熊谷組グループの成長戦略について2020年度版のコーポレートレポートに掲載した社長インタビューと社長と佐藤監査役の対談を掲載しています。

社長インタビュー

役員対談

価値創造プロセス

社長インタビュー

「成長スパイラルの実現」を掲げ、 成長戦略を継続するともに 社会にとって価値のある企業を目指します。

中期経営計画の2年目となる2019年度の成果および市場環境についてお聞かせください。

4期連続増収を達成しましたが、営業収益は減益となりました。 建設業を取り巻く環境は大きく変わりましたが、新たな成長への歩みは着実に進んでいると考えています。

熊谷組グループは、2017年に中長期経営方針を定め、現在、その方針に基づいた中期経営計画を推進しています。2019年度は、中期経営計画の2年目であり、その成否を握る「試金石」となる年度として、全社員が一丸となって挑戦的かつ緊張感を持って事業に取り組みました。その結果、2019年度の売上高は、4期連続の増収を果たしました。しかし、一部不採算工事の発生などにより営業利益は前期を下回り、増収・営業減益という業績になりました。

この中期経営計画では、「建設工事請負事業の維持・拡大」「新たな事業の創出」「他社との戦略的連携」の3つを戦略の柱としています。「建設工事請負事業」については、4期連続増収という結果に表れているように、「稼ぐ力」である生産力が着実に高まってきていると考えています。一方、「新たな事業の創出」「他社との戦略的連携」については、住友林業との協業をはじめ多様なプロジェクトを進めていますが、若干計画に遅れがあり、十分な利益に貢献するまでには至っていません。

2019年度における建設業を取り巻く環境は、住宅建設に弱い動きが続き、企業の建設投資も前年度の消費税増税前の駆け込み需要による反動減となりましたが、自然災害に備えた防災・減災対策事業、社会インフラの老朽化対策事業、そして東京オリンピック・パラリンピック関連の施設整備事業などおおむね堅調な市場環境が続きました。新型コロナウイルス感染症の影響については、一部の工事で資材納入の遅れなどが発生しましたが、2019年度の影響は限定的でした。

今回の中期経営計画では、新生熊谷組グループとしての「成長への挑戦」をテーマに掲げています。2019年度は、減益という結果にはなりましたが、新たな成長に向けての歩みは着実に進んでいると感じています。

2020年度はどのような取り組みを進めていくのでしょうか?

「成長スパイラルの実現」という方針を掲げ、 これまでの成長戦略を揺らぐことなく継続していきます。

2020年度は、中期経営計画の最終年度となります。これまでの取り組みを成果として実らせ、さらにその先へと続く成長につなげていく1年にしたいと考えています。その意味を込めて、2020年度の社長方針を「成長スパイラルの実現」としました。新型コロナウイルスの影響により見通せないことも多くありますが、私たちが目指すべきベクトルは揺らぐことはありません。

この2020年度も引き続き中期経営計画の柱となる3つの戦略を推進していきます。
「建設工事請負事業の維持・拡大」においては、利益を創造する力をいかに高めていくか、つまり、利益率の向上が一番の命題となります。事業の第一線における営業力については、土木・建築分野ともに着実に力をつけてきていると感じています。しかし、当社ならではのソリューション営業や技術営業の進化など、まだ取り組むべき課題は多くあります。それは生産性についても同様であり、「稼ぐ力」は逞しくなっているものの、現状に満足することなく、現場での技術開発や創意工夫、ICTツールの活用などによる効率化を推進し、生産性の向上とコスト競争力の強化に取り組んでいきます。

また、当社が今後持続的な成長を果たしていくために欠かせない戦略となるのが「海外事業の拡大」です。これまでの台湾や香港に加え、ミャンマー、インドでも事業を展開していますが、全体的に見ると市場の深耕や基盤の構築を進めている段階といえます。これらの展開を強化するために、2020年4月、国際支店の機能、体制を拡充し国際本部としました。1日でも早く利益に貢献できる事業体制の構築を目指します。

そして、事業の推進において何よりも優先して取り組むべき命題が「安全」です。「安全・品質・環境No.1」を目指し、2020年度は活動のさらなる強化を図っていきます。

