集合住宅に使用される乾式二重床で音環境を向上させることができる「乾式二重床VM工法」を開発

2013年03月28日

 株式会社熊谷組(取締役社長 大田弘、本社:東京都新宿区津久戸町2-1)は、有限会社泰成電機工業(代表取締役社長 片桐佑介 本社:長野県駒ヶ根市)、野原産業株式会社(代表取締役社長 野原数生 本社:東京都新宿区)と共同で、集合住宅に使用される乾式二重床で音環境を向上させることができる「乾式二重床VM工法」を開発しましたのでお知らせいたします。
注:VM:Ventilation method

1.背景

 集合住宅においては、バリアフリーへの対応や歩行感の良さ、床下配管・配線のしやすさといった利点から、床仕上げ構造として乾式二重床を採用するケースが増えてきています。
 2008年に(一財)日本建築総合試験所から「床材の床衝撃音低減性能の等級表記指針」(以下、等級指針)が示されました。この等級指針は乾式二重床の床衝撃音低減性能を、従来の「推定L等級」による表記から、製品の床衝撃音低減性能を「部材性能」として「ΔL等級」で表示することにしています。大手デベロッパー各社様も乾式二重床の仕様規定を等級指針に対応したものへと変更しています。
しかし、この等級指針は、乾式二重床の部材性能を表記するものであり、実際の集合住宅においては、施工の方法によって居室空間としての床衝撃音遮断性能は異なります。特に、乾式二重床端部の隙間仕様によって床衝撃音遮断性能が変わることがわかっています。
乾式二重床端部に隙間を設けると意匠的に配慮する必要があります。今回、二重床端部隙間を設ける代わりに室内間仕切壁の下に孔を空けることによって意匠的な自由度の向上と床衝撃音遮断性能を向上させることができる乾式二重床VM工法を開発いたしました。
なお、本工法は特許出願中です。

2.概要

 乾式二重床を施工する方法で分類すると、住戸内の間仕切壁を施工した後に各居室の乾式二重床を施工する「壁先行工法乾式二重床」(図1参照)と、床下地を先に施工した後に各居室を区切る間仕切壁を施工する「床先行工法乾式二重床」(図2参照)があります。従来は「壁先行工法」が一般的でしたが、近年では超高層集合住宅の多くが「床先行工法」で建設されています。また床衝撃音遮断性能の確保がしやすいことから、超高層集合住宅以外でも「床先行工法」の割合が増えてきています。

図1 壁先行工法乾式二重床
図2 床先行工法乾式二重床

 図3に示す試験体において、乾式二重床の端部に設置されている木枠を開放したときと、乾式二重床下の空気が流通できないように密閉したときの重量床衝撃音レベルの大きさを比較して図4に示します。乾式二重床端部を密閉するとスラブ素面のときよりも床衝撃音遮断性能が10dB程度低下することがわかります。

図3 乾式二重床の割付と断面図
図4 タイヤで乾式二重床を加振したときの重量床衝撃音レベル(50Hz帯域)

 壁先行工法乾式二重床の場合には、各室ごとに二重床下が区画されますので、床下の空気の流通が制限されます。このため、床先行工法で実験を実施しました。一般的な床先行工法と今回開発した乾式二重床VM工法を図5及び6に示します。今回開発した乾式二重床VM工法は、二重床端部の壁にヒレ付幅木を乾式二重床に軽く接触させ、室内間仕切り壁下に30φの空気抜き用の孔を写真1に示すようにあけています。

図5 床先行工法乾式二重床(木幅木2mm隙間)
図6 今回開発した乾式二重床VM工法
写真1 間仕切り壁下の空気抜き用の孔

 一般的に二重床端部と木幅木の間に2mmの隙間をあけている工法と今回開発した工法は図7に示すように同等の床衝撃音遮断性能であることがわかります。

図7 重量床衝撃音レベル測定結果

3.今後の展開

 集合住宅の乾式二重床に関する重要なツールとして位置付け、デベロッパーや設計事務所などに対して積極的に提案していく予定です。

以上

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 担当:小坂田 泰宏 (電話03-3235-8155)

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 野原産業株式会社
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 担当:小林 秀樹 (電話 03-3355-4809)

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