プレスリリース

「微生物による利用指針」に基づく大臣確認を取得

平成23年6月15日

バイオ土壌浄化システムにおいて使用する油分解菌において、「微生物によるバイオレメディエーション利用指針」に基づく大臣確認を取得  -遺伝子解析により油分解菌を常にモニタリング- -難分解性のシクロアルカンを主体とした油汚染土壌の浄化事業ではわが国初-

  立命館大学(理工学部:滋賀県草津市野路東1-1-1 学長:川口清史)および株式会社熊谷組(本社:新宿区津久戸町2-1 取締役社長:大田弘)、日工株式会社(本社:兵庫県明石市大久保町江井島1013-1 取締役社長:深津隆彦)は、各社が持つ掘削+分解菌工法ならびに原位置土壌浄化によるバイオ土壌浄化システムにおいて使用する立命館大学が探索した油分解菌に対して、経済産業省および環境省が策定した「微生物によるバイオレメディエーション利用指針」への適合確認を申請していました。本申請については、菌の安全性等に関する学識経験者による審査を経て平成23年5月6日付にて経済産業省及び環境省より、指針に適合しているとの確認を受けました。
立命館大学と㈱熊谷組、ならびに立命館大学と日工㈱とは各々の工法にてバイオ土壌浄化システムを開発すべく、立命館大学の久保教授が保有する高分解能を持つ油分解菌を利用した手法の開発を行っておりました。従来は、微生物分解の難しいといわれたシクロアルカンを主体とした高沸点成分を含む油汚染土壌の浄化事業に対して、分解能に優れた2種類の菌株を用いた浄化事業計画に対して、菌の安全性等に対して上記利用指針への適合確認を受けました。

1.背景

 平成15年2月に施行された土壌汚染対策法以降、土壌地下水汚染問題への認識はますます広がりを見せ、土地売買や再開発等の際には土壌地下水汚染の調査・対策が広く行われるようになってきた。また、平成22年4月には改正土壌汚染対策法が施行され、掘削除去に偏重した対策の見直しが法改正の大きな目玉となっており、原位置での浄化がますます進むものと考えられている。一方、油汚染問題に関しては、平成18年に油汚染対策ガイドラインが制定され社会的関心が高まりつつあり、油膜や油臭などの生活環境保全の上で土地所有者などに厳しい対応が迫られている。
 油汚染の対策としては、汚染土壌を掘削した後に、非汚染土壌と置換する方法や石灰と混合する方法、微生物を利用したバイオレメディエーションなどがよく用いられている。油汚染はトリクロロエチレンなどの揮発性有機化合物に比べ、微生物による分解性が高く処理に適していると言われているが、そのバイオレメディエーションに対しても、処理に要する時間が長い、土壌中で分解微生物がどのように働いているかの挙動や活性状態が不明であり、制御型の処理が難しいなどの問題点が多く指摘されている。
 そこで、立命館大学と熊谷組ならびに日工では、各社が持つ独自のバイオ浄化工法において、油分解能が高く、かつ安全性の高い分解菌を用い、浄化をより確実に、安全に行うための検討を行ってきた。各社の保有する浄化工法は次に示す。
 なお、日工㈱の「土壌混練工法」は、立命館大学とともに経済産業省の「地域新生コンソーシアム研究開発事業」(2005~2006年度)の支援を受けて開発した。また、㈱熊谷組の「原位置注入工法」は、立命館大学、星和電機㈱とともにNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「大学発事業創出実用化研究開発事業」(2006~2008年度)の支援を受けて開発した。

2.浄化システムの概要

(1)土壌混練工法
  ①浄化システム

 

図-1 土壌混練工法イメージ図

 浄化対象になる土壌は石油汚染土壌になる。汚染現場より掘削した土壌を事前に必ず調査を行う。調査する項目は、油汚染物質の種類と濃度を測定し、そのデータを基に汚染土壌に添加する微生物量と栄養素の量を事前に把握しておく。
 本土壌混練法はバイオレメディエーション装置に土壌を入れると、重量を定量し、添加する微生物の量と栄養の量を試算する。また、混練は微生物が死滅しない、かつ最適に土壌中に分散される回転数と混練時間によって管理される。排出された土壌は、バイオパイル状に養生し、遺伝子解析技術を活用したe-DNA解析技術などにより定期的にモニタリングし、浄化促進と微生物を追加する時期を確認する。
本浄化工法の特徴としては、以下のことが挙げられる。

