プレスリリース

伐採材・間伐材等の有効利用に関する共同研究成果を発表

平成13年4月11日

熊谷組 独立行政法人森林総合研究所
伐採材・間伐材等の有効利用に関する共同研究成果を発表

株式会社熊谷組(取締役社長 鳥飼一俊)と独立行政法人森林総合研究所(茨城県稲敷郡:理事長 廣居忠量)は、平成11年度から2年間にわたり実施した建設現場等で大量に発生する伐採材(伐根や枝葉、小径木)や間伐材などのチップを有効利用する共同研究を終了し、研究成果を発表しました。

熊谷組では、「自然との調和」を目指した環境保全活動として、伐採材や間伐材などを粉砕した未分解チップを堆肥化せずにそのまま現地発生土とともにリサイクルする法面緑化工法「ネッコチップ工法」*1を平成9年に開発・実用化して全国に普及・展開を行っています。今回の共同研究において、森林総合研究所は未分解チップの腐朽過程および法面造成初期の植物と土壌中の窒素動態を解明しました。

熊谷組はこの成果をもとに、窒素不足を補うための具体的な施肥方法を提案し、ネッコチップ工法により造成された生育基盤*2(未分解チップ施用土壌)が植物の生育に適した土壌として自然還元利用できることを証明しました。

今後は、共同研究成果を学会誌やシンポジウムなどで発表し、ネッコチップ工法のさらなる普及・展開を図っていきます。

*1ネッコチップ工法

*2生育基盤:緑化植物を導入するために造成する基盤、または植物の根系が生育している基盤(「緑化技術用語事典」緑化工学会編)

背景・ねらい

道路や造成工事等の伐開・除根作業から発生する伐根・枝葉・小径木(伐採材)は、産業廃棄物に指定されていますが、発生量の多さ、野焼き禁止などの理由により、現場では処理に困っているのが現状です。このような伐採材を再生可能な建設副産物として生育していたその場で自然還元利用することは、建設現場のゼロエミッションの達成に最も相応しい方法といえます。

熊谷組では、平成5年より「自然との調和」を環境理念に掲げ、地球温暖化防止・循環型社会の構築(廃棄物のリサイクル)・自然保護・有害物対策など様々な環境保全活動に取り組んでいます。これらの取り組みの一つとして、工事現場から発生する伐根・枝葉・小径木をチップ化し、堆肥化せずにそのまま現地発生土などと共に緑化資材の原料としてリサイクルする法面緑化工法「ネッコチップ工法」を開発・実用化しました。平成11年10月には「ネッコチップ工法研究会」を発足させ、全国に普及展開して参りました。  

しかしこれまで、ネッコチップ工法のような堆肥化しない未分解のチップを含む土壌内では、未分解チップを分解する微生物と植物による窒素の奪い合いがおき、土壌内の窒素が不足して植物が生育障害を起こすと考えられており、緑化工として採用するに当たり学術的な詳細検討が課題となっていました。  

今回、森林総合研究所との共同研究で、このような生育障害が起きるとされている未分解チップの腐朽過程を解明し、植物の生育に適した土壌を造成するための方策を研究しました。

成果の内容・特徴

ネッコチップ工法により造成された生育基盤(チップ施用土壌)のサンプル試験と外来草本ポット試験および植栽ポット試験を実施し、チップの腐朽過程、土壌や植物体の含有成分等について調査・分析を実施しました。この結果、以下に示すことが分かりました。

● 未分解チップの腐朽過程  

伐採したばかりの根や枝葉、小径木や間伐材などを粉砕処理した未分解チップ土壌と混合して植物の生育基盤とすることは、これまであまり実施されてきませんでした。これはチップを分解しようとする微生物と生育過程の植物によって窒素の奪い合いがおきるため、土壌内の窒素欠乏による植物の生育障害、いわゆる窒素飢餓が生じるためだとされてきました。共同研究ではこうした土壌中の未分解チップの腐朽過程を明らかにしました。

  • 1 施工後1年経過した未分解チップは腐朽が進行中であること
  • 2 未分解チップの腐朽過程は,無機態窒素濃度が高い施工初期に最も腐朽が進行し、無機態窒素の減少とともに腐朽は緩やかに進行すること

● 未分解チップ施用土壌の性状  

未分解チップと現地発生土を1:1(体積比)の割合で混合した土壌とその土壌に生育する植物の窒素有機化能の程度を分析することにより未分解チップが混合された生育基盤の性状を解明しました。

  • 1 未分解チップ施用土壌はチップが分解腐朽中であるにもかかわらず、無 機態窒素を蓄積し植物に窒素を供給できる状態にあること
  • 2 未分解チップ施用土壌は有機系土壌に比べ,養生開始3ヶ月間の初期生育が遅いものの、初年度の緑化が成功すれば,次年度以降は窒素不足の懸念もなく植物の生育に適した土壌環境を維持できること
  • 3 未分解チップ施用土壌は、常緑樹、落葉樹にかかわらず、植栽による緑化が可能であること

