プレスリリース

積載荷重を抑えた簡易システム型の屋上ビオトープを開発

平成18年3月27日

積載荷重を抑えた簡易システム型の屋上ビオトープを開発

株式会社熊谷組(取締役社長 大田 弘、本社 東京都新宿区)は、積載荷重を抑えた簡易システム型のビオトープを開発しました。平成17年夏から、つくば技術研究所(所在地:茨城県つくば市鬼ヶ窪1043)において実証実験による検証を行ってきました。今後、その成果をもとに新屋上緑化工法として積極的に展開する予定です。

背景

都市部では、日射による熱が建築物の屋上等に蓄積され、その後大気中へ放出されることにより、都市全体が周辺地域に比べて高くなる、いわゆるヒートアイランド現象が問題となっています。このヒートアイランド現象を抑制するための対策の一つとして、屋上緑化が行われています。とくに、国や一部地方自治体が屋上緑化に関する補助金制度を整備したこともあり、急速に普及しています。また、東京都では条例により、敷地面積1,000 m2以上の新築建物については屋上を20%以上緑化することを義務付けたこともあり、屋上緑化の需要はますます高まってきています。

一方、屋上緑化の目的も、ヒートアイランド抑制などの省エネルギー効果や建築物の保護効果のみならず、景観・美観の向上、癒し・安らぎの場の創出、宣伝・集客効果など、様々な観点からのニーズが高まっています。それに応じて、緑化の手法も、芝生やセダム類による画一的な薄層緑化から花や樹木を導入したガーデニング、庭園、さらには生態系の保全を考慮した屋上ビオトープまで大きな広がりを見せています。

これまでの屋上ビオトープは、そこを住処とする鳥、昆虫、小動物が周辺環境とのネットワークを図ることで、都市部に豊かな自然の回復を果たしていました。熊谷組は、このような従来の屋上ビオトープづくりに加え、更なる応用として、失われた自然の象徴ともいえるホタルが棲める環境づくり「屋上ホタルビオトープ」に取り組んでいます。

なお、「ホタルビオトープ」は、当社において4年前から取り組んでおり、ホタルの卵~羽化まで、ホタルや餌となるカワニナが生息するに適した「水づくり」「土づくり」を基本に開発した技術です。基本特許は、グリーンパワー研究会が保有しており、その技術協力のもと実施しています。これまでの実績は屋上への適用も含め15件となりました。

本屋上緑化工法の内容

前述の都民広場およびいぶきの病院の例では、積載荷重が十分に確保(300kg/ m2以上)されていた関係で、荷重低減については大きな検討課題ではありませんでした。しかし、一般のビル屋上への展開を図る上ではより軽量化を図る必要があります。そこで、通常のビル屋上の積載荷重180kg/ m2以下を目標にした軽量のコンテナ型システムを開発し、つくば技術研究所内に昨年7月施工、実証実験を行いました。システムの概要ならびに開始後の状況について以下に概要を示します。

(1)緑化システム

システムを構築するに当たっては、以下のことを達成すべく、全体設計、材料の選定、植栽の検討を行いました。

  • 1) 積載荷重の低減(180kg/m2以下)
  • 2) 施工の容易化
  • 3) 施工コスト低減
  • 4) 潅水システムの不要
  • 5) 花卉を中心にしたビオトープ
  • 6) 効率的な水質浄化

コンテナ型軽量屋上ホタルビオトープ平・断面図

コンテナ型軽量屋上ホタルビオトープ平・断面図

都庁やいぶきの病院の屋上ホタルビオトープと比較して、システムの大きな変更点は以下の通りです。その他、ホタルビオトープの基本的な考え方はこれまでと同様です。

  • ■植生の基盤土壌は最低限の土量とし、下層は板状の発泡スチロールを積み重ねて嵩上げする
  • ■植生基盤土は、ユニット型のコンテナを発泡スチロールの上に敷き並べ、その上に人工軽量土壌を投入することで、軽量化と施工の容易化を図る
  • ■植生基盤下層への水の貯留は、最下流の池の周囲のみとし、より一層の軽量化を図る
  • ■池周囲の水の貯留部には粒状の発泡廃ガラス(商品名ミラクルソル、日本建設技術)を充填し、多孔質材料による生物ろ過効果を増大させる
  • ■ユニット型コンテナ(商品名TRG屋上緑化ユニット、トヨタルーフガーデン)には、人工軽量土壌とともに粒状および粉末状の発泡廃ガラスを混ぜ、土壌の保水能力を高める
  • ■せせらぎはアルミのフレキ管を半割することで、軽量化を図るとともに自由自在な蛇行を可能にした。表面には薄層のヤシ繊維を巻き、水草や苔の定着を容易にした
  • ■ヤシ繊維の水辺部分に苔を全面に張ることにより、ホタルの卵の産卵場の創出とともに、せせらぎの水を植生土壌に供給する役目を持たせた
  • ■植生は従来使用してきた野草に代えて、ハーブや花卉を中心に植栽し、植栽を施した以外の土壌表面には、散布型の苔(商品名 シルデミックス、モスキャッチシステムサービス)を散布し、全面緑化のイメージを向上させる  

