大量培養可能な独自微細藻類株を発見、数トン規模での屋外大量培養に成功

2024年03月22日

株式会社熊谷組(取締役社長:櫻野泰則)は、新たな分野への挑戦として、資源循環・持続可能性という観点から微細藻類に着目し、技術開発に取り組む中で、バイオマス生産性の高い独自藻類株を発見しました。さらに、数L 規模から段階的に生産評価試験を行った結果、数トン規模での屋外大量培養に成功しました。
当社は、2010年建設業界で初めて「エコ・ファースト企業」に認定され、環境への配慮の一環として、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを推進しています。具体的には、脱炭素社会への移行推進のための目標として、事業におけるCO2の排出削減目標を定めているほか、循環型社会の形成推進のための目標として3Rの推進や建設現場における建設混合廃棄物の削減に取り組んでいます。今後、CO2を削減するだけでなく、CO2を固定した藻類を活用した有用物質生産や資源循環型ビジネスへの展開へ向けて研究開発を進めてまいります。

1. 微細藻類の魅力

藻類は植物と同様に光合成により増殖します。藻類のCO2固定量は陸上植物と同量(年間約1000億tものCO2を固定)とも言われています※1。そのため、脱炭素社会を目指す現代において、藻類に関する研究は世界中から注目を浴びているテーマの一つとなっています。

図1 藻類の可能性

また、光合成は光のエネルギーを利用して様々な物質を合成する反応であり、その生成物は各産業の原料として利用することができます(図1参照)。例えば、医薬品原料や機能性素材をメインとした医薬・健康に関連する分野(レッドバイオ分野)、食品や飼料といった食に関連する分野(グリーンバイオ分野)、燃料や化成品といったエネルギー・科学に関連する分野(ホワイトバイオ分野)などが挙げられます。これらの3分野は既存の産業分野の中での市場規模トップ3にあたり、藻類はこれだけの規模の市場に展開できるポテンシャルを秘めた産業シーズと考えています。

※1 Field et al. (1998) Science 281:237-240

2. 当社の取り組み(研究)内容

当社は藻類を軸にした資源循環型のビジネスを最終目標として、培養効率向上を目的とした流体力学的な研究や、CO2固定能の高い微細藻類の探索を行ってきました。藻類を用いたバイオマス生産において、藻類株の選定は重要な課題のひとつです。藻類株の候補として、既に商業化している藻類株、自然界から新たに採取(単離培養)した藻類株が挙げられます。前者を用いる場合は、商業化レベルの大規模培養がすでに行われており、機能性などの知見が豊富な利点があるものの、知的財産権に関する様々な制約がある上に、競合他社と差別化し、付加価値を提供することが必要です。そのため、当社は後者の自然界から新たに独自株を単離培養する方針で研究を進めてまいりました。その結果、環境変化に強く、事業化への最も高い障壁である大規模培養も可能であり、さらに、高いバイオマス生産性を有する藻類株の単離培養に成功しました(図2参照)。当社独自藻類株は、既に商業化されている微細藻類で報告されている大規模培養時におけるバイオマス生産性※2を超える高いバイオマス生産性を有することが、数トン規模での屋外大量培養試験にて実証されました(図3参照)。

※2 Sing et al. (2013) Mitig Adapt Strateg Glob Change 18:47-72

図2 独自藻類株の顕微鏡写真
図3 屋外大量培養実証試験(左:培養初期)
図3 屋外大量培養実証試験(右:培養終了時)

3. 今後の展開

現在、培養技術開発と並行して機能性評価を行っております。機能性評価において、当社独自株はグリーンバイオ分野、レッドバイオ分野への展開が期待できる有用物質を含有することが明らかになったため、実用化に向けた実証実験に取り組んでいます。本業である建設業界に抱かれがちな環境破壊やCO2排出が多いといったイメージを変革し、近年問題となっている地球温暖化、食糧問題解決や地方雇用創生の一助となるよう、社会実装に向けて邁進してまいります。

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