STEP工法(静的締固めによる液状化対策工法)の設計法改訂、審査証明取得

2013年03月05日

 株式会社熊谷組(取締役社長:大田弘)と日本海工株式会社(代表取締役社長:山下聖一郎、本社:兵庫県神戸市)は、共同で開発したSTEP工法(静的締固めによる液状化対策工法)における締固め砂杭の改良仕様(打設間隔等)の設定法を改訂し、従来よりも合理的な設計を可能とするとともに、財団法人国土技術研究センターの建設技術審査証明(一般土木工法 技審証第32号)を取得しましたのでお知らせします。

1.背景と経緯

 比較的緩い砂質地盤に強い地震動が作用すると液状化現象が発生し、建築物や地中構造物などに甚大な被害をもたらします。液状化を防止する有効な方法の一つに、地盤中に砂などの材料を用い、締固めされた砂杭(締固め砂杭)を造成し(図1)、地盤の密度を増大させる方法があります。従来、締固め砂杭の造成工法として、サンドコンパクションパイル工法(SCP工法)が多用されてきましたが、SCP工法では大型のバイブロハンマーを用いるため、振動や騒音の問題から、規制を受ける市街地や既設構造物の近傍では適用が難しい状況にありました。
 そこで、SCP工法と同じ改良効果を有し、低振動・低騒音で周辺環境にも優しい施工方法として、静的に締固め砂杭を造成するSTEP工法を開発しました。平成20年1月には財団法人国土技術研究センターの建設技術審査証明(一般土木工法 技審証第22号)を取得し、主に液状化対策に本工法を適用してきました。
 東日本大震災では千葉県の浦安市において液状化被害が発生しましたが、本工法を適用した建物に被害はなく、敷地内において液状化現象は発生していないことを確認しています。

2.STEP工法の特徴

 本工法ではケーシングパイプとその内部に設けたインナースクリューを用いて、締固め砂杭を造成します(図2~図3)。すなわち、上部のホッパーからケーシングパイプ内に材料を投入し、インナースクリューを回転させ、ケーシングパイプ先端から材料を押し出すことにより締固め砂杭(標準径700mm)を造成します。主な特徴を以下に示します。
・締固め砂杭の造成には、回転駆動装置を用いるため、低振動・低騒音で施工できる。
・材料の排出量管理には、レーザー光を用いた新型の施工管理システムにより、リアルタイムに精度よく行うことができる。
・締固め砂杭の使用材料には砂に加え、リサイクル砂、再生砕石(RC-40)など多用な材料を用いることができる。

図2 施工手順
図3 締固め砂杭の造成手順

3.締固め砂杭の改良仕様の設定方法(D法)の検証

 締固め砂杭の改良仕様は、締固め後における砂杭間(図1)のN値*1を算定し、所定のN値(液状化強度)となるように砂杭径と改良ピッチを決定します。これまでは杭間N値の算定方法として、過去の施工実績に基づいた設定方法(C法)が使用されてきましたが、最近では締固め砂杭施工後における地盤の体積変化をより適切に考慮できるD法が採用されるようになってきました。
 そこで、本工法の適用工事において、D法により算定した杭間計算N値と実際に測定した杭間実測N値の比較を行いました(図4)。C法とD法の算定結果に顕著な差は見られませんが、D法を用いることにより、杭間N値の算定精度が良くなることを検証しました。

*1:地盤の強度を表す指標であり、標準貫入試験用サンプラーを30cm貫入させるのに必要な打撃回数をいう。

4.今後の予定

 STEP工法における締固め砂杭の改良仕様の設定方法として、従来のC法に加え、最新のD法を追加し、既審査証明の更新にあわせ、平成25年1月に財団法人国土技術研究センターの建設技術審査証明(一般土木工法 技審証第32号)を取得しました。締固め砂杭の設定方法として、D法の適用性がC法よりも優れることを確認しましたので、今後はD法を本工法の設計標準とし、液状化対策工法として提案していく予定です。
 また、締固め効果により締固め砂杭周辺地盤のN値(地盤強度)が増加することから、本工法の採用により、地盤の支持力を向上させることができます。締固めされた砂杭と砂杭周辺地盤との複合地盤としての支持力評価方法を確立し、直接基礎における地盤改良工法としての適用も図っていく所存です。

以上

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