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KUMAGAI UPDATE 72

希望と命をつなぐ復興道路 国道45号 釜石山田道路工事

東日本大震災によって発生した大津波は、釜石市内を容赦なく飲み込んだ。
その時、沿岸部に位置していた小・中学生の子供たち約600人は高台を目指して駆け逃げた。
全員無事にたどり着いた避難場所が、後に「命の道」と呼ばれる釜石山田道路だ。
震災後、この道路は人と物資を移動するためのライフラインとして活用された。
道は造り方次第で、多くの人や町を守ることができるのだ。
いま、三陸沿岸地域の復興リーディングプロジェクトとして、
釜石山田道路の「大ロット工事」を熊谷組・オリエンタル白石JVが担当している。
そこで、平成27年3月の完成を目指して地域一体となり、
企業体の総力をあげて昼夜施工に取り組む現場を紹介する。

 

大津波から子供たちを救った「命の道」

国道45号釜石山田道路は、三陸縦貫自動車道の一部として、岩手県釜石市甲子町から下閉伊郡-山田町船越までの総延長23kmを走る道路だ。それは、別名「命の道」とも呼ばれている。

平成23年3月11日、東日本大震災により発生した大津波が釜石市を襲った。そのとき、沿岸部にあった市立釜石東中学校の生徒と隣接する鵜住居小学校の児童ら約600人は、津波から逃れるために高台を目指して走った。指定されていた避難場所も津波にのまれ、ようやくたどり着いたのが、6日前に先行開通したばかりの4.6kmの釜石山田道路だった。

国道45号釜石山田道路工事

雪が降り、日も暮れようとしているなか、津波を逃れた生徒・児童の全員は、通りかかったダンプやトラックの荷台に分乗し、安全な場所へと避難することができた。子供たちの尊い命を救った道路は、まさに「命の道」となった。

この道路が「命の道」と呼ばれる理由はそれだけではない。

震災後、市内の国道45号が寸断されて身動きがとれないなか、釜石山田道路は迂回路として被災者や救援隊の移動や救援物資の輸送のための重要なライフラインとなったのである。そこで三陸沿岸地域の一日も早い復興を目指し、先行開通区間に続く(仮称)釜石中央IC〜釜石両石IC間を完成させるのがこの復興道路事業だ。

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補強土擁壁(平成25年12月)
補強土擁壁(平成25年12月)
八雲第3トンネル施工状況(平成25年12月)
八雲第3トンネル施工状況(平成25年12月)
工事概要
* 構造物名称は全て仮称
設計 トンネル/パシフィックコンサルタンツ   道路改良 L=430m
  道路改良/復建技術コンサルタント   水海高架橋上部工 L=184m(3径間連続PCラーメン箱桁橋)
工事内容 トンネル4本(NATM)橋梁上部工1橋   ※オリエンタル白石施工
  道路改良工事 工区延長 L=2,800m   道路改良(盛土200,500m³、補強土盛土擁壁3,142m²)
  八雲第1トンネル L=635m(発破掘削)  協力会社 トンネル/笹島建設株式会社
  八雲第2トンネル L=839m(発破掘削)   道路改良/株式会社小澤組
  八雲第3トンネル L=149m(発破掘削)   工事用道路/株式会社ガイアートT・K
  水海トンネル L=445m(発破掘削)   トンネルずり運搬/株式会社栄開発

厳しい環境のなか大ロット工事に着工

国土交通省東北地方整備局は、復興道路の整備を効率的に推進するため複数の工種・構造物を一括して施工する「大ロット工事」を採用した。入札の結果、熊谷組・オリエンタル白石JVが当工事を担当することが決まった。これは、発注ロットの拡大工事としては整備局管内で最大級である。

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八雲第2トンネル貫通式(平成25年10月19日)
八雲第2トンネル貫通式(平成25年10月19日)
八雲第3トンネル施工状況(平成25年12月)
八雲第3トンネル施工状況(平成25年12月)
水海トンネル貫通後の坑内を覗く(平成25年10月24日)
水海トンネル貫通後の坑内を覗く(平成25年10月24日)
水海トンネル施工状況(平成24年11月)
水海トンネル施工状況(平成24年11月)
水海高架橋上部工(平成25年3月)
水海高架橋上部工(平成25年3月)

