福井県内で進行する5つの北陸新幹線延伸工事

新北陸トンネル(大桐)(2019年5月)
新北陸トンネル(大桐)(2019年5月)
「押し出し工法」施工の様子
「押し出し工法」施工の様子

工事概要

福井高柳高架橋他

発 注 者 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構大阪支社
工事内容

工事延長2,615m(高崎起点415km746m~418km361m)

ラーメン高架橋35連・RC橋脚31基・RCT桁54連

新北陸トンネル(大桐)

発 注 者 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構大阪支社
工事内容

トンネル掘削(NATM)斜坑L=483mトンネル掘削(NATM)本坑L=3,605m

インパートコンクリートL=3,605m覆工コンクリートL=3,605m

坂井高架橋他

発 注 者 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構大阪支社
工事内容

工事延長2,513mラーメン高架橋33連

橋梁(上部)RC場所打T桁橋57連

橋梁(下部)RC橋脚28基橋梁(下部)RC連結橋脚2基

芦原温泉駅高架橋他

発 注 者

独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構大阪支社
工事内容

工事延長1269m

高崎起点402㎞380mから403㎞772m

(うち402㎞730m~402㎞853m、L=123mを除く)

北陸幹山室Bi新設他

発 注 者 西日本旅客鉄道株式会社(鉄道・運輸機構委託)
工事内容

跨線橋の下部工及び上部工新設工事

上部工/全長123mの3径間連続合成桁(34m+55m+34m)、

北陸本線上横断する馬桁はクレーン架設、3径間の主桁は横取り架設

福井県内で進行する5つの北陸新幹線延伸工事

 1964年10月1日、東海道新幹線が開業した。計画当初は、「実現困難」の意味も込めて〈夢の超特急〉と呼ばれたが、6時間半かかっていた東京・大阪間を約4時間で結んだその速さに、人びとは〈夢〉が〈現実〉になったことを体感した。

 以来55年、今日では東京・新大阪間の所要時間は2時間半を切り、新幹線の路線網も全国に伸びている。現在も整備新幹線5路線のうち開業を目指して3本の新幹線工事が行われている。なかでも注目を集めるのが北陸新幹線延伸工事だ。北陸新幹線は、東京から上信越・北陸を経由し、大阪までを結ぶ延長約700㎞の路線だ。東京・金沢間はすでに開業し、現在は2022年度末の完成を目指して金沢・敦賀間を建設している。

 そして今、熊谷組は福井県内で新幹線の4つの高架とーつのトンネルの建設工事を進めている。5つの工事の延長は約10㎞。これは今回の金沢・敦賀間における北陸新幹線延伸工事の総延長のおよそ一割に相当する。熊谷組の実績に加え、長年培ってきた経験や技術など総合的に高い評価を得た結果だといえる。

 北陸新幹線の5つの工事を統括する、北陸新幹線工事所の高橋秀典所長は、「福井県は熊谷組の発祥地ですから、創業120周年の節目にこうして地元に貫献できることは嬉しい」と今回の工事に特別な思いを語った。

巨大橋桁が上空で交差点をまたぐ「押し出し工法」

 熊谷組が進める北陸新幹線工事のひとつ福井高柳高架橋。現場は福井市の中心部に位置し、福井駅からも近いエリアで、工事延長約2・6㎞。周囲は交通量も多く、店舗なども含んだ居住地だ。

 現場を指揮する高柳高架作業所の小永浩二所長は、「高架橋工事としてはオーソドックスな工区です」とにこやかに話した。しかし、難題は車の絶えない交差点の上空をまたぐように橋桁を架ける作業だ。そこで採用されたのが、足場の上で製作したコンクリート箱型桁を、道路上空で交差道路の向こう側にある橋脚に押し出すという「押し出し工法」だ。作業は安全のため、交通障害なども生じないよう夜間通行止めにして行った。長さ55m、重さ約1500トンというコンクリート箱型桁を交差点南側の足場上で製作し、それを前方北側へゆっくリスライドさせて交差点をまたいだ橋脚の上に架ける。作業自体は単調だが、40mほどの移動に30名以上の作業員が深夜に数時間かけて行うということを考えれば、工事の難しさが想像できる。この作業を二晩ずつ4カ所で行った。

 小永所長が工事を振り返り、「この工法を採る現場はあまりないので、経験者が少なく、予想以上に難工事となった」と話す。また「1500トンもある構造物なので沈下させたり、途中で中断するわけにはいかないので、作業は慎重の上に慎重を期した」と言う。

 この高架橋の完成は2019年夏を見込んでいるが、この現場の北側で他社が施工している新たな九頭竜川の橋梁や他の高架橋とは、2020年春に1本の高架橋としてつながる予定だ。新幹線の高架に沿って新たな県道も新設される。新幹線と道路が一体化した構造物は国内でも例はない。完成すれば日本初となる。