕など、条件に応じて破砕方法を選択して効率的に割岩を行うことができ、かつ騒音・振動を低減できる環境に優しい当システムを積極的に提案していきます。
さらに、これらの技術の応用により一般の発破工法における芯抜き部および周辺孔へスリットを適用することで薬量軽減や振動、騒音低減への技術展開も推進していきます。

図-3 割岩用スリットパターン(例)
図-4 バーンカットを用いた分散発破パターン(例)
写真-1 切羽でのスリット状況
写真-2 ジャンボによる穿孔状況
写真-3 ブレーカによる掘削状況
写真-4 ガイドセル先端に取り付けたエルエスカッター
写真-5 造成した独特のスリット形状

5.山彦トンネル 工事概要

  工事名:佐賀497号 山彦トンネル新設工事
  発注者:国土交通省九州地方整備局
  施工者:㈱熊谷組
  工 期:平成20年3月~平成21年12月
  工事場所:佐賀県唐津市北波多下平野~行合野地先
  工事規模:トンネル延長:L=957m
          幅 員:9.5m
        内空断面積:65.2m2

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 株式会社 熊谷組  広報室
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 担当:石賀 慎一郎 (電話03-3235-8155)

[技術に関するお問い合わせ先]
 株式会社 熊谷組 土木事業本部 機材部
 担当:北原 成郎(電話 03-3235-8627)