プラスチックシンチレーションファイバー(PSF)を用いた自走式放射線2次元分布測定システムの開発

2013年04月08日

 株式会社熊谷組(取締役社長 大田弘)は、株式会社IHI(代表取締役社長 斎藤保 本社:東京都江東区)、IHI建機株式会社(取締役社長 齋藤道夫 本社:神奈川県横浜市)と共同で、放射性物質で汚染された地表面の放射線分布を建設機械に搭載した放射線測定器で面的に計測するシステムを開発しました。この計測システムを使用することにより、除染作業の効率化を果たしました。

1.背景

 従来の放射線計測システムでは、人力で放射線を格子点で測定するため、大面積の測定に多大な時間を要していました。また、格子点測定であるため格子点間にある局所的なホットスポットを検出することは困難でありました。このため効率的な除染を行うには面的な測定を高速で行うことが求められていました。
今回、独立行政法人日本原子力研究開発機構(JAEA)の協力のもと、自走式放射線2次元分布測定装置を開発いたしました。

2.概要

 本システムは、放射線検出部にJAEAが開発したプラスチックシンチレーションファイバー(PSF)を用いた計測システムを採用し、全地球航法衛星システム(GNSS)とともに建設機械(コンパクトトラックローダー)に搭載して自走させることにより、1時間で2000㎡という早さで正確に測定することが可能になりました。従来の計測システムでは、同面積を測定するのに1m間隔のポイント計測でも50時間以上かかり、格子点間のホットスポットを探し出すことは困難でした。

3.特徴

 今回開発した測定システムの特長は以下の通りです。
①放射線検出部にはプラスチックシンチレーションファイバー(PSF)を用い、PSFに入射した放射線によって発生するシンチレーション光をPSFの両端で検知して時間差から入射位置を特定するとともに放射線の強度を求めています。
 従来に比べてPSFの本数を大幅に増やすことによって感度を10倍以上に上げ、大面積を短時間で計測することが可能となりました。
②検出部の遮蔽構造を工夫することで周囲(上方向、水平方向)からの放射線を50%以上遮断し、下方向からの放射線に対する感度を向上させることができました。これにより地表面に存在するホットスポット等を確実に見つけだすことが可能となりました。
③GNSSを搭載し、センサーの位置をリアルタイムで計測することによって、大面積の放射線分布を正確に効率的に測定することが可能となりました。PSFの測定データとGNSSの位置データを通信回線を用いてサーバーに集積し、表面放射線マップを作成することができるようになりました。

放射線測定状況

放射線測定結果

4.今後の展開

 本システムは、農地等の大面積を短時間で計測するという使い方以外にも、森林除染のように、効率的な除染方法をこれから見出していかなければならない分野において、いろいろな除染方法の効果を細かく確認しながら進めていく場合にも有効な手段となります。今後様々な場面で本システムをご利用いただき、避難されている多くの皆様の帰還に貢献することを目指してまいります。

以上

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 担当:小坂田 泰宏 (電話03-3235-8155)

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 担当:児玉 豊史(電話:03-6204-7030)

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 株式会社 熊谷組 土木事業本部 機材部
 部長:北原 成郎(電話 03-3235-8627)
 
 株式会社IHI 営業本部 総合営業部 営業グループ
 部長:山西 晃郎(電話 03-6204-7111)
 
 IHI建機株式会社 営業統括部 営業企画部 商品企画G
 課長:千坂 修(電話 045-276-2463)