プレスリリース

日本で初めて限界耐火設計法を実建物へ適用し大臣認定を取得

平成13年10月30日

日本で初めて限界耐火設計法を実建物へ適用し大臣認定を取得

株式会社 熊谷組(取締役社長 鳥飼一俊)は、建物の部分的火災を考慮した限界耐火設計法を早稲田大学(理工学部 長谷見雄二教授)との共同研究により開発し、大井1丁目ビル(仮称)(事業主:住友不動産株式会社)に日本で初めて適用、国土交通大臣の認定を取得しました。 一般的な耐火設計は、空間全体が炎に覆われるような火災を想定しますが、空間容積に比べ可燃物量が極端に少ない建物では部分的な火災となりますので、実状を反映した設計ができませんでした。  

これに対し、部分的火災を考慮した限界耐火設計法はこうした建物の耐火設計を合理的に行うことが可能な設計手法であり、火災による部材性状を実証実験結果に基づき燃焼工学・流体力学的方法論で予測するものです。 大井1丁目ビル(仮称)の耐火設計では、改正建築基準法の高度な設計方法(いわゆるルートC)において本設計法を適用し、火災に対する安全性を充分検討した結果、合理的な耐火設計をおこなうことができました。

当社では、このような建物について今後積極的に本設計手法を適用していく予定です。

1.背景

鉄骨構造建築物は火災による加熱を受けると耐力が低下するため、法令により不燃断熱材による被覆が義務づけられています。旧法では鉄骨部材に対する被覆の方法が、階数や部材ごとに、吹き付けロックウール45mmのように仕様書的に規定されていました。1998年6月に建築基準法が改正され、一定の性能を満たすことを立証すれば、多様な材料、設備、構造方法を採用できる性能規定が導入されました。これにより、耐火設計は以下の3つのルートにより検討することが可能です。

  • ルートA…仕様書的基準によるもので、旧法とほぼ同等の内容。
  • ルートB…告示1433号 耐火性能検証法による耐火設計。
  • ルートC…高度な検証方法を用いた性能的耐火設計法。

火災には、図-1に示すように空間全体が炎に覆われる盛期火災と、火災が空間の一部に留まる局所火災(図-2参照)の2つのケースが考えられます。空間容積に比べ可燃物量が極端に少なく、局所的な火災が予想される建物に対して、図-3に示すような部材全体が加熱されることを想定した耐火設計(ルートB)を行うと、過剰な安全率を要求されることは明らかです。

上記のような建築物の火災安全性は、局所火災加熱の概念を前提とすることによって初めて、合理的な耐火設計が可能となります。

図-1 盛期火災

図-1 盛期火災

図-2 局所火災

図-2 局所火災

 

また、鉄骨構造の場合、金属は他の材料に比べて熱伝導率が高いので、もし、火災による加熱が局所に留まれば部材全体を通じた熱伝導によって部材温度の平均化が促進され、加熱を直接受ける部分の温度上昇が抑制される可能性があります。

これまでの耐火設計では、局所火災のように部材が部分的に加熱されるような状態を想定することが技術的に困難であったため、部材全体が均一に加熱されることを想定していました。限界耐火設計法は、局所的な火災により部材が不均一に加熱を受けることを想定することが可能です。

本設計法は、ルートCにおける設計を目的としたものであり、流体力学・燃焼工学の正当な方法論に基づいて、火源条件から合理的に部材の加熱条件・温度分布を予測可能であるという点で従来手法と一線を画しております。

図-4に示すようにルートCにおける性能設計をおこなうには、様々な実験および検証による裏付けが必要ですが、当社は5年間にわたる同種の研究の蓄積により、この点で先駆的な役割を果たしております。

新法ルートB

新法ルートC

2.開発内容

2.1 開発目的  

本設計法は、改正された建築基準法の耐火性能に関する性能設計(ルートC)の対応技術として、局部火災加熱を考慮した合理的な耐火設計を行い、個々の建物に必要な安全性を十分確保しながら不要な耐火被覆材を省略し、コストダウンや工期の大幅短縮、設計の自由度の向上を図ることを目的としています。

2.2 開発体制

本設計法は、建設省建築研究所と熊谷組による共同研究「局部火災加熱を受ける建築部材の熱的性状予測手法の開発」(1994年より1997年までの3年間)および早稲田大学と熊谷組による共同研究「局部火災加熱を受ける建築部材の無耐火被覆工法」(1999年より2002年までの3年間)において実施した研究および実験成果をとりまとめたものです。