「新たな事業の創出」と「他社との戦略的提携」についてお聞かせください。

持続的な成長を支える新しい柱として 新規事業の創出に積極的にチャレンジしていきます。

将来的に国内の建設市場の縮小が見込まれるなか、「新たな事業の創出」は、海外事業とともに今後きわめて重要となる戦略です。その取り組みをさらに推進するために、新事業開発本部を経営企画本部から独立させて体制を強化しました。PPP/PFI/コンセッション事業などの新規事業、住友林業をはじめ多様な企業との連携による新事業の創出に一層力を注いでいきます。

住友林業との協業では現在、5つの分野において8つの分科会を設けて推進しています。なかでも「木化・緑化関連建設事業」についてはいち早く事業化したいと考えており、「中大規模木造建築」という、これまでにない新しい市場の創出を目指しています。また、バイオマス発電や風力発電など再生可能エネルギー分野においても事業化を進めています。

2020年1月、住友林業と共同でシンガポールに合弁会社SFKG Property Asia Pte. Ltd.を設立し、すでにインドネシア・ジャカルタでのプロジェクトに参加しています。今後は共同でアジア地域での不動産開発にも取り組んでいきます。

このほか、都市再生事業についても、東京・飯田橋地区で進めるまちづくりプロジェクトをはじめとして取り組みを強化していきます。また、社会の変化に対応した技術開発と事業領域の拡大にも力を注いでいます。介護事業などの市場に向けた自立歩行支援器「フローラ・テンダー」もそのひとつであり、2020年度中に販売開始の予定です。

中期経営計画における3つ目の柱である「他社との戦略的提携」についても、当社にはない知見や技術を持つ国内外の多様な企業との連携を進めており、早い時期に事業化へと結びつけていきたいと考えています。

かつて熊谷組というと、映画にもなった黒部ダムの工事などトンネル工事の実績が多く、現在も「トンネルの熊谷組」というイメージを抱く人が多いようです。それはとてもありがたいことではありますが、「トンネルの熊谷組」と並ぶ「○○の熊谷組」といわれるような新しいブランドを確立していきたいと考えています。売上高の約7割を占める建築分野での深耕や新事業の創造によって、熊谷組の次代を担う、より強固な事業構造の構築を図っていきます。

ESGをどのように経営や事業に組み込んでいくのでしょうか?

ESGの視点を取り込んだ経営にさらに力を注ぎ、 社会のニーズに的確に応えていきます。

SDGsに象徴されるように、グローバルな社会課題の顕在化は、企業を取り巻くステークホルダーの考え方や行動に変化を及ぼします。私はいま、その変化をあらためて強く感じています。2020年になって世界が直面することになった新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちがかつて経験をしたことのない事態であり、それはまた、企業と社会、ステークホルダーとの関係に新たな変化をもたらすはずです。企業が持続的な成長を果たしていくためには、このような変化に対応したリスク管理やビジネス機会創出への取り組みが重要になります。
熊谷組グループでは、中長期経営方針において「ESGの視点を取り入れた経営の強化」を掲げ、2019年4月に「ESG取組方針」を策定しました。この方針は、あらためてESGに対する全社のベクトルをひとつにして、その姿勢や取り組みを社会に明確に伝えていこうというものです。「E(環境)」「S(社会)」「G(企業統治)」の3つの視点から5つの重要課題(マテリアリティ)を設けています。
方針の策定から1年が経過し、さらに2020年度からは、推進する重点施策が、ESG取組方針のどの重要課題に関連するのかを明確化し、意識の浸透と取り組みの徹底を図っています。

ESG取組方針について、特に着目しているような取り組みはありますか?

特に配慮したいのは、働き方改革や社員の健康管理です。 それらの取り組みが評価され、「なでしこ銘柄」に選ばれました。

ESG方針の「E(環境)」においては、これまでも取り組んできた気候変動リスクへの対応に加えて、木造建築事業や再生可能エネルギー事業まで幅広い取り組みを進めています。これらのプロジェクトの多くでは、環境分野において先進的な知見を持つ住友林業との協業が大きな推進力となっています。

「S(社会)」については、新型コロナウイルスの感染拡大という世界的な緊急事態を経て、今後ますます対応の必要性が高まっていく領域であると考えています。なかでも建設業は、労働環境において未だに改善すべき課題の多い業界といえます。働き方改革や社員の健康管理などに一層力を注いでいきます。

