プレスリリース

ダムのグラウチング技術を適用した減水対策工によりトンネル坑内の大量湧水低減

平成29年1月25日

ダムのグラウチング技術を適用した減水対策工により
トンネル坑内の大量湧水低減
ー極超微粒子セメントの適用ー

 株式会社熊谷組(取締役社長 樋口 靖)は、鹿児島県発注の北薩横断道路 北薩トンネル(仮称)において、トンネルからのヒ素を含む大量の湧水を減らすため、トンネル掘削後に新しい注入材料である極超微粒子セメントを用いて坑内からダムのグラウチング技術で減水対策工を実施しました。その結果、延長100mの減水対策工実施区間で、計画どおり地山の透水係数を4×10-4cm/sec から4×10-6cm/secに改良し、最大300t/hあった湧水量を40t/h以下に低減しました。こうした減水対策工は、全国にも事例がありません。  
1.背景
北薩横断道路は、鹿児島県北西部と鹿児島空港を結ぶ地域高規格道路であり、北薩トンネルは、その路線上にある紫尾山を最高峰とする出水山地を貫くトンネル延長4,850mの長大トンネルです。
 このトンネル工事のうち、出水工区(工区延長2,610m)では、掘削中に最大1,200t/hの大量湧水に見舞われ、トンネル貫通後も恒常的に約600t/hの湧水が発生しました。
 坑口から1,500~2,200mの区間は、0.1~0.3mg/Lの高濃度のヒ素を含有した湧水が確認されました。なかでも坑口から1,800~1,900mの100m区間は、花崗岩と四万十層群の境界で亀裂の発達した低速度帯に相当し、区間湧水も約300t/hと多く、かつヒ素濃度も0.16mg/Lと高く、総ヒ素量の排出が多い区間となっていました。

 ヒ素処理においては、公共用水域における水質汚濁に係わる環境基準(環境対策基本法第16条)に基づき、排出先河川でのヒ素濃度が0.01mg/L以下となることを目標としており、恒久的な対策工として、ヒ素を含む大量湧水を減らすことが必要でした。

 このため、湧水箇所の地山を坑内から改良して、地山の透水係数を小さくすることで、湧水量の減少を図る減水対策工を坑口から1,800~1,900mの100m区間で実施しました。


地質縦断図
図2 地質縦断図



写真1 低速度帯付近の掘削時の大量湧水状況



写真2 トンネル掘削後の壁面からの湧水状況


2. 対策方法

 減水対策工として、トンネル掘削完了後に坑内からトンネル全周方向に、リング状の厚さ3mの地山改良ゾーンを形成する、遮水性の改良を目的としたコンソリデーショングラウチング工を採用しました。この場合、浸透流解析の結果より、厚さ3mの地山の透水係数を4×10-4cm/secから4×10-6cm/secに改良する必要がありました。
 従来の一般的な減水対策工としては、海面下を掘削する青函トンネルに代表されるように、トンネル掘削前に地山からの湧水を止めることが先決で、これから掘削する岩盤の割れ目に水ガラスとセメントミルク等でできた薬液を注入し、固めていく方法(プレグラウチング工法)がとられています。そのため、今回のトンネル掘削後に地山の改良を行う工法(ポストグラウチング工法)はこれまでに施工事例が少なく、その効果の確認方法についても確立されていませんでした。
 そこで今回の施工では、ダムのグラウチング技術に基づき入念な試験施工を実施し、得られたデータを分析して最適な注入パターンや注入仕様等を決定しました。また、グラウチングによる改良効果の確認手法についても、ダムのグラウチング技術による手法が有効であることを確認しました。  

減水対策工の地山改良ゾーン
図3 減水対策工の地山改良ゾーン


地山改良ゾーンの鳥瞰図
図4 地山改良ゾーンの鳥瞰図


減水対策工前
写真3 減水対策工前
(作業時には雨合羽が必要であった)


減水対策工後
写真4 減水対策工後
(天端等からの滴水はほとんど見られない)


 注入材料は、通常のグラウチングで使用される高炉セメント(平均粒径10μm)や超微粒子セメント(平均粒径4μm)では、透水係数を4×10-6cm/secに改良することが難しいことから、新開発の浸透性に優れた極超微粒子セメント(日鉄住金セメント株式会社 Hyper HNP-1500 平均粒径1.5μm)を採用しました。


3. 対策校の効果

 施工結果を分析し、改良ゾーンが目的とする透水係数まで改良されたことを確認しました。また施工後の湧水量は、減水対策工を実施した100m区間で、最大300t/hあった湧水量を40t/h以下に低減し、さらに地下水位は平成28年8月にトンネルの上方およそ160m程度まで回復しました。これらの事実からも、対策工の効果が確認されました。なお、施工中、および施工後の水位回復時において、トンネル構造に有意な変位・応力は生じていないことも確認しています。


透水係数孔密度逓減図
図5 透水係数孔密度逓減図

 

 

 

 【今回の減水対策工を行ったトンネル工事】

 

   工事名称: 道路改築工事(北薩トンネル出水工区)
   工事場所: 鹿児島県出水市高尾野町平八重地内
   発 注 者: 鹿児島県
   施 工 者: 熊谷組・西武建設・渡辺組・鎌田建設 特定建設工事共同企業体
   工 期: 平成21年3月16日~平成26年12月4日
   工事概要: トンネル掘削工L=2,610m,覆工L=1,626.9m, 水対策工L=23m

 

 

   工事名称: 道路改築工事(泊野道路26-4工区)
   工事場所: 鹿児島県出水市高尾野町平八重地内
   発 注 者: 鹿児島県
   施 工 者: 熊谷組・渡辺組 特定建設工事共同企業体
   工 期: 平成26年9月17日~平成27年7月31日
   工事概要: 減水対策工L=21m

 

 

   工事名称: 道路改築工事(泊野道路27-1工区)
   工事場所: 鹿児島県出水市高尾野町平八重地内
   発 注 者: 鹿児島県
   施 工 者: 熊谷組・渡辺組 特定建設工事共同企業体
   工 期: 平成27年6月29日~平成28年10月31日
   工事概要: 減水対策工L=56m

 

 

   工事名称: 道路改築工事(北薩トンネル出水2工区)
   工事場所: 鹿児島県出水市高尾野町平八重地内
   発 注 者: 鹿児島県
   施 工 者: 熊谷組・渡辺組・鎌田建設 特定建設工事共同企業体
   工 期: 平成27年10月9日~平成29年3月17日
   工事概要: 覆工L=982.5m,地下排水工L=2,610m

 


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【本リリースに関する問い合わせ先】
株式会社 熊谷組 経営企画本部 広報部      電話03-3235-8155
【技術に関する問い合わせ先】
株式会社 熊谷組 土木事業本部 トンネル技術部   電話 03-3235-8649         
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