2.3 最新の部材温度予測技術

火災時における構造部材の耐火性能を合理的に評価するためには、部材の温度を正確に予測する必要があります。ルートCによる、一般鋼の無耐火被覆化を目指した既存の研究では、実大規模の駐車場などを用いた実証実験によるものが中心でしたが、この方法では可燃物の量や、火源と構造部材の位置関係等が実験条件の範囲に限定されるため、実建物への普遍的な適用は不可能でした。

本設計法は、局部火災に暴露される構造部材の加熱性状を火源規模および火源と部材の位置関係、部材の種別毎にモデル化しており、建築用途、建物の規模等、設計初期段階で得られる情報から部材各部分の加熱性状(入射熱量)を予測することが可能です。

また、これまでの研究では部材の耐火性能は、実験を通して測定された温度により評価されていましたが、本設計法では、入射熱量により部材の加熱性状をモデル化しているため、鋼種が変わっても再度実験を繰り返す必要はなく、より直接的な評価が可能となりました。

3.建築物の概要

建設地:東京都

主要用途:事務室、共同住宅、駐車場

延べ床面積:28,177[m2]

階数:地下2階、地上14階、塔屋2階

構造:S造(1F~14F)RC造(B2F~B1F)

4.耐火設計の概要

火災時における構造部材の耐火性能を合理的に評価するためには、部材の温度を正確に予測する必要があります。ルートCによる、一般鋼の無耐火被覆化を目指した既存の研究では、実大規模の駐車場などを用いた実証実験によるものが中心でした。しかし、この方法では可燃物の量や、火源と構造部材の位置関係等が実験条件の範囲に限定されるため、実建物への普遍的な適用は不可能でした。

限界耐火設計法は、局部火災に暴露される構造部材の加熱性状を火源規模および火源と部材の位置関係、部材の種別毎にモデル化しており、建築用途、建物の規模等、設計初期段階で得られる情報から部材各部分の加熱性状(入射熱量)を予測することが可能です。

また、これまでの研究では部材の耐火性能は、実験を通して測定された温度により評価されていましたが、限界耐火設計法では、入射熱量により部材の加熱性状をモデル化しているため、鋼種が変わっても再度実験を繰り返す必要はなく、より直接的な評価が可能となりました。

計画建物の設備階部分は、可燃物が非常に少なく、鉄骨部材の無被覆化が期待できたため、限界耐火設計法による検証を実施しました。設備階以外の部分については、告示1433号に定められる耐火性能検証法(ルートB)と同様の方法により耐火設計を行い耐火被覆材の軽減を試みました。

5.検証結果

以上の耐火設計により次のような結果が得られました。

  • ・ 設備階(R1F)の耐火被覆を全て省略することが可能。
  • ・ 免震装置の火災に対する安全性を確認。
  • ・ 通常、ルートAでは1階~10階まで2時間耐火(耐火被覆45mm以上)、11階~14階まで1時間耐火(耐火被覆30mm以上)が要求されますが、全ての階の耐火被覆が25mmで安全であることを確認。

検証結果

6.本設計法を用いることによる効果

本設計法を用いて得られる情報は、耐火被覆を省いたり軽減した金属構造(普通鋼の他、FR鋼、アルミニウム、ステンレス等を含む)、耐火被覆によらない耐火設計(鋼管コンクリート、大断面木造等)の火災安全性を確認する上で不可欠です。 当社では、以下のような効果を期待し今後積極的に本設計手法を適用していく予定です。

(1)耐火被覆材の省略

  • 延べ床面積3000m2 5層の中規模自走式駐車場の場合、施工コストが約5~10%低減。
    (材・工および工期短縮による)
  • 工期短縮
    (湿式タイプの耐火被覆材の場合、被覆材料吹き付け工事に必要な仮設・養生・足場の組み立て解体に要する時間の短縮)
  • 有効面積の増大
    (柱の3時間耐火省略で被覆厚さ8cm×柱の外周長さ分の面積)
  • 建物解体時に産業廃棄物の処理が不要
    (上記中規模自走式駐車場の場合、処理量は約300m3)
  • 仕上げ材料の省略

(2)新しい構造材料の開発や未利用素材の構造材料への利用  

  • *金属表面を露出した意匠表現  
  • *外部構造を用いた建築物  
  • *ステンレスに代りアルミ等の無被覆化  
  • *外部構造を用いた高層建築物の耐火ガラス全省略で、総工費の約10~20%のコストダウン。
[お問い合わせ先]
株式会社 熊谷組
[リリースに関するお問い合わせ先]
経営企画本部広報部
部長:藤島 幸雄
担当:柴山・石賀 (電話03-3235-8155)
[技術に関するお問い合わせ先]
技術研究所 室内環境研究グループ
部長:大脇 雅直
担当:若松(電話0298-47-7501)
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