プレスリリース

Newダイレクトカラム構法の開発

平成21年10月14日

Newダイレクトカラム構法の開発
‐既製PRC杭を利用した平屋建て合理化構法‐

株式会社熊谷組(取締役社長 大田 弘、本社 東京都新宿区)は、既製PRC杭を構造物の柱として利用し、平屋建ての屋上を駐車場として利用できるNewダイレクトカラム構法を開発しましたのでお知らせします。従来のダイレクトカラム構法では、屋根だけにしか利用できなかったものを、柱と梁の接合部を剛接合化することにより実現しました。
2009年9月に、「Newダイレクトカラム構法 遠心成形中空円形PRC杭柱・鉄骨梁架構法」として(財)日本建築総合試験所の建築技術性能証明を取得しました。今後、熊谷組の設計施工物件に積極的に採用していく方針です。

1.背景

 従来、低層の生産施設や商業施設は、鉄骨造で作られることがほとんどですが、鉄骨造では短工期となるがコストが高い、鉄筋コンクリート造ではコストは安いが工期が長くなるなど、それぞれ課題がありました。また、柱を鉄筋コンクリート、梁を鉄骨とする混合構造などの構法もありましたが、柱梁接合部の納まりが煩雑となるなどの欠点がありました。そこで、鉄筋コンクリート造なみの低コストで、かつ鉄骨造なみの短工期で、高品質な平屋建築物を実現する構法として開発したのが、この「Newダイレクトカラム構法」です。

2.概要

 今回開発した「Newダイレクトカラム構法」は、当社独自構法である「ダイレクトカラム構法」の機能アップを図った構法です。
従来のダイレクトカラム構法とは、地中に打ち込まれた杭が地上にも突出し、構造物の柱を兼ねる全く新しい技術でした。基礎フーチングや基礎梁が不要になり、また加工を簡略化した鉄骨部材の採用などと相まって、工期短縮と優れたコストメリットを同時に実現しました。平屋建ての商業施設、倉庫や工場などに適した構法です。なお、このダイレクトカラム構法は(財)日本建築センターの評価(BCJ-C2319、平成12年2月16日)を取得しております。
 従来のダイレクトカラム構法では、屋根として仕上げ材などの軽量物(鋼製折板、金属板などの)に限定されており、コンクリート版のような重量材を支えることはできませんでした。これは屋根を支える鉄骨梁と杭柱頭部(杭端部)の接合方法がピン接合に限定されていたためです。
そこで、今回は杭柱と鉄骨梁の接合部を剛接合化することにより、屋根だけでなく駐車場までの荷重を支えられるようにしたのが「Newダイレクトカラム構法」です。

在来構法

 

 

 

・在来構法
基礎フーチングと基礎梁を有する
地上部の柱は鉄骨

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイレクトカラム構法

 

 

 

 

・ダイレクトカラム構法
基礎フーチングと基礎梁を無くせる
地上部の柱は杭を突出させる
屋根構造しか建てられない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Newダイレクトカラム構法

 

 

 

 

・Newダイレクトカラム構法
基礎フーチングと基礎梁を無くせる
地上部の柱は杭を突出させる
屋上を駐車場として利用可能
(柱と梁は剛接合)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.本構法の特徴

(1)柱梁接合部の剛接合化
  Newダイレクトカラム構法の最大の特徴は、ダイレクトカラム構法における柱梁接合部を剛接合化しものです。ダイレクトカラム構法では、鉄骨梁は杭端部に載せるような納まり(ピン接合)でした。Newダイレクトカラム構法では、梁鉄骨(ブラケット)を溶接した鋼管をPRC杭に被せ入れて、鋼管とPRC杭の間隙をモルタルで充填することにより剛接合を実現しております。

Newダイレクトカラム構法概略図(柱梁接合部)

 

(2)既製杭を利用
既製のプレストレスト鉄筋コンクリート杭(以下、PRC杭)を支持杭と1階部分の柱に兼用します。PRC杭とは杭主筋にPC鋼材と異形鉄筋を併用し、帯筋としてスパイラル筋を配置することで、高軸力・高曲げ強度を有し、変形性能とせん断強度が大きい既製杭です。導入されているプレストレスは約6N/mm2程度です。工場生産による遠心成形杭を利用しているので高品質で、かつ構造性能も安定しております。
(3)合理化構法
  PRC杭を支持杭と1階柱として兼用するため、基礎梁・フーチングが無くすことができ、土工事と鉄筋コンクリート工事を大幅に削減できます。土工事は、必要に応じて表層の地盤改良工事が必要となる場合があります。また、鉄筋コンクリート工事(型枠・鉄筋)は、1階床の土間コンクリートと屋上スラブの工事だけとなります。
(4)環境負荷低減
  土工事に伴う残土の排出の削減、鉄筋コンクリート工事における型枠や鉄筋の使用量の削減などにより現場における環境負荷を低減できます。


