高品質フライアッシュを使用したコンクリートを震災復興道路工事のトンネル覆工コンクリートに初適用
2014年11月07日
株式会社熊谷組(代表取締役社長 樋口 靖)は、国土交通省東北地方整備局発注の国道45号釜石山田道路工事において、高品質フライアッシュを混和材として使用したコンクリートをトンネル覆工コンクリートに適用しました。震災復興関連の工事で高品質フライアッシュを用いたコンクリートが使用されるのは、今回が初めてとなります。
1.背景
石炭火力発電施設から排出される石炭灰(フライアッシュ)は、コンクリートの混和材として用いることにより、単位水量の低減、ワーカビリティの向上、ポゾラン反応による長期強度の発現、アルカリ骨材反応の抑制など、優れた効果を得られることが技術的に広く知られています。また、地場企業で排出されるフライアッシュをセメントや骨材の一部代替材料として再資源化することは、地産地消による産業廃棄物の削減というメリットもあります。
しかしその一方で、これまでフライアッシュの利用が促進されてこなかった理由は、フライアッシュ中に残存する未燃カーボン(JISⅡ種灰では強熱減量で5%以下)が、生コンの製造時に混和する品質安定剤(AE剤など薬剤)を吸着し、コンクリートの品質の安定を阻害することにありました。
2.概要
今回、国道45号 釜石山田道路工事のトンネル覆工コンクリートに使用した『高品質フライアッシュ CfFA®:Carbon-free Fly Ash (NETIS登録番号:QS-100005-A)』は、フライアッシュ中の未燃カーボン量(強熱減量)を薬剤の吸着影響が少ない1%以下までに改質除去したフライアッシュで、フレッシュコンクリートの空気量やスランプを不安定にすることなく使用することが可能な混和材料です。この高品質フライアッシュを混和することにより、コンクリート構造物の高耐久化・長寿命化と低炭素社会構築への貢献の両立が実現しました。
また、高品質フライアッシュの原粉は、日本製紙株式会社(代表取締役社長 馬城 文雄 本社:東京都千代田区)の石巻工場(宮城県石巻市)の石炭火力発電所施設から排出されたものが使用され、東北地方の震災復興に貢献する地産地消の建設資材として活用することができました。
3.高品質フライアッシュについて
高品質フライアッシュは、株式会社ゼロテクノ(代表取締役社長 岡田 秀敏 本社:大分県大分市)の独自の開発技術により強熱減量を1.0%以下にまで低減した新しいコンクリート用混和材です。
今回使用した高品質フライアッシュの原粉の強熱減量は4.6%ありましたが、改質処理を行うことによって0.5%となり、未燃カーボンが大幅に低減されています。
また、形状のいびつな未燃カーボンが少なくなることにより、原粉ではJISⅡ種の規格を満足していなかったフロー値比も大きく改善されています。このように強熱減量が高く、コンクリート混和材としての使用が困難なフライアッシュも改質処理を行うことによって、安定した品質のコンクリートを製造することが可能になります。
4.適用現場について
今回の施工は、釜石山田道路工事のうち八雲第1トンネル起点側の覆工コンクリート21m(L=10.5m/BL×2BL=21.0m)区間で実施しました。
高品質フライアッシュの混入量は、試験練り結果を踏まえ、25kg/m3としました。
今回使用した高品質フライアッシュは、日本製紙(株)と(株)ゼロテクノが中心となり、日本製紙(株)石巻工場内に設立した「日本製紙ゼロテクノ東北有限責任事業組合」を通じ、2016年1月からの本格的な供給に先駆けて、製品の供給を受けたものです。
5.今後の展開
高品質フライアッシュを混和した覆工コンクリートについては、長期強度発現や透気試験などの品質確認を今後も継続して行っていきます。寒冷地のトンネルでは飛散する融雪剤や外気温の影響を受けやすい坑口区間で積極的に使っていき、覆工コンクリートの長寿命化を図っていきたいと思います。
【釜石山田道路 工事概要】
工事名称: 国道45号 釜石山田道路工事
工事場所: 岩手県釜石市大字釜石第9地割~両石町第4地割地内
発 注 者: 国土交通省 東北地方整備局 南三陸国道事務所
施 工 者: 熊谷組・オリエンタル白石特定建設工事共同企業体
工 期: 平成24年3月15日~平成27年3月13日
工事概要: 八雲第1トンネル(L=635m),八雲第2トンネル(L=839m),八雲第3トンネル(L=149m),
水海トンネル(L=445m),水海高架橋上部工(L=184m),
道路改良(盛土200,500m3,補強土擁壁3,224m2)
以上
[お問い合わせ先]
[本リリースに関するお問い合わせ先]
株式会社 熊谷組 広報部
部長:五十川 宏文
担当:小坂田 泰宏 (電話03-3235-8155)
[技術に関するお問い合わせ先]
株式会社 熊谷組 土木事業本部 トンネル技術部
部長:手塚 仁 (電話 03-3235-8649)