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KUMAGAI UPDATE 73

曲面屋根が特徴的な、ものづくり精神の交流拠点 サイエンスヒルズこまつ

石川県小松市中心部のJR小松駅東口エリアに誕生した「サイエンスヒルズこまつ」。
自然空間との調和がとれた施設は、子供達が科学技術に触れ、
ものづくり精神の継承や「科学する心」を育む場所として、
また地域の活性化や産業の発展に貢献する拠点として建設された。
特に話題を集めたのが、地形と緑化した曲面屋根を一体化させ、
丘と建築が見事に融合して生まれた特徴あるデザインだ。
しかし、このデザインを実現するには難題が多く、
限られた時間のなかで試行錯誤を繰り返し、
難易度の高い技術を要する、とても厳しい工事となった。
今回は、その施工を振り返りながら「サイエンスヒルズこまつ」を紹介する。

ものづくりのまちに科学を遊ぶ丘が誕生

〈しをらしき 名や小松吹く 萩すすき〉。

俳人松尾芭蕉が、北陸の地・小松を讃えて詠んだ句として、名著『おくのほそ道』に記されている。芭蕉が訪れたのは今から三百年以上前だが、北西部に日本海、東に霊峰白山を望む現在の石川県小松市も、その美しい景観や風情は変わらない。

また、江戸時代の藩主・前田利常によって、伝統工芸、芸能等の産業や文化が積極的に保護・奨励されたことで培ってきた”ものづくり “に対する精神や技術力は、いまも脈々と受け継がれている。

外観・南東側俯瞰(左奥方向がJR小松駅)
外観・南東側俯瞰(左奥方向がJR小松駅)
外観・西側俯瞰
外観・西側俯瞰
外観・南東側
外観・南東側
設計監理
株式会社スタジオ建築計画、UAO
施工
熊谷組・加越建設特定建設工事共同企業体
工期
平成24年8月13日〜平成25年10月31日
敷地面積
14,429m²
建築面積
6,153m²
延床面積
6,063m²
建物高さ
GL + 11.95m
構造規模
鉄筋コンクリート造3階建( 一部鉄骨造 )

さらに今日では、北陸新幹線開通を来春に待つ鉄道や三大都市圏へ延びた高速道路、年間200万人以上の利用者がある北陸の玄関口・小松空港も整備され、国内外へスムーズにアクセスできることなどから、北陸随一の産業都市づくりを推進している。

こうした背景から、平成26年3月22日、”未来を創る ひとづくり、ものづくり “をテーマに、JR小松駅の東エリアに誕生したのが「サイエンスヒルズこまつ」だ。

独創的な設計でウェーブ(起伏する曲面屋根)を創出 

「サイエンスヒルズこまつ」は、その不可思議な外観が特徴的だ。木の葉をイメージするような四つのウェーブが、敷地全体を覆い被さるように不規則に配置されている。不規則でありながら、その四つのウェーブが交差し、全体の連続性が創出され、一体感のある建物になっている。そのウェーブ上には歩行可能な屋上緑化が施されており、利用する人々は自らの思いに任せて歩くだけで、屋上に上がることを意識することなく、自由にそこを登り降りすることができるのだ。それと知らずに訪れたなら、緑や花々が咲く小高い丘の公園と見紛うだろう。

また、ウェーブの形状に合わせた短冊状のガラスを幾枚も垂直にはめ込んだ壁面部、ウェーブ上部に突出した半球体ドームなど、近代的なフォルムにも興味がわく。

しかし、これを実現化するまでの工程は容易ではない。設計から施工に至るまで試行錯誤の連続と、苦慮の日々の積み重ねのうえに成し得たのだ。

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屋上部分・中央奥に3Dドーム
屋上部分・中央奥に3Dドーム
屋上イベントスペース
屋上イベントスペース
西側
西側

難易度の高い技術を駆使し夢のカタチを忠実に実現化

開口一番「施工にあたり、最も難題だったのは、形状の特殊性です」。そう語ったのは、経験と実績を評価され、この現場を任された作業所長の君島康之だ。

本工事のなかでも、特に困難だったのが、ひとつとして同じ曲面形状がない極めて複雑なウェーブにおけるスラブの施工(くし型枠工法とビーム斜掛工法)と3Dシアター半球形状躯体の施工(トラスウォール工法)だった。そこで、躯体工事にあたっては、設計の3Dデータを解析、それを2次元化して施工図を作成。事前に躯体モックアップ(実物大模型)を製作して施工性の確認を行う等してから実際の工事に臨んだ。だが、難易度の高い技術を要することには変わりはない。終始、慎重に慎重を期する施工となった。

もちろん、難航したのはそればかりではない。屋根の部位ごとに異なるクリープ(荷重による変形)を考慮した曲面大型カーテンウォール、屋根上の勾配が均一でない個所に施工する屋上緑化工法など、さまざまな箇所で設計や構造の問題が山積していた。

また、予期せぬ施工条件も加わった。それは、敷地地盤下部にある弥生時代の埋蔵文化物の保護層を傷めないというもので、250トン以上におよぶウエイトを準備して地盤載荷試験を行い、構造的に安全であることを検証した上で、細心の注意を払いながら施工を進めていかなければならなかった。

施工期間一年余りという短い時間のなかで、各職の職長中心に幾度となく検討会を開催し、議論し合いながら最善の施工方法を模索、辛抱強く作業に取り組んだ。

そうした現場で、統括的施工管理を一手に引き受けていたのが、山村芳裕統括所長(現・お客さま相談室室長)だ。その頃の苦労を振り返り、こう話してくれたのが印象に残った。「どんなに独創的で困難な設計であっても、最善を尽くして、より忠実に実現化させていく。それが、熊谷組の仕事ですから」。