当社では、ダイバーシティ推進のひとつとして女性社員の活躍を支える環境づくりを進めています。この取り組みが評価され、2020年3月、経済産業省・東京証券取引所が選定する「なでしこ銘柄」に選ばれました。このような成果を、社外はもちろん、社内へも積極的に伝え、ESGを意識した企業風土を醸成しています。

新型コロナウイルスの影響もあってしばらく中断していますが、全国の支店や本社での懇談会など、社長である私自身と社員が膝をつき合わせて直接語り合えるようなコミュニケーションの場づくりにも取り組んでいきます。社員と一緒に考えながら、社会にとって存在感のある企業像を描いていきたいと思っています。

最後になりましたが、「G(企業統治)」も当社がグローバルな社会で信頼を高めていくためにきわめて重要となる命題です。2015年に社外取締役が加わったことや各取締役や各監査役によるアンケート方式の実効性評価を行うことで、取締役会の議論も活性化し、その実効性は確実に向上していると感じています。今後は社外取締役が1/3以上になるよう検討するなど、継続してコーポレートガバナンスの強化を図っていきます。

また、早急に改善しなければならない課題としてはグループ会社のガバナンスがあげられます。自主性を尊重しながらも、ガバナンスとの両立が図れるグループガバナンス体制を再構築したいと考えています。熊谷組グループの各社が熊谷組と同じ目線で成長を目指せるグループ経営に努めていきます。

資本政策など、株主・投資家へのメッセージをお聞かせください。

ROEおよび配当性向については順調に推移しています。 2020年度においても引き続き安定的な配当を見込んでいます。

中期経営計画では、3年間で600億円の成長投資を計画しており、5年後の2022年に70億円の利益を創出することを目標としています。2020年度においても投資案件を慎重に吟味しつつ、引き続き積極的な成長投資を行っていきます。また、2020年度の数値目標のひとつにROE12%を掲げており、すでに達成できる水準まできています。30%を目指している配当性向も計画どおり推移し、新型コロナウイルスの影響が懸念される2020年度においてもこれまでと同様の安定的な配当を見込んでいます。

今後も成長投資、株主還元のバランスの最適化に努め、株主・投資家の皆様のご理解を得ながら、着実な成長を果たしていきたいと考えています。
当社のESG取組方針では、「ステークホルダーとの関係強化」を重要課題のひとつに掲げています。今後は、機関投資家ミーティングを国内ばかりでなく海外でも積極的に実施していきます。さらに、幅広い株主の皆様と直接対話できる機会を増やし、皆様の貴重な声をスピーディーに経営に活かすように努めていきます。

新型コロナウイルスの影響が懸念されるいま、 どのような企業像を目指していくのでしょうか?

熊谷組のDNAである「誠実さ」と「挑戦心」を社員たちと共有し、 時代のうねりを乗り越え、持続的な成長を目指します。

新型コロナウイルスによる緊急事態の最中となった2020年5月初旬、当社は特定警戒都道府県内で約6割の工事を中断しました。それは私たちにとって苦渋の決断でした。中断は工期の遅れにつながる可能性があり、お客様に迷惑をおかけするばかりでなく社会にとっても影響が及びます。また、協力会社をはじめ工事に関わる数多く人たちやその家族の生活にも少なからず影響します。このような事態に直面して、私たちが取り組む事業の社会的な責任の重さをあらためて実感しました。

熊谷組は2018年に創業120周年を迎えました。1898年の創業当時、創業者 熊谷三太郎が語った「いつか世の中のお為になるような仕事をさせていただきたい」「難所難物(困難な工事)があれば、私にやらせてください」という“言葉”と“想い”は、当社のDNAとして現在も受け継がれています。この2つの言葉は、言い換えるなら「誠実さ」であり「挑戦心」であると私は思っています。

ポストコロナともいわれるこれからの時代、世界がどのように変化していくのかを予測することは容易なことではないでしょう。しかし、社会において私たち熊谷組グループが担うべき使命、そして、それを支える「誠実さ」、「挑戦心」という精神はこれからも変わることはありません。この気持ちをいま一度社員たちと共有し、時代のうねりを乗り越え、ステークホルダーの皆様とともに持続的な成長を果たしていく企業グループを目指していきます。


