プレスリリース

中継型VRSによるRTK-GPS測量の導入について

平成17年6月10日

中継型VRSによるRTK-GPS測量の導入について

株式会社 熊谷組(代表取締役 大田 弘)は、真喜屋ダム建設工事において、中継型VRSを国内で初めて導入し、その効果を実証しました。昨年4月より中継型VRSをダム工事の施工管理等に導入し、1年間に渡ってシステムを運用し、その信頼性を確認しました。これにより、GPS測量に対するコストの削減と、施工管理に対するコストの低減などの成果をあげましたので、お知らせいたします。

1.システムの導入経緯

近年の情報通信機器の発達により、土木工事の情報化施工が浸透しているが、明かり工事ではGPSを用いた施工管理が使用されつつある。しかし、機器の価格が高く、RTK-GPSを使用する場合、基準局と移動局の2台を準備する必要があった。また、現場付近に基準局を設置し、維持管理する必要があるなど、現場に展開するには障害があった。

今回導入した真喜屋ダムはダム軸がS字とまれな形状であるため、ゾーン境の位置出しは従来の光波測量では困難が予想された。また、狭いエリアでの測量となるため測量中の職員と重機械との接触事故等の危険が予想された。そこで、現在大型土木現場で使用されつつあるGPSを用いて測量を短時間に安全にできないか検討を実施した。さらに、従来は固定局と移動局の2台必要としていたGPSを1台の移動局と中継型VRS(※参照)を用いて安価に実施できないか検討し、中継型VRSによるRTK-GPS測量を導入した。

真喜屋ダム施工状況

真喜屋ダム施工状況

2.中継型VRSの概要

ネットワーク型RTK-GPS測量の一種である中継型VRS(※)は、配信機関を通じて配信される国土地理院 電子基準点データを利用し、配信事業者のサーバー内で仮想の基準点となる現場座標を基に解析することで移動局への基準点補正データを無線により送信し、移動局側でRTK-GPS測量を行うものである。これまでのRTK-GPSは高価な基準局を現場内に固定して運用していたが、その費用と運用が現場の負担となっていた。この基準局を仮想基準点に置換え、現場事務所内に設置したインターネットに接続されたシステムPCより補正データを無線で発信することでシステムを運用している。

中継型VRSによるRTK-GPS測量 概要図

中継型VRSによるRTK-GPS測量 概要図

データコレクタ

データコレクタ

中継型VRS管理システム

中継型VRS 管理システム

3.中継型VRSの導入の効果

1.携帯電話の受信品質が悪い地域での利便性の向上   

  • ・利用可能エリアの不安定さの解消   
  • ・切断・再接続に対する時間ロスの防止  

2.無駄な費用負担の削減   

  • ・携帯電話接続料の負担を無くす。  

3.従来型の実基準局設置場所の制限を撤廃   

  • ・取得衛星数が安定   
  • ・計測地点までの距離増加による精度劣化の防止

また、GPS自体もデータコレクタに測量ポイントを表示することで測量作業を効率化し、測量者1名単独での作業負担を軽減している。

(※)ネットワーク型RTK-GPS測量とは、3点以上の電子基準点(以下「基準局」という。)の観測データ等を利用するもので、電子基準点の観測データ等によって算出された補正データ等と、移動局(観測点)(以下「移動局」という。)に設置したGPS測量機で観測したデータを用い、リアルタイムに基線解析または補間処理を行い、移動局の位置を決定する測量をいう。基準局と移動局間の距離に関係なく、短距離基線のRTK-GPS測量と同等の測位精度を実現するものである。  

ネットワーク型RTK-GPS測量の中でこれまでの通常のVRS 方式(Virtual Reference Station:仮想基準点方式 トリンブル・テラサット社開発)は、移動局から概略位置情報を携帯電話により位置情報サービス事業者(以下「配信事業者」という。)に送信し、配信事業者では、移動局周辺の基準局の観測量から補正情報(電離層・対流圏の遅延、衛星の軌道誤差等)を求め、概略位置(以下VRS方式においては「仮想点」という。)で観測されるはずの位相データ等(以下「補正データ等」という。)を計算する。移動局側では、携帯電話により配信事業者から補正データ等を受信し、RTK-GPS 測量を行って位置を求める方式である。 注)国土地理院 ネットワーク型RTK-GPSを利用する公共測量作業マニュアル(案)より引用。  

中継型VRSとは現場事務所などのインターネットが常時接続できるパソコンを介して無線で現場のGPS受信機へ補正データを送り、RTK-GPS測量を行う方式である。中継型VRSの場合、「この移動局が配信業者へ仮想基準点座標情報を送信する部分」と「配信業者から補正データを取得する部分」を事務所のパソコンが行う。配信事業者と現場事務所をADSLなどの回線で常時接続し、現場事務所のパソコンは、回線を通じて、単独測位情報を配信事業者へ送信し、返送されてくる補正データを取得し続ける。その補正データをパソコンと接続している無線機に出力し、現場へ放送を行う。現場での移動局は従来のRTK-GPSと何ら変更することなく、既存の無線機とGPS受信機を利用可能である。

GPS測量状況

GPS測量状況

4.実績からの課題

これまで土工事等でRTK-GPSによる測量や重機運行管理を行う場合、基準局を現場内に設けて、ここから無線等で補正データを配信していた。しかし、基準局用のGPS設備やそのメンテナンス等の費用負担により、大型現場等での運用が多かった。 また携帯電話によるVRSでのRTK-GPS測量は、携帯電話の通話料の負担が大きく、極めて短期間の現場での使用であった。

5.システムが解消した点

中継型VRSを開発し、導入したことで、インターネット経由(ADSL等)で情報を配信することで、携帯電話の通話料を無くし、さらに補正データを無線で配信することで、複数台のGPSの運用を可能とした。これにより、GPS測量が容易に現場へ導入可能となった。

6.導入効果
  • ・配信事業者との通信はADSL回線であるため、携帯電話代のコストがかからない。
  • ・通信時間を気にしないで作業ができ、通信機器の操作は電源のON/OFFだけで簡素化された。
  • ・測量作業者は1名ですむため、光波測量機で行うより、約30%のコストダウンとなった。
  • ・配信業者からはメールや配信用ソフトを通じて、基準局などの休止情報などを現場へ速やかに報告されるため、信頼性が高い。
  • ・携帯電話の届きにくい範囲でも安定して利用可能となった。
7.今後の展開

これまでGPSは比較的大規模な造成工事等に用いられてきたが、基準局の負担がすくなくなり、小規模の現場でもメリットが生かせるようになった。これまで使いにくかったこれらの現場への適用していきたい。

中継型VRSはコスト負担が増えずに長時間の運用が可能で、かつ、複数の移動局へ対応できるため、建設機械の運行管理への適用も拡大していきたい。

工事概要

  • 工 事 名:羽地大川農業水利事業真喜屋ダム建設工事
  • 発 注 者:沖縄総合事務局
  • 工事場所:沖縄県名護市字真喜屋1715
  • 工   期:H11年4月1日~平成17年8月31日
  • 作業所長:伊藤 隆
  • 工事概要:中央遮水ゾーン型フィルダム
    堤体積 357,500m3
    堤高 33.6m
    総貯水量 147万m3
[お問い合わせ先]
株式会社 熊谷組
[リリースに関するお問い合わせ先]
広報室
室長:藤島 幸雄
担当:石賀 慎一郎(電話03-3235-8155)
[技術に関するお問い合わせ先]
土木事業本部 土木部 機材グループ
部長:岩本 雄二郎
担当:北原 成郎(電話03-3235-8627)
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