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本社ビルに屋上緑化を実施
本社ビルに屋上緑化を実施
株式会社熊谷組(取締役社長:大田弘 本社:東京都新宿区)は、熊谷組本社ビルの屋上緑化を実施しました。つくば技術研究所(所在地:茨城県つくば市鬼ヶ窪1043)において開発した、荷重を抑えたビオトープ(平成18年3月発表)の技術などを取り入れ、160平米の面積を緑化しました。軽量屋上ビオトープの実規模物件の第一号となるもので、この成果を元に新屋上緑化工法として積極的に展開する予定です。

1.背景
都市部では、日射による熱が建築物の屋上等に蓄積され、その後大気中へ放出されることにより、都市全体が周辺地域に比べて高くなる、いわゆるヒートアイランド現象が問題となっています。このヒートアイランド現象を抑制するための対策の一つとして、屋上緑化が行われています。とくに、国や一部地方自治体が屋上緑化に関する補助金制度を整備したこともあり、急速に普及しています。また、東京都では条例により、敷地面積1,000 m2以上の新築建物については屋上を20%以上緑化することを義務付けたこともあり、屋上緑化の需要はますます高まってきています。
一方、屋上緑化の目的も、ヒートアイランド抑制などの省エネルギー効果や建築物の保護効果のみならず、景観・美観の向上、癒し・安らぎの場の創出、宣伝・集客効果など、様々な観点からのニーズが高まっています。それに応じて、緑化の手法も、芝生やセダム類による画一的な薄層緑化から花や樹木を導入したガーデニング、庭園、さらには生態系の保全を考慮した屋上ビオトープまで大きな広がりを見せています。
これまでの屋上ビオトープは、そこを住処とする鳥、昆虫、小動物が周辺環境とのネットワークを図ることで、都市部に豊かな自然の回復を果たしていたものでした。われわれは、このような従来の屋上ビオトープづくりに加え、更なる応用として、失われた自然の象徴ともいえるホタルが棲める環境づくり「屋上ホタルビオトープ」にも取り組んでいます。今回は、本年3月にプレス発表した積載荷重を抑えた軽量屋上ビオトープの実規模物件第一号、また既存建築物への適用事例として、本社ビルへの施行を図ったものです。
なお、今回の屋上緑化の事業推進に当たっては、東京都の平成18年度クールルーフ推進事業 注1)に応募、審査の結果採用され、事業費の1/2の助成金を受け実施しています。
注1) クールルーフ推進事業
新築建築物においては、区条例や東京都の自然保護条例の施行等から、屋上緑化の義務付けによる被覆対策の推進を図られているが、荷重や防水等からの課題から、既存建築物での普及が遅れていた。本事業ではこれらの対策を実施する建物所有者を支援し、被覆対策の推進を図ることにより、東京のヒートアイランド対策を推進するとともに、室内への貫流熱を抑制し、省エネルギー化による地球温暖化対策を推進することを目的としている。さらには、適用技術の導入を促進し、広く普及することにより、当該技術のさらなる普及促進および技術開発を促し、併せて環境と経済の好循環を図ることを目的にしている。交付額は対象経費の1/2(交付上限2,000万円)である。
2.本屋上緑化の内容
(1)概要
今回の緑化は、熊谷組本社ビル(新宿区津久戸町2-1)の2階会議室の屋上部分を160m2にわたり緑化したものです。実施事業の概要を表1に示します。また、緑化の内容は図1、図2に示すように、芝生部分、ビオトープを含む里山部分、藤棚等の立体的部分から構成され、多様な緑化要素を取り入れています。緑化工事に当たっては、本社ビルが竣工後30年以上を経過しているため、あらかじめ緑化工事部に防水工事を施しました。クールルーフ推進事業の採択により、事業費は防水工事を含め5,814,800円、交付金としてその1/2の2,907,000円。
表1 実施事業概要
| 法定建ぺい率 | 62.7% | 敷地面積 | 2689.3m2 | 建築面積 | 1784.73m2 |
| 屋上面積(利用 可能部分*1) | 760.52m2(2F 屋上部) | 建築物上の緑化 基準面積(a) | - | 総延床面積 | 15,177.16m2 |
| 屋上緑化面積(b)=(c)+(d) | 160m2 | 樹木の面積(c) | 16㎡ | 芝・草花等の面積(d) | 144m2 |
| 主な植物の種類 | 樹木類(シラカシ、ヤマボウシ、ウメ他)、芝・草花などの草本類(コウライシバ、ビオラ、ハラン他)、その他(ニワゼキショウ、マコモ、アイビー他) | ||||
| 平均土壌厚*2 | 170mm | 平米当たり荷重*3 | 170kg/㎡ | 平米当たり単価*4 | 36,300円/m2 |
| 交付対象 緑化面積(e) | 【都及び区の緑化計画書制度に該当する場合】 =屋上緑化面積(b)-建築物上の緑化基準面積(a) 【上記以外の場合】 =屋上緑化面積(b) |
160m2 | |||
*1)建築物の屋根部分で、人の出入り及び利用可能な部分の面積のうち、ソーラーパネル、空調等のビル管理に必要な施設の設置のために緑化が困難な部分を除いた面積
*2)総体積を総面積で除して平均値を求めた
*3)総重量を総面積で除して求めた
*4)総工事費を総面積で除して求めた
(2)特徴
緑化のコンセプトとしては、まず第一が発泡スチロールを積み重ねる軽量積層構造工法と、素焼鉢を積み重ねる軽量版築構造工法の採用です。前者は図3に示すように等高線に合わせた発泡スチロールを地盤軽量化のために活用するもので、軽量効果は最も高く、発泡スチロールの構造材としての実績もあり、信頼性が高い。後者は、古来からの技術である版築を地盤軽量化に活用した例で、図4にあるように素焼鉢の積み重ねにより空隙率を上げ、軽石の充填により軽量化を図っています。石油由来製品を使用しない環境配慮型の工法とも言え、鉢の逆使いは水琴窟等の在来工法での実績もあります。
第二のコンセプトは、角型の施工域に楕円構造(森の舟)を一つの独立部として大小の単体を組み合わせ、一つの庭園を構成していることです(図5)。楕円の使用により、象徴的な広がりを演出しており、伝統的技術である盆景も可能です。
(屋上緑化関連特許4件出願中)


