後添加型の液体増粘剤を使用した中流動コンクリートを復興道路工事のトンネル覆工コンクリートに適用

2014年02月07日

 株式会社熊谷組(代表取締役社長 樋口 靖)は、国土交通省東北地方整備局発注の国道45号 釜石山田道路工事のトンネル覆工コンクリートに、後添加型の液体増粘剤を使用した中流動コンクリートを復興道路工事で初めて適用しました。

1.背景

 一般的に山岳トンネルの覆工コンクリートは、狭小空間での作業となり、締固め不足や筒先の移動が充分に行いにくいことから、締固め不足によるコンクリートの密実性の低下、充填不足による背面空洞の発生などが懸念されています。
 その対策として、材料面では、流動性や充填性、材料分離抵抗性の高い中流動コンクリート※が開発され適用されています。また近年では、従来の石灰石微粉末等を用いた粉体系ではなく、増粘成分を配合した高性能AE減水剤を用いた増粘系中流動コンクリートが開発され適用されつつあります。
 しかしながら、添加する粉体もしくは液体の調達、またそれらを貯蔵するための設備(サイロ)の増設等が必要となり、一部地域では市中生コン工場での製造が困難であることが課題になっています。
 加えて、東日本大震災からの復旧・復興工事が本格化し、生コン工場への設備や時間等の負荷なく実施できる方法が望まれています。


※中流動コンクリート
 スランプフロー35~50cm程度で、スランプ15~18cmの普通(従来)コンクリートとスランプフロー65cm程度の高流動コンクリートの中間的な性状を有するコンクリート


2.概要

 国道45号 釜石山田道路工事のうち八雲第2トンネルの低土被り部では、覆工コンクリート厚40cmでかつ複鉄筋構造であることから、中流動コンクリートを採用することとしました。さらに、ひび割れ防止の観点から膨張材を添加しました。
 また、中流動コンクリートの製造は、従来の生コン工場での製造ではなく、現場で生コン車に直接投入・撹拌・製造できる点が特徴の後添加型の液体増粘剤を適用しました。
 後添加専用に開発した液体増粘剤「ADVA-PLUS」を用いることで、生コン工場設備の増設などの必要がなく、工場添加型と同等の品質を確保することができます。
 本方法は、現場に搬入されたアジテータ車で、スランプフロー15cm程度の通常の覆工コンクリートに特殊な混和剤を打設直前に現場で添加して流動化し、スランプフロー40cm程度の中流動コンクリートを製造します。


  [後添加型液体増粘剤ADVA-PLUSの特長]
    ○ モルタル・コンクリートの流動性を改善しハンドリングを向上させます。
    ○ モルタル・コンクリートに過大な粘性を与えることなく、分離抵抗性を付与することが可能です。
    ○ コンクリートの表面美観に効果的です。
    ○ 添加する前のコンクリートの空気量には影響を及ぼしません。
    ○ 液体ですので、添加が容易に行えます。

  <ADVA-PLUSの主成分・物性>
    主 成 分    特殊増粘剤とポリカルボン酸系化合物
    外   観    褐色液体
    全アルカリ量   0.00%
    塩化物イオン量  0.01%
    ※ 全アルカリ量及び塩化物イオン量は測定値例です。


    販売元 電気化学工業株式会社
    製造元 グレースケミカルズ株式会社

【釜石山田道路 工事概要】

  工事名称: 国道45号 釜石山田道路工事
  工事場所:岩手県釜石市大字釜石第9地割~両石町第4地割地内
  発 注 者 : 国土交通省 東北地方整備局 南三陸国道事務所
  施 工 者 : 熊谷組・オリエンタル白石特定建設工事共同企業体
  工  期: 平成24年3月15日~平成27年3月13日
  工事概要: 八雲第1トンネル(L=635m),八雲第2トンネル(L=839m),
       八雲第3トンネル(L=149m),水海トンネル(L=445m),
       水海高架橋上部工(L=184m),
       道路改良(盛土200,500m3,補強土擁壁3,224m2)

3.効果

 中流動コンクリートの採用により、複鉄筋構造の箇所においても、高い材料分離抵抗性と適切な流動性の確保により、確実な充填が行えました。
 後添加型の採用により、生コン工場への設備増設の必要がなく製造が可能となりました。
 また、現場に搬入した後、中流動コンクリートの製造ができるため、スランプロスが発生せず、品質の良いコンクリートの打設が可能となりました。
 低土被り部(10.5m/BL×3BL)各ブロックの連続5台のスランプフローの測定結果を下記に示す。事前の試験結果と同様に、スランプフロー値のバラツキは小さく、現場での後添加型中流動コンクリートの製造においても、生コン工場添加型と同様に安定した品質を確保しました。

スランプフロー測定結果 (連続5台)

4.今後の展開

 後添加型の液体増粘剤を使用した中流動コンクリートを他の山岳トンネル工事にも適用し、更なる覆工コンクリート品質の向上を図っていく方針です。

以上

[お問い合わせ先]

[本リリースに関するお問い合わせ先]
 株式会社 熊谷組  広報室
 室長:五十川 宏文
 担当:小坂田 泰宏 (電話03-3235-8155)

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