 ① 微生物と栄養素の定量添加
 ② 混練にて土壌中に最適に微生物を分散させ、かつ酸素を土壌中へ供給
 ③ 遺伝子解析技術により微生物を管理する

(2)原位置浄化方法
 ①概要

図-2 原位置オプトバイオ土壌浄化システム(バイオフレックスモール工法) イメージ図


 浄化のイメージを図―2に示す。操業中の工場の建屋下などにおいて、事前の調査やシミュレーションをもとにした汚染箇所に対して、自在削孔技術を駆使して井戸管(二重管)を敷設し、汚染域にLED照射で活性化した石油分解菌を的確に注入することにより、汚染物質である油の分解・浄化を行う処理方法である。微生物の活性状態の把握は、遺伝子解析技術を活用したe-DNA解析技術などにより常にモニタリングし、浄化促進を確認する。
 微生物の注入は水平井戸管に限定したものではなく、従来から実施されている垂直井戸管からの注入も想定している。操業中の工場の建屋下などにおいて、事前の調査やシミュレーションをもとにした汚染箇所に対して、自在削孔技術を駆使して井戸管(二重管)を敷設し、汚染域にLED照射で活性化した石油分解菌を的確に注入することにより、汚染物質である油の分解・浄化を行う処理方法である。微生物の活性状態の把握は、遺伝子解析技術を活用したe-DNA解析技術などにより常にモニタリングし、浄化促進を確認する。
②特徴
a) 光(LED)照射による微生物活性化
b) 遺伝子解析技術を活用した微生物定量化(e-DNA解析技術、real-time PCR手法)
c) 汚染拡散シミュレーションおよび浄化予測シミュレーション
d)自在削孔・地盤注入技術

 

3.油分解菌の特徴

(1)油分解菌
本システムで用いる石油分解菌は、Rhodococcus sp.NDKK6株およびGordonia sp.NDKY76A株である(第3図)。両菌株とも、直鎖状炭化水素や長鎖環状アルカンを唯一の炭素源として生育する微生物であり、自然環境中では普遍的に存在している菌である。
(2) 石油分解菌ライブラリー
既存の分解菌のほか、新規に分離した石油分解菌、合計61菌株について、油の種類・成分ごとに分解性能や増殖能、微生物分類を解析し、ライブラリーを完成させた。将来的には100菌株のライブラリーを目指している。これにより汚染物質に対応した最適な微生物選択が可能となる。


 

図-2 石油分解菌ライブラリー

(3) 石油分解菌の特異的・定量的な検出方法
 バイオレメディエーションの効率化に対しては、多種多様な微生物が存在する土壌中の石油分解菌の把握が重要である。本研究では、すでに構築しているe-DNAによる土壌中の総菌数検出技術をさらに発展させ、e-DNAを用いた石油分解菌のみの検出技術(real-time PCR手法)の構築に成功した。

4.菌の安全性確認

(1)安全性試験
  分解菌の安全性評価は、大きく分けて下記の調査により安全性を確認した。(図―3参照)
・ 文献調査による菌に対する既知の情報収集
・ 動植物試験による安全性確認
・ 他の微生物に対する影響検討、分解菌の挙動解析


図-3 安全性評価方法の全体の流れ

 

 使用する分解菌に関しては、まずRhodococcus sp.NDKK6株については近縁種に寄生性・病原性は認められなかった。ただ、Gordonia sp.NDKY76A株については近縁種の一部に日和見感染症との類似性情報が確認されたが、菌の使用方法や環境影響への防止策を取ることでの使用を認められたため、使用現場でのリスク回避策を講じる計画とした。

(2)他の微生物に対する影響検討

図-4 土壌微生物評価法の概要

 利用する石油分解菌は、石油汚染がある場合にのみ土壌中で増殖・維持し、石油の浄化(汚染濃度の減少)と共にその微生物数は減少する。これらの特徴を有するため、当該石油分解菌は、処理区域以外に漏洩した場合、石油が存在しないため直ちに減少・消滅すると考えられる。ただし万が一のことを考慮して、バイオレメディエーション浄化中及び終了後には、独自に開発した分子生物学的手法により当該石油分解菌を追跡する。
 一方、利用する石油分解菌は、環境中に生息する種々の土壌微生物に悪影響を及ぼさないことが明らかとなっているが、バイオレメディエーション浄化中において、独自に開発した環境DNA解析法により環境微生物数のモニタリングも併せて実施する。

5.今後の展開

 これまでの研究により、石油分解菌(Rhodococcus sp.NDKK6株およびGordonia sp.NDKY76A株)はもちろんのこと、もともとの土中に存在する土着の石油分解に寄与する菌についても、すべて遺伝子解析によりモニタリングすることが可能になった。これにより、石油分解に寄与する菌は浄化開始後の菌の増減をすべて解析し、常に菌の活性状態が現状どのような状況にあるかを把握でき、浄化途中でトラブルが発生したときに適切な対応が可能となった。
 また、菌の安全性評価ができたことで、今後は早期の実用化を図るべく、各工法において適宜展開を進めていきたいと考える。展開の過程では、菌の外販も視野に入れつつ、場合によっては工法別の工法協会等を立ち上げて、広く社会に展開することも検討中である。

以上


[お問い合わせ先]
[本リリースに関するお問い合わせ先]
株式会社 熊谷組  広報室
室長:藤島 幸雄
担当:石賀 慎一郎 (電話03-3235-8155)
[技術に関するお問い合わせ先]
株式会社 熊谷組  技術研究所 地球環境・地盤グループ
部長:門倉 伸行
担当:佐々木 静郎 (電話029-847-7505)
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