マックスAZ Type-Dを使用した免震立上り基礎の充填工法

2010年05月25日

株式会社熊谷組(取締役社長:大田弘 本社:東京都新宿区)、株式会社ファテック(取締役社長:青野孝行 本社:東京都新宿区)、で免震アイソレーター下の充填工法である「マックスAZ Type-Dを使用した免震立上り基礎の充填工法」を共同開発しました。本工法は専用のグラウト材(AZ Type-D)と専用の打設ホッパを使用した施工方法であり、高いグラウト材充填率と安定した品質の施工を可能としました。また本工法は、施工方法として初めて(社)日本免震構造協会で性能評価を取得し、工法としての優位性が認められました。

1.背景

 免震構法は、建物基礎と建物の間に地震の揺れを吸収する免震装置(アイソレータ)を設置することで、地震時に建物に伝わる揺れを低減する構法である。近年、医療施設・公共施設・集合住宅等を中心として免震構法を採用した建物の建設が大幅に増加している。
 免震建物では、建物基礎に免震装置(アイソレータ)を取り付ける為の “免震立上り基礎”を構築する必要があります。(下図参照)
 免震立上り基礎は、水平に管理して取り付けられたベースプレートを設置した後、ベースプレート下部に立上り基礎コンクリートを打設して構築する。この際ベースプレート下部に空隙を残さず、コンクリート(または充填材)を高い充填率で密実に充填するには高い技術を必要とします。
 今回、(株)熊谷組と(株)ファテックで協同開発した「マックスAZ Type-Dを使用した免震立上り基礎の充填工法」は、専用に開発したグラウト材(マックスAZ Type-D)と、グラウト材打設専用ホッパ(特許出願中)を使用した充填施工法により、施工条件によるばらつきが少なく、安定して高い充填率を確保することを可能としました。

2.工法の概要と特徴

 本工法では、免震立上り基礎の下部に沈降の少ない呼び強度40以上のコンクリートを打設し、その約2時間経過後に上部(ベースプレート近傍の約4cm)に専用のグラウト材マックスAZ Type-Dの充填を行います。

専用ホッパによるグラウト充填

グラウト材の充填は、専用のホッパを使用して下記のように簡単な手順で行います。

①本工法専用のグラウト打設ホッパに必要全量のグラウト材を投入し、ベースプレート中央の打設口に設置する。
②専用ホッパのシャッターバルブを開けて充填を開始する。
③規定の充填高さまで充填されたらシャッターバルブを閉じる。

また、本工法は充填施工が容易なだけでなく、充填用ホッパとグラウト材を免震充填工法専用として設計することにより、人為的な締め固めに頼らず、グラウト材がベースプレート中央部の打設口から外周に向かって最適なスピードで充填されるため、空隙の原因となる空気を外部に追い出しながら密実に充填されます。(下図参照) このため、ベースプレート下部に空隙を残すことなく、高い充填性とばらつきの少ない施工を可能としました。

本工法の特徴
(1)高い充填率
   ・当社の施工実験による充填率の平均値は98%以上
(2)巻き込みエアの減少
   ・ホッパ内にグラウト材を一時的に貯留することにより巻き込みエアを脱気
(3)施工性の向上
   ・必要量をホッパに貯留し、シャッターバルブを開くだけで充填作業が完了
   ・充填に要する時間は1~2分程度
   ・専用ホッパはグラウト材投入後にクレーンで運搬が可能(最大重量:500㎏まで)
(4)施工条件によるばらつきの低減
   ・高度な技術を必要とせず、簡単な操作でばらつき無く、高い充填率が得られる
(5)下部のコンクリートとの付着が良好
   ・本工法の仕様書に従って、立上り基礎の施工を行うことにより、レイタンス処理
    を省略しても十分な付着強度が得られることを確認している。

3.使用材料

 本工法で使用するマックスAZ Type-Dは、免震立上り基礎の充填用に最適化したグラウト材です。マックスAZ Type-Dは流動性・充填性に優れ、材料分離抵抗性の高いプレミックス高性能無収縮グラウト材です。

マックスAZ Type-Dの仕様
●圧縮強度:65N/mm2(標準養生平均値)
●モルタルフロー:260mm
●ブリーディング量:0.0cm3/cm2
●扱い易いプレミックスタイプ

マックスAZ「TypeD」免震基礎充填用
1袋当たりの調合
  グラウト材:25㎏/袋  
  練混ぜ水 :5.9~6.5㎏/袋
  練上がり量:14.7L/袋

4.施工手順

本工法による施工の手順

1.立上り基礎コンクリート
・コンクリートは締固めを行い、ベースプレート下端から40㎜下まで打設する

2.専用ホッパの設置
・コンクリート打設約2時間後に専用ホッパによりグラウト充填を行う

3.グラウト材充填
・専用ホッパに必要量のグラウト材を投入し、シャッターバルブを開いて充填する

4.充填完了
・充填は全周がベースプレート下端から10㎜以上の高さとなるまで連続して充填する

5.仕上げ
・乾燥収縮ひび割れ防止として、膜養生剤を散布し、コテによりむらなく仕上げる

6.養生
・ブルーシート等で囲い養生を行う。

5.施工実験による充填率

本工法は、円形および矩形のベースプレートによる施工実験で、安定して高い充填率が得られることを確認しています。

施工実験による充填状況

6.実績と展開

 本工法は、平成22年4月現在で免震立ち上り基礎 約300基の施工を終了しており、その他に3物件の適用が決定しています。
 また、本工法は(社)日本免震構造協会で“免震基礎充填材料および充填工法”として性能評価を取得し、有効性と高い性能が評価されました。(JSSI-評定-09001)
今後は、社内外を問わず「マックスAZ Type-Dを使用した免震立上り基礎の充填工法」の普及展開を進める予定です。
 なお、「マックスAZ Type-Dを使用した免震立上り基礎の充填工法」に関する技術サポート、マックスAZ Type-Dの販売および専用ホッパのレンタルは、株式会社ファテック(代表取締役社長 青野孝行、東京都新宿区03-3235-6268)が行います。

[お問い合わせ先]

[本リリースに関するお問い合わせ先]
 株式会社 熊谷組  広報室
 室長:藤島 幸雄
 担当:石賀 慎一郎 (電話03-3235-8155)

[技術に関するお問い合わせ先]
 株式会社 熊谷組 技術研究所 建設技術研究部 建設材料研グループ
 担当:金森 誠治 (電話03-3235-8723)

[商品に関するお問い合わせ先]
 株式会社ファテック 開発営業部
 担当:高嶋 展浩 (電話03-3235-6268)