図3 軽量積層構造工法


図4 軽量版築構造工法

図5 楕円単体の組合せによる庭園構成
里山部分の特徴として下記が挙げられる。
- ① 軽量化達成のため、植生の基盤に発泡スチロールや素焼鉢を嵩上げ材として利用し、最低限の植生基盤土壌の使用量とした。
- ② 上記構造により、施工の容易化および低コスト化が図れた。
- ③ 楕円構造の組み合わせにより、象徴的な広がりを演出、デザインの自在性が確保できた。
- ④ 上記楕円構造の中心部を窪ませすり鉢形にすることにより、雨水の効率的な集水と土壌の流出防止を図った。
期待される効果としては、以下のとおりです。
- ■環境面:
- 屋上緑化・被覆による屋上面の表面温度上昇低減効果
- 室内空調負荷低減によるCO2削減効果
- ■経済面:
- 一般公開(顧客対象)による屋上緑化の啓蒙促進
- 技術の普及展開
- 職員の癒し・安らぎによる職場環境の改善
(3)維持管理
1) 方法
- ・建物管理:排水部の清掃頻度 1回/月、防水層の点検 1回/年
- ・植栽管理:植生成長状況および病害虫の点検 1回/週、剪定 2回/年、植栽植え替え 植種に応じ適宜実施
- ・潅水設備:自動潅水 1~2回/日、10分/回
2) 体制
本社ビルのため、本社社員有志による自主管理を基本とする
表2 維持管理項目および点検内容
| 点検項目 | 点検作業項目 | ||
| 建築物の管理 | 防水層の点検 | 植栽域防水層の端部付近に損傷、剥離、雨水侵入形跡がないか | 除去清掃 補修 |
| 植栽域以外の防水層に損傷、剥離がないか | |||
| 立ち上がり防水層に植物根の侵入がないか | |||
| 雨水・排水ドレイ ンの点検・清掃 | 落ち葉、泥、土壌の堆積、雑草の生育がないか | 除去清掃 | |
| 排水路(溝)の 点検・清掃 | 落ち葉、泥、土壌の堆積、雑草の生育がないか | ||
| 植栽・ 生物管理 | 植栽・生物状況点検 | 植付け植栽以外の雑草の生育がないか | 除草 |
| 植物の生育不良が起きてないか | 施肥、補修等 | ||
| 枯損植物が発生していないか | 撤去、捕植等 | ||
| 病害虫が発生していないか | 薬剤散布 | ||
| 土壌が飛散、流出していないか | 土壌補填 | ||
| 導入した生物の生育は順調か、死滅はないか | 生物補填 | ||
| 導入した生物以外の生物の生育はないか | 除去 | ||
| その他異常はないか | |||
| 緑化施設の管理 | 植栽域排水口の点検・清掃 | 落ち葉、泥、土壌の堆積、雑草の生育がないか | |
| 自動潅水 | 潅水パイプに破損や詰まりがないか | ラッシュバルブ点検、交換等 | |
| 電磁弁・タイマーは適切に作動しているか | 試験作動、 交換等 | ||
| フィルターや逆止弁、電源電池に異常はないか | 試験作動、 交換等 | ||
3.今後の展開
嵩上げ材や工法に工夫を加えることで、軽量でありながら意匠性に富む里山を連想する緑化を具現化しました。今回の本社ビルへの適用例のように、これに芝生による緑化や藤棚のような立体的な緑化等も組み合わせることで、顧客ニーズに柔軟に対応したより多様性のある屋上緑化を提案できると考えます。
今後、ビオトープとしてのモニタリングや植栽基盤温度計測の評価を継続して行うとともに、新屋上緑化工法として積極的な展開を図っていきたいと考えています。