なお、水の貯留部を発泡材料などの多孔質材料を用いることで最下流の池の周囲のみに限定したこと、およびせせらぎから土壌への水の供給を繊維質材料を用いて達成することで特許出願をしています。

以上の計画にしたがい、平成17年7月に技術研究所内にコンテナ型軽量屋上ホタルビオトープを施工しました。なお、設置場所は屋上ではなく、地上の実験ヤード(コンクリートたたき)を屋上コンクリートスラブと想定して施工しました。積載荷重は178kg/ m2と目標をクリアーすることができました。

(写真1:施工状況)

発泡スチロール設置

発泡スチロール設置

ユニット型コンテナ設置

ユニット型コンテナ設置

コンテナへの発泡廃ガラス充填

コンテナへの発泡廃ガラス充填

発泡廃ガラスに軽量土壌混合

発泡廃ガラスに軽量土壌混合

アルミフレキ管と池の接合

アルミフレキ管と池の接合

施工直後の全景

施工直後の全景

写真1 コンテナ型軽量屋上ホタルビオトープ施工状況

(2)モニタリングによる効果確認

1)生物定着状況

(写真2:施工1ヵ月後のビオトープ全体および生物の定着状況)

植生は夏場の高温期にもかかわらず、すべての植物が枯れることなく順調に成長しました。せせらぎならびに池に貼り付けた苔も定着し、苔を介してせせらぎの水分が植生の土壌へ供給されていることが観察により確認できました。また、メダカは無数の稚魚を産み、カワニナの稚貝もせせらぎおよび池の中で数多く観察され、世代交代が順調に推移していることが確認されました。

ビオトープ全景

ビオトープ全景

発泡スチロール嵩上げ状況

発泡スチロール嵩上げ状況

下流池

下流池

せせらぎ

せせらぎ

池のメダカの稚魚

池のメダカの稚魚

カワニナの稚貝

カワニナの稚貝

写真2 施工1ヵ月後のホタルビオトープ

2)熱負荷抑制効果

ビオトープ周囲のコンクリートスラブ上の温度は、昼の12:00前後において最高49℃を示しました。同時間帯におけるビオトープの土壌表面温度は、中流部と下流部を比較すると、前者が51℃、後者が40℃となり、最大10℃の差が見られました。これは、下流部は池からのオーバーフロー水が土壌下面に貯留する構造となっている箇所で、大量の水分蒸散によるクーリング効果によるものと考えられます。下流部の表面、土中10cm、20cmを比較すると、下層になるほど昼間の時間帯では地中温度が低くなっています。池の水温は、中流部および下流部の土中10cmの温度とほぼ同じ挙動を示し、下流部の土中20cmの温度挙動とは異なっていました。池の水温は太陽光の直射や気温の影響を受けており、土中深い部分とは異なることがわかりました。なお、下流部の3層の地中温度は夕方17:00以降になると逆転現象を起こし、最下層部の温度が高くなり、この傾向は翌日の明け方まで続きます。これは、下層に貯留された水による保温効果です。コンクリートスラブ上と比較した温度抑制効果で見ると、下流部の土中20cmで最大22℃、中流部の土中10cmで最大14℃でした。

コンテナ型軽量屋上ホタルビオトープ温度測定結果

コンテナ型軽量屋上ホタルビオトープ温度測定結果
*グラフをクリックすると大きくご覧になれます(PDF)

今後の展開

本屋上緑化工法は、ホタルビオトープの一層の普及を図るため、軽量化、施工の容易化、コスト低減を目指して開発したモデルです。この事例では、見た目のきれいさ・華やかさという、これまでとは違った観点から、花卉を中心とした緑化づくりを目指しました。顧客のニーズが多様化する中、ホタルの飛翔がない夏季以外は、顧客が好みの花を植え替えられるように、コンテナタイプでの緑化を図りました。施工の簡素化にもつながるシステムと考えられます。また、軽量化を図る上では、循環水の貯留部分の縮小や土壌の軽量化、せせらぎなどの材料選定など、いくつかの特徴づけができたと思っています。今後、ビオトープとしてのモニタリングを継続し、その成果をもとに新屋上緑化工法として積極的な展開を図っていきたいと考えています。

[お問い合わせ先]
株式会社 熊谷組
[本リリースに関するお問い合わせ先]
広報室
室長:藤島 幸雄
担当:石賀 慎一郎(電話03-3235-8155)
[技術に関するお問い合わせ先]
技術研究所 環境技術研究グループ
部長:門倉 伸行(電話03-3235-8617)
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