地震時におけるパイルド・ラフト基礎の実用的な評価技術解析ソフト『ktt-piled-h』を開発

2009年01月27日

株式会社熊谷組(取締役社長:大田弘 本社:東京都新宿区)、株式会社テノックス(代表取締役社長:青木功 本社:東京都港区)、株式会社トーヨーアサノ(代表取締役社長:植松眞 本社:静岡県沼津市)の3社は、広島大学名誉教授冨永晃司先生の指導を仰ぎ、地震時におけるパイルド・ラフト基礎の実用的な評価技術『解析ソフト(ktt-piled-h)』を共同で開発しました。本評価技術の開発により、これまでの長期鉛直荷重時「解析ソフト(ktt-piled-v)」に加え、地震時を含めたパイルド・ラフト基礎の設計提案を可能としました。

1.開発経緯

 パイルド・ラフト基礎とは、直接基礎(ラフト)と杭基礎(パイル)を併用し、両者で建物を支持する基礎形式で、支持杭に代わる合理的な基礎形式です(図1参照)。パイルド・ラフト基礎は、低層建物で堅固な支持地盤が深い場合などに数多く採用され、最近では中層~高層建物にも適用されています。
 パイルド・ラフト基礎を採用する場合、直接基礎および杭基礎の各支持性能に加え、それら相互間の影響を考慮できる評価技術(解析ソフト)を用い、基礎全体の沈下量および杭応力などに対する検討が必要となります。熊谷組では独自に開発した解析ソフトを用い、これまでに6件の個別物件に適用してきましたが、評価技術は鉛直荷重時での適用に限られ、地震時における水平荷重はすべて杭基礎に負担させていました。今回の地震時におけるパイルド・ラフト基礎の解析ソフトの開発により、地震時(図2参照)を含め直接基礎と杭基礎の両方の支持力を考慮した評価が可能となり、これまでに比べ杭径、杭本数の低減を図ることが可能となります。その結果、杭工事に伴うCO2排出量の低減など環境負荷の低減にも役立ちます。

図1 鉛直荷重作用時におけるパイルド・ラフト基礎の支持機構
図2 水平荷重作用時におけるパイルド・ラフト基礎の支持機構

2.開発プログラムの特徴

今回開発した解析ソフト(ktt-piled-h)の主な特徴は、以下の通りです。
  ・解析方法は、地盤の弾性論をベースとした境界要素法に有限要素法(杭、ラフト部分)を
   組合わせたハイブリッド法を用い、パイルド・ラフト基礎の挙動を短時間で精度良く解析
   できる。
  ・鉛直荷重時の入力データおよび解析結果を水平荷重時に適用することができる。
  ・ラフトのすべり挙動、杭の水平反力の塑性化など原位置実験で見られた現象を忠実に再現
   できる。また、地盤および杭材の非線形性を考慮することも可能であり、小地震から大地
   震にも対応可能である。
  ・地盤の構成として多層地盤に適用可能である。
  ・杭基礎には場所打ちコンクリート杭、既製コンクリート杭などあらゆる杭を取り扱うこと
   ができる。
  ・直接基礎にはべた基礎、独立フーチング基礎など各種の直接基礎形式に対応できる。

3.原位置実験による検証

 独立行政法人建築研究所との共同研究として、同研究所の敷地内において鋼管杭(直径11.43cm、長さ5m)を用いたパイルド・ラフト基礎を設置し、水平荷重時の挙動を確認するために静的載荷実験を行いました。
  実験ではラフトのみによる直接基礎に比べ、パイルド・ラフト基礎では水平支持力が向上することなどを確認しました。また、本解析ソフトによる実験結果のシミュレーション解析を行い、パイルド・ラフト基礎の荷重変位特性、ラフトと杭の荷重分担割合など精度良く再現できることを確認しました。

4.今後の予定

 パイルド・ラフト基礎に用いる直接基礎のスラブ形式と杭種の組合わせは非常に多岐にわたりますが、建物の用途・構造・規模、地盤性状に応じた合理的な提案が要求されます。本解析ソフトを活用し、最適なパイルド・ラフト基礎の提案ができるように設計システムの確立を目指していきます。
 また、今回開発した解析ソフトはパイルド・ラフト基礎に限らず、他の併用基礎(例えば同じ建物でも低層部分は直接基礎、高層部分は杭基礎など)にも適用が可能です。そのような複合な基礎形式の設計にも役立てていく予定です。

[お問い合わせ先]
[本リリースに関するお問い合わせ先]
株式会社 熊谷組  広報室
室長:藤島 幸雄
担当:石賀 慎一郎 (電話03-3235-8155)
[技術に関するお問い合わせ先]
 技術研究所 建設技術研究部 地盤基礎研究グループ
  部長:渡辺 則雄
  担当:森 利弘 (電話03-3235-8721)