地球環境に配慮した高層芸術住宅 陶朱隠園

135度のワイドな眺望
135度のワイドな眺望
多機能エレベーターで愛車を室内へ展示できる
多機能エレベーターで愛車を室内へ展示できる

工事概要

発 注 者 中華工程股份有限公司(BES)
基本設計 ヴィンセント・カレボー(Vincent Callebaut:ベルギー国籍)
意匠設計 元宏聯合建築師事務所(LKP)
構造設計 傑聯國際工程顧問有限公司 (KLC)
施 工 者 華熊營造股份有限公司 (TKG)
工事場所 台湾省台北市 信義区松高路68 琥
期  間 2013 年8 月1日~役所検査完了 2018 年7 月
共用部仕上工事継続中('18年10月現在)
用  途 共同住宅(分譲)
事業内容 敷地面積/8,160㎡
建築面積/3,264㎡
延床面積/42,774㎡
基礎免震(Friction Pendulum System)
地下RC造(一部SRC造)地上S造
地下4 階 地上21階 + 22 階 HAT トラス 十3 階
総戸数/ 2階~21 階(1フロア2戸)計 40 戸
エレベーター/客用 2 台 多機能用 1 台 非常用 4 台
駐車台数/車 238 台 バイク 274 台
基礎構造/場所打ちケーシング杭 68 本(最大径250cm)
高さ/ GL+ 93.2 m 掘削深さ/ 20.05 m
工事範囲/躯体 外装 外構 設備工事
内装工事(共用部分、住戸部はスケルトン)
 

斬新な二重螺旋の外観にいま国内外から注目が集まる

 台湾最大の都市・台北市信義区に建設された、高層芸術住宅「 陶朱隠園( タオヂュインユェン )。2013年の着工からおよそ5 年の歳月をかけた工事は、2018 年7 月に台北市から建物使用の許可を受け、いよいよ完成を迎えようとしている。そしていま、建物はTAIPEI 101と並ぶ、台北の新しいランドマークとして注目を集めている。

 その最大の理由は、斬新で不思議な外観にある。まるで大地にどっしりと坐したままうこめく巨大生物のょうに、見る位置や角度によって表情が変わるのだ。誰もがその外観を目の当たりにしたら、きっと建物に対する既成概念が大きく揺らぐだろう。多くの市民や観光客が建物の周囲に集まり、その姿をあらゆる角度から眺め、カメラやスマートフオンで撮影する光景もいまや珍しくはない。この建物の基本設計は、フランスの建築家ヴィンセント・カレ ボー(Vincent Callebaut)氏によるものだ。今回は「The tree of city(都市の木 )」をコンセプトに、人類のDNAからヒントを得て、螺旋状に複雑な変化をとげる遺伝子の基本形態と中国太極の回転をモチーフに設計した。

 そして、施工を担当したのが、 熊谷組の台湾現地法人・華熊營造股分有限公司( 以下、華熊營造 )だ。約40年にわたり、台湾で様々な建物を手がけてきた。特に2004 年に竣工した、 世界屈指の超高層ビルTAIPEI 101の建設では、 名実ともに台湾の建設業界を代表する企業としての地位を確立した。
かつてTAIPEI 101の施工に携わり、当現場で指揮を執った華熊營造の林培元所長は、「TAIPEI 101と同じくらい大変な仕事でした。でもあの時に得た経験がここで十分に活かされました 」と話す。

 高度な施工技術と豊富な経験、 数多くの実績が高い評価を受け、今回の工事へとつながったのだ。

地球温暖化防止と快適で最高の居住空間を兼ね備えた都市生活者の理想的住宅

 建物は高さ3.92 m、 鉄骨構造で 地上12階・地下4 階建て。 全40戸で、一戸の居住部の広さは約 600 ㎡。奇数階の住宅内には柱がなく、玄関扉を開くと135度の眺望が広がっている。 また建物中央には多機能エレベーターが設置され、乗用車を各戸の玄関先まで横付けすることができる。さらに有機性廃棄物の再利用のほか、建物一体型太陽光発電、雨水リサイクル、省エネのLOW-E複層ガラスといった環境負荷の低減を考慮した設備が随所に施されている。建物完成後はバルコニーに2 万本を超える植栽を施し、年間約130トンのCO2を吸収する計画だ。 

 建物周辺の環境も洗練され、 都市生活者には理想的だ。「 陶朱隠園 」が建つ 信義区は、TAIPEI101や世界貿易センター、台北市政府、大型商業施設が林立する新興開発工リアであり、 孫文を記念する中山公園と国立国父記念館など観光名所としても有名だ。そのエリア内でも、特に閑静な高層住宅が立ち並ぶ一角にそれはある。

 20年ほど前までは何もない広大な空き地だったという。「 ちょうど、TAIPEI101が完成した頃から開発が始まった 」と当時の様子を教えてくれたのは、当現場であらゆる関連業務を支えてきた華熊營造の山﨑英樹総監だ。いまはにわかに信じ難いほど、この地区は大きな変貌を遂げており、「 陶朱隠園 」はまさにこの地域にふさわしい建物だ。