高耐力本設地盤アンカー工法の適用地盤を拡大し、建築技術性能証明を取得

2014年03月17日

 株式会社熊谷組(取締役社長:樋口靖)は、高耐力本設地盤アンカー工法(STK-Ⅱアンカー工法)を建物の耐震改修工事に適用するとともに、本工法における適用地盤(定着層)の拡大を図り、一般財団法人日本建築総合試験所の建築技術性能証明(GBRC性能証明 第11-08号 改)を取得しましたのでお知らせします。

1.開発経緯

 STK-Ⅱアンカー工法は、既往のSTKアンカー*1の削孔径を拡大した高耐力の本設地盤アンカー工法です。
 地下水位が浅い地盤で建物が浮力を受ける場合または地震力や風荷重により高層建築物、搭状構造物の基礎に引抜き力が生じる場合にSTKアンカーを用いてきましたが、地下階が深い場合あるいは建物の高さの幅に対する比(アスペクト比)が大きい場合などには建物に生じる引抜き力が大きくなるため、必要なアンカー本数が多くなり、アンカーの配置が困難となる場合が生じます。このような場合の対応策として、熊谷組では既往アンカーの削孔径を拡大した高耐力のSTK-Ⅱアンカー工法を開発しました。アンカー1本当たりの地震時最大引抜き抵抗力は2970kNです。
 これまでSTK-Ⅱアンカー工法における適用地盤は砂質土地盤(砂地盤および砂礫地盤)に限定していましたが、本工法の適用地盤を拡大するために、新たに硬質粘土地盤および岩盤において原位置試験を実施し、本アンカーの性能を確認しました。
*1:STKアンカーは、ゼネコン3社(株式会社熊谷組、清水建設株式会社、株式会社竹中工務店)の共同開発

2.原位置試験の概要

 STK-Ⅱアンカー工法の適用地盤(定着層)はN値2*が50以上の強固な地盤としていますが、これまでの砂地盤および砂礫地盤に加えて、新たに硬質粘土地盤および岩盤において本アンカーの性能を確認するための実証試験を行いました。施工性試験では硬質粘土地盤および岩盤においても本アンカーの施工性能は良好であり、施工性に問題がないことを確認しました。また、引抜き試験では定着層における引抜き抵抗力(摩擦力)は硬質粘土地盤では砂地盤と同等であること、岩盤では砂礫地盤以上であることを確認しました。
 新たに行った試験のうち、岩盤での試験は本工法が採用された工事(建物の耐震改修工事)において本アンカーの実施工に先立ち、実施した実証試験です。工事は既存建物の耐震性の向上を図るための耐震改修工事ですが、地震力が通常の1.5倍に設定されていることから、必要な引抜き抵抗力が増加し、既往のアンカーでは本数が多く、配置が困難となるために本工法が採用されました。採用されたアンカーのタイプはSTK-300(表1参照)、アンカーの長さは15m、本数は32本です。
*2:地盤の強度を表す指標で、標準貫入試験用サンプラーを30cm貫入させるのに必要な打撃回数

3.建築技術性能証明(GBRC性能証明 第11-08号 改)の概要

 既往の建築技術性能証明ではアンカーの適用地盤は砂質土地盤に限定していましたが、硬質粘土地盤および岩盤を適用地盤に追加しました。
 また、これまでの施工実績(既往のSTKアンカーでの実績を含む)に基づき、実績のある地盤においては引抜き試験を省略できることを設計指針に盛り込んでいます。これにより、実績のある関東圏、大阪などにおいては本工法の採用時に引抜き試験を省略することが可能となりました。

4.今後の予定

 STK-Ⅱアンカー工法の適用地盤(定着層)として、N値50以上のすべての地盤に適用できるようになったことから、本工法のさらなる普及展開を図ってまいります。特に、建物に関しては地下階が深い場合、アスペクト比が大きい場合、平面形状が不整形な場合、また地盤種類としては杭では施工が困難な砂礫地盤、硬質粘土地盤および岩盤に本工法を積極的に提案していく予定です。

以上

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