Virtual Reality(VR)を活用した風環境可視化技術の開発

2018年03月15日

 株式会社熊谷組(取締役社長 樋口靖)は、Virtual Reality(VR)を活用した風環境可視化技術を開発しましたのでお知らせいたします。 この技術は、流体解析とVR技術を組み合わせ、本来は目に見えない3次元の風の流れをVR空間で可視化するものです。従来の方法に比べ、ビル風の原因をより容易かつ正確に把握することが可能となり、設計品質や住環境性能の向上が期待できます。

1.開発の背景

 建物が建設されることによって変化する風環境、いわゆるビル風による問題は、設計者や事業主、そこに住まう人々にとって身近な問題です。通常、ビル風における課題は、実測や風洞実験、流体解析の結果に基づいて評価・対策が行われます。しかしながら、風の流れは3次元であり、都市部や市街地などでは複雑な流れであることがほとんどです。そのため、ビル風の検討を行う際、紙媒体の資料のように、実験・解析結果の一部分のみを切り出した2次元の情報だけでは、ビル風の全体像を把握しにくく適切な対策が容易ではない場合があります。 そこでビル風の原因をより簡単で正確に把握するため、複雑な風の流れを視覚的にとらえることができる本技術を開発しました。

2.システムの概要

 本技術は、流体解析によって得られた風速や風向のデータをVR空間で可視化することで、目に見えない3次元の風の流れを、従来の方法に比べてよりリアルにとらえることができます。

1)本技術の構成
 本技術は、「流体解析」と「VRアプリケーション(VRアプリ)作成」の二つのシステムで構成されています。 「流体解析」部分では、解析結果で得られた風速や風向のデータを指定のフォーマットで出力。「VRアプリ作成」部分で、この解析データと建物周辺の3Dモデルを用いてVR空間で風の流れを可視化するアプリケーションを作成します。アプリケーションを作成するプラットフォームには、Unityを使用し、画像を投影する端末機にはGearVRを採用しました。

流体解析:解析結果より得られる風速、風向を指定のフォーマットでデータ出力

VR作成:3Dモデル、データの読み込み /風速の流線の作成 /VRアプリ作成

図-1 イメージ図(共有データをリアルタイムに視覚化)

2)本技術の特徴
 ① 流体解析ソフトウェアに依存せずVRによる可視化が可能
  流体解析を行う部分とVRアプリを作成する部分はそれぞれ独立しており、流体解析ソフトウェアの種類に関わらず
  VRによる可視化が可能です。
 ② 専用のPCが不要な端末を採用
 機器の持ち運びやすさや使いやすさ、さらに端末機のコストなどを考慮し、サムスンのGearVRを採用しました。
 GearVRはAndroidのスマートフォンで動作するため、専用のPCを用意する必要がなく、会社から離れた場所での
 プレゼンテーションや打ち合わせへの対応が容易です。
 ③ 複数人で同時にVRによる可視化が可能
 VRアプリをLANに接続することで、複数の人が同じ空間を同時に体験でき、VR空間内を自由に歩き回ることができます。
 これにより、打ち合わせやプレゼンテーション時の出席者の意思疎通が図りやすくなります。

3.VRによるビル風の可視化事例

図-2 ビル風の可視化例(株式会社熊谷組本社周辺)

4.本技術の適用先

 本技術は、より優れたビル風対策の立案や、顧客への風環境におけるプレゼンテーションなどに適用が可能です。特に専門知識を持たない人でも、「どこでどのように風が流れるのか」「強い風・弱い風がどこで吹くのか」を視覚的にとらえることができるため、設計者や顧客との合意形成のためのツールとして、また、強風による事故防止の注意喚起のためのツールとして大いに期待できます。

5.今後の展開

 観測データと組み合わせたVR空間でのリアルタイムの風環境の可視化、Augmented Reality(AR)やMixed Reality (MR)への拡張、オンライン(WAN)化といった機能の追加を重ねて、さまざまなケースで本技術を適用できるよう検討していく予定です。

本リリースに記載している内容は発表日時点のものですので、あらかじめご了承願います。

【本リリースに関する問い合わせ先】
 株式会社 熊谷組 コーポレートコミュニケーション室 広報グループ 電話 03-3235-8155

【技術に関する問い合わせ先】
 株式会社 熊谷組 技術本部 技術研究所 環境工学研究室 風グループ 電話 029-847-7505