【役員対談】パートナーシップで描く成長戦略、熊谷組が切り開く新たな領域

熊谷組と住友林業は2017年11月に業務・資本提携を結び、新しい事業の創出を目指して、幅広い分野で協業プロジェクトを進めています。住友林業の代表取締役・執行役員副社長であり、当社の監査役を務める佐藤建氏と、社長の櫻野泰則が協業の意義や成果、そして将来について語り合いました。

協業のもと幅広い分野でプロジェクトを推進

櫻野 熊谷組と住友林業が協業をスタートさせてから早いもので約2年半が経ちます。熊谷組は当時から将来の成長を見据えて新しい柱となるような事業の開発を模索していました。そのキーワードのひとつが「環境」や「木化」であり、ご縁があって住友林業と業務・資本提携を結ぶことになりました。

佐藤 住友林業は1691年の創業以来、山林をはじめ木を活かす事業に取り組んできました。その一環として国内外で住宅事業を手がけ、現在では事業の大きな柱となっています。私たちが、木を活かす事業の次なるステージとして考えているのが都市開発です。この事業を切り拓いていくためには、住友林業にはない、建築や土木のノウハウが必要となります。そこで熊谷組とパートナーシップを組むことになったわけです。

櫻野 住友林業とは、業務ばかりでなく資本提携にまで踏み込んだ深い関係を結んでいます。住友林業の副社長である佐藤さんには、当社の監査役にも就いていただき、両社の協業ばかりでなく、当社の事業や経営についても高い視点からアドバイスをいただいています。

この2年半の間、5つの分野で8つの分科会を立ち上げ、両社の社員が一緒になってプロジェクトを進めてきました。現在の成果について、佐藤さんは率直にどのように感じていますか?

佐藤 事業として具現化されているものはまだ多くはありませんが、事業シーズとしては有望な芽がたくさん育ってきており、確かな手応えを感じています。

櫻野 いち早く成果につながっているのは緑化関連の事業、いわゆる環境不動産の分野ではないかと思います。

佐藤 そうですね。建築設計と緑化計画を一体化して提案するビジネスです。また熊谷組・住友林業が共同で全国の63自治体から提供を受けた木材を使って建設した施設を使用後に解体し、その木材を自治体に返却するというサステナブルなコンセプトの事業にも取り組みました。

櫻野 当社が営業活動を進めていた医療施設の企画提案段階で、住友林業のグループ会社と連携し木を使ったプランを提案し受注につながった案件があります。協業の効果はすでにさまざまなところで表れていますね。

都市の風景を変えていく、中大規模木造建築事業

櫻野 プロジェクトの中でも早く事業化したいのは、やはり中大規模の木造建築事業でしょうか。

佐藤 おっしゃるとおりで、私も中大規模木造建築は両社の協業の「一丁目一番地」だと思っています。とても大きな可能性を秘めた事業です。

というのも、中大規模木造建築事業には、単に自然素材である木を活かすということだけではなく、SDGsにもつながる大きな意義があるからです。つまり、サステナブルな視点に立って建築という事業を組み立て直していこうという発想です。

最近、建築の分野では、資材の製造から運搬、建設、解体までの一連のサイクルの中で排出されるCO2を削減し、環境への負荷を減らそうという考え方が注目されています。その視点で考えると、木造建築はとても優れているのですね。木はその成長過程で大気中のCO2を吸収・固定しているので、いわば、都市の中に森をつくるのと同じような効果が期待されるのです。

このような環境への負荷を減らす木造建築が大きな市場を創出する時代が近い将来必ず来るはずです。実際、ESG投資に注目する欧米の機関投資家も木造建築を高く評価しています。その未来の市場を、ぜひ熊谷組と一緒に切り拓いてみたいのです。

櫻野 私もまさに同じ気持ちです。木造建築は将来、新たに3,000~4,000億円の市場規模が見込まれるという調査結果もありますね。熊谷組としても次の時代の柱としてぜひ実現したい事業です。新しい市場の開拓に向けて、両社共同でプライベートブランドを創り、営業を展開していこうという戦略も進行中です。

佐藤 耐火や遮音性能といった共同研究も進み、すでに中層の木造建築については要素技術が揃いつつあります。その先の高層、さらには超高層の木造建築についても研究開発に取り組んでいます。