● 施肥方法の提案  

播種による法面緑化で未分解チップ施用土壌を生育基盤として成功させるためのポイントは、施工初期に窒素不足を生じさせない肥料配合とすることがわかりました。

【草本主体の場合】
化成肥料の施肥方法は、窒素分42g/m2相当(現行の1.5倍)とする
【木本主体の場合】
化成肥料の施肥方法は、窒素分21g/m2相当(現行の0.75倍)とする
【植栽の場合】
基本的に化成肥料は必要ないと考えられ、草本を播種する場合を除いて緩効性肥料のみで良い
今後の展開

熊谷組では、「自然との調和」を目指した環境保全活動として、工事現場から発生する伐採材や間伐材チップのリサイクルを目的とした緑化工法「ネッコチップ工法」を平成9年に開発・実用化しています。  

これまで実施してきたネッコチップ工法の施工現場では、施工初期での生育不具合は発生していませんが、今回の共同研究成果より、未分解チップを利用したネッコチップ工法が通常の緑化工法と同等の生育基盤を提供できる工法であることが学術的に証明されました。今後この共同研究成果を基に同工法に適した緑化手法を確立し、さらなる普及・展開を目指していきます。

研究推進責任者
株式会社熊谷組土木本部土木技術部部長 滝谷正幸 TEL.03-3235-8646
共同研究
森林総合研究所立地環境研究領域長 太田誠一 TEL.0298-73-3211(内線358)  
森林総合研究所立地環境研究領域チーム長 赤間亮夫
森林総合研究所立地環境研究領域養分環境研究室長 高橋正通
広報担当者
株式会社熊谷組経営企画本部広報部部長 藤島幸雄 TEL.03-3235-8155  
森林総合研究所企画調整部研究情報科広報係長 田嶋 隆 TEL.0298-73-3211(内線227)
参考資料

■木質系チップの利用用途開発の現状  

木質系チップは、建設業以外にも原木丸太、間伐材、林地残材、工場残材、住宅解体材、梱包材、パレットなどの廃木材から大量に生産されています(1997年現在、約1,088万m3)。これらのチップの利用用途は、製紙・パルプ用が需要の大半を占め、次いで繊維版や削片板などのボード類であり、それ以外の用途はごく僅かです。しかしながらチップの需要不足がこのところ深刻化しており、最近、舗装材、マルチング材、緑化資材などチップの特性を活かした新規用途の開発が進められています。

■ネッコチップ工法の概要  

ネッコチップ工法は、伐採材や間伐材を針状に粉砕した未分解チップに現地発生土や種子、肥料、添加剤などを混合した緑化材を、高速ベルトコンベア式撒きだし装置等により法面に付着させて生育基盤を造成する法面緑化工法です。

【特 徴】

  • ・ 現地廃材を有効利用するゼロエミッション型のリサイクル工法です。
  • ・ 伐採材や間伐材は針状に粉砕してそのまま基盤補強材として、また現地発生土は団粒化させて緑化植物のための生育基盤としてリサイクルします。
  • ・ 大量施工を可能にする高速ベルトコンベア式撒きだし装置を開発しました。この装置を土工事に用いるバックホウの先端に取付け、整形された法面から随時施工します。
  • ・ 造成された生育基盤は、チップ同士が絡み合った団粒の発達した土壌であるため、急勾配法面でも降雨等による侵食がほとんどなく、緑化に適した生育基盤が造成できます。
  • ・ 現地廃材利用による処理費の削減と材料費の低減、大量施工による施工コストの縮減により経済的に法面を緑化することができます。

 

伐採材・間伐材等の有効利用に関する共同研究

生育基盤の造成状況

生育基盤の造成状況
未分解チップを堆肥化せずにリサイクルする 「ネッコチップ工法」により育成基盤を造成

緑化植物の成育状況

緑化植物の成育状況
生育基盤造成後6ヶ月経過

[お問い合わせ先]
株式会社 熊谷組
[リリースに関するお問い合わせ先]
経営企画本部広報部
 部長 藤島 幸雄
 担当 柴山・石賀 (電話03-3235-8155)
[技術に関するお問い合わせ先]
土木本部土木技術部   
 部長 滝谷 正幸
 担当 石口(TEL 03-3235-8646)
独立行政法人森林総合研究所
[リリースに関するお問い合わせ先]
企画調整部 研究情報科 広報係
 係長 田嶋 隆 (TEL 0298-73-3211)(内線227)
[技術に関するお問い合わせ先]
立地環境研究領域   
 領域長 太田 誠一
 担当 赤間・高橋(TEL 0298-73-3211)
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