プレスリリース

低放射化コンクリートを先端医療施設に適用

平成17年11月11日

低放射化コンクリートを先端医療施設に適用

株式会社 熊谷組(取締役社長 大田 弘)は、放射化特性を低く抑えた「低放射化コンクリート」を、先端医療施設を有する病院建設工事に初めて適用しました。

低放射化コンクリートの打設状況1
低放射化コンクリートの打設状況2

低放射化コンクリートの打設状況

概要

コンクリートが中性子線を浴びると「放射化」という現象が起こり、それまで放射線を出す性質がなかったにもかかわらず、ガンマ線などの放射線を出すようになります。このような特性は、主にコンクリート中の不純な物質に起因するものですが、放射線利用施設のメンテナンス時の作業者や、利用者に対する健康上の配慮が必要となります。また、施設の解体時には、放射化したコンクリートは放射性廃棄物質となり、環境への負荷となると同時に、莫大な廃棄コスト負担を強いられます。

熊谷組は、放射化特性を低く抑えた独自の「低放射化コンクリート」を開発し、先端医療施設を有する病院建設工事に初めて適用しました。

開発の背景

近年の先端医療技術の著しい発展に伴って、放射線によるガン診断やガン治療などの需要が急速に高まってきています。医療施設における放射線利用の例としては、CT*1検査、PET*2検査(ガン診断)や、各種の放射線照射によるガン治療などが挙げられます。PET検査や放射線照射治療を行う医療施設では、建物内に十分な放射線遮蔽を施した部屋を計画し、サイクロトロンやリニアックと呼ばれる医療機器を設置する必要があります。これらの医療機器は各種粒子を高エネルギーに加速し、X線や電子線などの放射線を発生させるものですが、機器の運転に伴い機器外への中性子の漏洩が発生します。サイクロトロン室やリニアック室の壁には厚さ1.5m~2m程度の放射線遮蔽コンクリートが用いられますが、これらの遮蔽コンクリートに対しては、各種放射線に対する遮蔽性能の他に、中性子線によるコンクリートの放射化に配慮する必要があります。熊谷組では、コンクリートの材料組成を綿密に検討し、放射化特性を低く抑えた「低放射化コンクリート」を開発し実用化しました。

*1: Computed Tomography

*2: Positron Emission Tomograph

 

低放射化コンクリートを適用した医療用放射線利用施設の概要

医療用放射線利用施設の概要

特徴

コンクリートの放射化に寄与する主な元素としては、短寿命核種に限定すると、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)といったものが挙げられますが、これらの元素の含有量をナトリウムにおける影響度に換算した「Na総量」と呼ばれる放射化のし易さを表す指標値を用いてコンクリートの低放射化性能を評価しています。

現在、低放射化を目的に特別なコンクリートを使用しはじめている施設では、コンクリートの構成において、「上記元素を容易にコントロール出来る材料はほぼ骨材に限定される」として、骨材を厳選して使用しています。このような従来の低放射化コンクリートでは、セメント成分が放射化の影響割合の多くを占めています。

今回、当社が開発した「低放射化コンクリート」では、放射化の影響割合の多くを占めるセメント成分について、如何に放射化を少なくするかに着目し、セメントを「放射化し難い微粉末材料」に一部置換する技術を取り入れました。

更に、コンクリートを構成するセメント、骨材などの各材料の内、特に細骨材・粗骨材の選定にあたっては、各地域の骨材を横並びに評価し放射化特性を充分に配慮して最適な骨材を選定した上で、上記「放射化し難い微粉末材料」と併せた調合設計に成功しました。  

この結果、一般に使用されているコンクリートに比べ、Na総量の指標値を大幅に低減しました。  

また、施工に当たってはひび割れ制御法を種々検討し、可能な限りひび割れ発生を抑制した施工を実施しました。

今後の展開

当社の放射線施設を含む医療施設の施工実績は、この2~3年で約10件と増加傾向にあります。今後の医療施設は、このようなコンクリートの放射化に対する対策の必要性が増加するものと予想しており、今回開発した「低放射化コンクリート」を積極的に適用していく予定です。同時に、核融合炉や大強度加速器などの各種の研究機関施設などへの適用拡大も図りたいと考えています。

現在、新たな低放射化材料や放射線遮蔽壁の構築方法の研究開発を独立行政法人日本原子力研究開発機構と共同で進めており、各施設で発生する中性子線量に応じた合理的かつ経済的な低放射化コンクリートの仕様・工法を実用化していく予定です。

低放射化コンクリート

[お問い合わせ先]
株式会社 熊谷組
[リリースに関するお問い合わせ先]
広報室
室長:藤島 幸雄
担当:石賀 慎一郎(電話03-3235-8155)
[技術に関するお問い合わせ先]
技術研究所
部長:吉松 賢二(電話03-3235-8722)
担当:前川 利雄
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