櫻野 住友林業では「W350計画」という構想が進んでいますね。創業350周年にあたる2041年を目標に高さ350mの超高層の木造建築物を建てようというものです。そうした高層や超高層の木造建築が出現すれば、都市の風景も大きく変わっていくはず。ぜひ両社の協業でその姿を実現したいと考えています。

ESGにおける取り組みでも協業が大きな刺激を

佐藤 このほか、再生可能エネルギー分野では、バイオマス発電の共同事業に向けて計画を進めています。風力発電についてもプロジェクトを進め、将来的には洋上風力発電などにもチャレンジしたいと考えています。

櫻野 ユニークなプロジェクトとしては、熊谷組が蓄積してきた無人化施工技術などを応用した林業機械システムの開発があげられます。そこから派生して宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究が進められ、将来的には月面での構造物や資材運搬、設置などへの応用を目指しています。

また、事業とは直接関わりがなくても、住友林業とのパートナーシップはさまざまな面で熊谷組に好影響を与えていると感じています。熊谷組ではESGの取り組みを推進していますが、「E(環境)」はもちろん、働きがいのある職場づくりや持続可能なコミュニティーの実現といった「S(社会)」の分野においても大きな刺激を受けています。

佐藤 この春、熊谷組は「なでしこ銘柄」に選出されましたね。監査役として関わっていてもその変化は感じます。

櫻野 住友林業は、木や森に関わってこられ、非常に長い歴史をお持ちです。その歴史の中で蓄積されたノウハウばかりでなく、先進的にサステナブルな取り組みをされています。熊谷組にとっては学ぶべきことも多く、それが熊谷組においても新たな取り組みのきっかけになる等、とても良好な関係を築けていると思います。

アジアをはじめ海外でも共同プロジェクトを展開

櫻野 協業のもうひとつの大きな柱となるのが海外事業です。

佐藤 2020年1月には合弁会社をシンガポールに立ち上げ、インドネシアでの不動産投資事業をスタートしました。今後はビジネスをアジア地域へと拡大し、不動産開発や都市開発といった大規模なプロジェクトにもチャレンジしていきたいですね。

櫻野 ええ、もちろんです。将来の成長を考えるなら、海外事業の拡大も熊谷組にとって欠かすことのできない戦略です。

いま都市開発の話が出ましたが、熊谷組では、新規事業のひとつとして、飯田橋まちづくりプロジェクトをはじめ都市再生事業に取り組んでいます。この事業もまた、住友林業の木化・緑化のノウハウが期待される領域です。

佐藤 木化・緑化に関わる建設事業を進めていけば、当然、都市再生といった大規模な開発につながっていきます。住友林業では、街を森に変えていく環境木化都市の実現を目指しています。そんな夢を日本ばかりでなく、世界でも熊谷組と一緒にぜひ実現してみたいですね。実は中大規模木造建築は、法規制などの関係もあって、日本より海外の方が進めやすいという現状もあります。

櫻野 こちらこそぜひお願いしたいと思っています。ところで最後に佐藤さんにお聞きしたいのですが、監査役としての立場から見て、熊谷組にどのような印象を感じていますか?

佐藤 そうですね。非常に技術志向が強い企業だと思います。しかし、技術に対するこだわりが強い分だけ、収益に対する意識が若干薄いとも感じています。その意味でも、収益性の高い都市開発といった新規事業へのチャレンジは重要だと思います。

櫻野 なるほど、いつも貴重なアドバイスをありがとうございます。これからも住友林業とのパートナーシップを深め、新しい事業の創出に挑み、持続的な成長を目指していきます。

価値創造プロセス

熊谷組グループは社会課題の解決に貢献し、ステークホルダーの皆様のお役に立てるようグループビジョンに基づき、事業活動を展開しています。
熊谷組グループらしさを発揮して、全員参加でベクトルを合わせ、未来を拓く新たな価値創造に挑戦しています。

ESG取組方針
1.当社は、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の視点から解決すべき重要課題(マテリアリティ)を特定し、持続可能な事業活動を追求していく。
2.当社は、グループが保有する技術・経験・ノウハウを活用して新たな価値を創造し、SDGsに代表される社会課題の解決に貢献する事業活動を展開していく。
3.当社は、事業活動を通じてステークホルダーとのコミュニケーションによる信頼関係の構築に努め、企業価値の向上を目指していく。