4.構造性能確認実験

 Newダイレクトカラム構法の開発に伴い、本構法の構造性能を確認する実験を行いました。本構法の柱梁接合部における応力伝達機構の概要を下図に示します。本構法の開発に当たり、下記に記す3種類の実験を実施しました。
(1) 鉄骨梁を支える打込鋼管とT形ブラケット(接合鋼管受け部)の圧縮実験
(2) 接合鋼管に取り付いた鉄骨フランジ(梁端接合部)の引張実験
(3) PRC杭と鉄骨梁によるT字形(接合部パネル)の架構実験

Newダイレクトカラム構法の接合部における応力伝達機構の概要



(1) 鉄骨梁を支える打込鋼管とT形ブラケット(接合鋼管受け部)の圧縮実験
接合鋼管受け部とは接合鋼管が載るT形ブラケットと、T形ブラケットが溶接接合された打込鋼管を指します。T形ブラケットは接合鋼管から曲げとせん断力を受けます。打込鋼管はPRC杭柱に打ち込まれているのでコンクリートによる支圧抵抗を受けます。この2つの性能を確認するための実験を合計9体行うとともに、設計指針をまとめるための基礎資料を得ました。

鉄骨梁を支える打込鋼管とT形ブラケット(接合鋼管受け部)の圧縮実験鉄骨梁を支える打込鋼管とT形ブラケット(接合鋼管受け部)の圧縮実験


(2) 接合鋼管に取り付いた鉄骨フランジ(梁端接合部)の引張実験
  梁端接合部は接合鋼管側面にノンダイヤフラム形式で鉄骨梁が溶接接合された部分を指します。梁端接合部は鉄骨フランジによる接合鋼管の面外引張力に対して抵抗します。この面外引張抵抗強さを把握するために合計9体の実験を行い、設計指針をまとめるための基礎資料を得ました。

接合鋼管に取り付いた鉄骨フランジ(梁端接合部)の引張実験接合鋼管に取り付いた鉄骨フランジ(梁端接合部)の引張実験


(3) PRC杭と鉄骨梁によるT字形(接合部パネル)の架構実験
  接合部パネルは接合鋼管、充填モルタルとPRC杭が重ね合わさった部分です。Newダイレクトカラム構法ではこの接合部パネルを剛接合化しましたので、その性能を確かめるための架構実験を行いました。PRC杭と鉄骨梁をT字形に組んだ架構試験体3体の実験を行い、接合部パネルを設計するための基礎資料を得ました。

PRC杭と鉄骨梁によるT字形(接合部パネル)の架構実験PRC杭と鉄骨梁によるT字形(接合部パネル)の架構実験

 


5.今後の展開

(1) 施工
  現在、Newダイレクトカラム構法が適用できそうな対象物件が数件あります。本案件について実施工に向けて設計をしております。
(2) コスト
  Newダイレクトカラム構法は、ダイレクトカラム構法の柱梁接合部を剛接合化して機能アップを図ったものです。従いまして、Newダイレクトカラム構法の工期・コストメリットは、ダイレクトカラム構法とほぼ同様と考えております。
下記の算定条件を設定した場合、在来構法と比較して、工期は約1ヶ月間短縮可能です。また、コストダウンは、既製杭と基礎併用構法に比べて約5%低減可能です。なお、本試算は建物についてのみ行ったものであります。Newダイレクトカラム構法では屋上を駐車場として利用できるので、土地の有効利用の効果があります。


(3) 展望
  今後、低コストと短工期を同時に求められる商業施設、生産施設や倉庫などの平屋建築における有力な架構技術としてNewダイレクトカラム構法を積極的に提案、採用していきたいと考えております。また、(財)日本建築総合試験所の建築技術性能証明を取得したことにより、本構法の評価も確実なものとなりましたので、今後更なる普及展開を図る所存です。

 



[お問い合わせ先]
[本リリースに関するお問い合わせ先]
株式会社 熊谷組  広報室
室長:藤島 幸雄
担当:石賀 慎一郎 (電話03-3235-8155)
[技術に関するお問い合わせ先]
株式会社熊谷組 技術研究所 建築構造研究グループ  
担当:濱田 真  (電話03-3235-8722)
担当:森 利弘  (電話03-3235-8721)

 

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