屋根スラブの曲線をコンクリートで表現するため、くし(櫛)型枠工法とビーム傾斜多角工法を採用

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くし型枠工法(施工状況)
くし型枠工法(施工状況)
くし型スラブ型枠のモックアップ
くし型スラブ型枠のモックアップ
ビーム傾斜多角工法
ビーム傾斜多角工法
屋上緑化のモックアップ 屋上緑化のモックアップ
屋上緑化のモックアップ
球体ボイドを曲面に対応させるため躯体モックアップで施工性の確認を行った 球体ボイドを曲面に対応させるため躯体モックアップで施工性の確認を行った
球体ボイドを曲面に対応させるため躯体モックアップで施工性の確認を行った
3Dシアターのドーム屋根(直径19mの半球)施工方法としてトラスウォール工法を採用

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トラスウォール資材搬入状況
トラスウォール資材搬入状況
トラスウォール据付完了・コンクリート打設前状況
トラスウォール据付完了・コンクリート打設前状況

※トラスウォール:工場加工にて組立てられた型枠兼用の鉄筋部材

内部構造にも活かされる安全・安心の施工技術

この建物の中は、主に二つの施設で構成されている。ひとつは、次世代を担う子供たちの科学とものづくりに対する興味・関心を醸成することを目的とした「ひととものづくり科学館」で、体験型展示場や日本最大級のドーム型3Dシアターなど、子供からおとなまで楽しめるスペースを有している。もうひとつは、未来に向けた地域の活性化と産業振興を目的とした「こまつビジネス創造プラザ」で、全14室のインキュベートルームやセミナールーム、コーディネートオフィスなど、企業の従業員や経営者が幅広く活用できるスペースだ。

外観のユニークさに目を奪われがちだが、ほかにも、レストランやショップ、ギャラリーなど、内部に構成された各施設や空間の細部にまで、利用者に配慮した建物に熊谷組の施工技術が活かされている。

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屋上(レストランテラス)
屋上(レストランテラス)
エントランスアプローチ
エントランスアプローチ
「ひととものづくり科学館」エントランス付近
「ひととものづくり科学館」エントランス付近
エントランスホール
エントランスホール
ものづくり体験・科学体験展示室
ものづくり体験・科学体験展示室
イベント・多目的ホール(2室仕様)
イベント・多目的ホール(2室仕様)
レストラン
レストラン
レンタルオフィス南側
レンタルオフィス南側
ミュージアムショップ
ミュージアムショップ
 

科学の発展と人材育成 それはここから始まる

グランドオープンから約半年。地域住民はもとより、近隣の県からも多くの来場者があり、休日や祝祭日、夏休みなどは子供たちから家族連れまで、年代や男女を問わず賑わっている。

本件の計画段階から参画し、オープン以降も「ひととものづくり科学館」の運営に関わっている、小松市役所の西村章課長は、「すでに学者、研究者として活躍されている専門職の方と、可能性が未知数の子供たちや中・高・大学生とが、世代や立場を越え、当館で一緒にモノを考えたり、意見を交わしたり、共にさまざまな体験をして欲しいですね。まさに、枠にとらわれない”科学と交流“の場にしたい」とその意気込みを聞かせてくれた。さらに、「熊谷組はじめ関係者の皆さんの尽力で、理想的な施設を造りあげてくれたのですから、これからは我々がいかにここを活用し、発展させていくかです」と力強く語った。

左より山村芳裕統括所長 サイエンスヒルズこまつ・西村章課長 君島康之作業所長
左より山村芳裕統括所長
サイエンスヒルズこまつ・西村章課長 君島康之作業所長
南東側俯瞰(夜景)
南東側俯瞰(夜景)

当施設は、いま小松市の新たなランドマークとしても注目を集めているが、緑に包まれた憩いの広場としても小松市民に愛されている。過去にも小松市の建築工事に関わったことのある山村統括所長は、「またひとつみなさんに喜んで頂ける仕事ができたことに誇りを感じる」と笑顔を見せた。また、君島作業所長は照れながら「技術者として、貴重な経験をすることができたことに、感謝しています」と結んだ。

ここから生まれる未来の科学や、それに関わる人材の輩出が、いまからとても楽しみである。

全国の独創的で個性的な文化・芸術施設の建設に貢献しています

三原市芸術文化センター - 広島県
三原市芸術文化センター

「ポポロ(愛称)」は、広域的な芸術・文化活動の創造拠点として、芸術・文化環境の醸成、芸術・文化情報の発信を目的とした多目的ホール。平成22年、BCS賞受賞。

発注者
三原市
設計者
株式会社槇総合計画事務所
構造・規模
RC・SRC・S造 2/1 延床面積 7,421m²
福井県立恐竜博物館 - 福井県
福井県立恐竜博物館

4,500m²という広大な展示室に40体以上もの恐竜骨格をはじめ千数百もの標本の数々、また大型復元ジオラマや映像などを展示した恐竜に関する国内最大級の博物館。

発注者
福井県
設計者
株式会社黒川紀章建築都市設計事務所
構造・規模
RC・SRC・S造 3/1 延床面積 10,549m²
せんだいメディアテーク - 宮城県
せんだいメディアテーク

図書館やギャラリー、ミニシアターなどからなる美術や映像文化の活動拠点であり、利用者がさまざまなメディアを通じて自由に情報のやりとりを可能にする公共施設。平成14年、BCS賞受賞。

発注者
仙台市
設計者
株式会社伊東豊雄建築事務所
(構造設計)株式会社佐々木睦朗構造計画研究所
構造・規模
RC・S造 7/2 延床面積 21,682m²

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