当工事では、約2.8kmの区間に大小4つのトンネル(八雲第1、第2、第3及び水海トンネル)と大規模な盛土・補強土擁壁と184mの水海高架橋上部工1橋を築造する。

工事が始まったのは、震災から一年後の平成24年3月15日。当初はまだ現場周辺にガレキも多く、災害の爪痕が残っていたという。そんな厳しい環境のなかで工事準備に入り、その約半年後、本格的なトンネル工事に着手した。

トンネルの施工には、掘削した部分を素早く吹付けコンクリートで固め、ロックボルトを岩盤奥深くまで打ち込み、地山自体の保持力を利用してトンネルを保持するNATM(New Austrian Tunneling Method)工法を採用。また、補強土擁壁は、盛土の中にストリップ(帯状鋼製補強材)を層状に敷設し、壁面をコンクリートスキン(ユニット化された壁面パネル)で覆うテールアルメ工法で施工した。

取材に訪れた平成25年12月、現場は年末に向かって慌しさは増していたものの、事故もなくすべての工事が予定通りに進行していた。年明けの平成26年春には4つのトンネルが貫通し、後は丹念に仕上げの作業を行っていくのだという。完成はさらに一年後の平成27年3月の予定だ。

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補強土擁壁(テールアルメ)施工状況
補強土擁壁(テールアルメ)施工状況
ストリップ敷設作業
ストリップ敷設作業
水海地区道路土工掘削状況
水海地区道路土工掘削状況
法面抑止工(アンカー工)
法面抑止工(アンカー工)
法面緑化工
法面緑化工
トンネル施工の主な工程
爆薬遠隔装填システム
爆薬遠隔装填システム
火薬の装填
火薬の装填
トンネル掘削土搬出
トンネル掘削土搬出
鋼製支保工
鋼製支保工
吹付けコンクリート
吹付けコンクリート
ロックボルト
ロックボルト
インバート
インバート
覆工
覆工

地域と現場の一体感が過酷な工事を円滑に進行させる

施工は最終段階を迎えようとしているが、常に緊張を強いられる現場での作業は過酷だ。特に今回の工事は、復興という大きな目標と、それを待ち望む人々の特別な思いが込められている。それだけに、工事に携わる社員への重圧は大きい。だが、そんな社員らをここまで支えてきたのは、地域住民の力強い励ましのおかげだという。

現場を統括する所長の堂藤和雄は「近隣の皆様には多々ご迷惑とご負担をおかけしているが、みなさんが協力的で、本当に地域一体となって応援してくれている」と話す。これは、現場で忙しなく動き回る若手社員にとっても大きな原動力だ。新人の長岡雄太は「みなさんに注目して頂けることで、頑張ろう!というモチベーションにつながります」と初々しく答えてくれた。「人の役に立つインフラ整備の必要性と、この仕事の重要性を再認識させられた」と言うのは、入社四年目の千葉崇。副所長の野々村嘉映は、地域住民を対象に開催している工事見学会で、開通したら「遠方にいる孫にいつでも会える、大きな病院に通える、進学や就職する時にその選択肢がひろがる」といった誰もが明日への希望に胸を膨らませる声を耳にする。そのたびに、一日も早くこの道を開通させたいという思いが募るのだと言う。入社十六年目の中堅社員、志水政弘は、この現場に携わったことで「より効率的に無駄なく工事を進めていくためのノウハウを身につけ、今後に活かしたい」と頼もしい決意を聞かせてくれた。

堂藤和雄所長
堂藤和雄所長
野々村嘉映副所長
野々村嘉映副所長
志水政弘・長岡雄太・千葉崇
志水政弘・長岡雄太・千葉崇

また、彼らは仕事がオフの時には地元の行事に参加し、地元の食材に舌鼓を打ち、地元の人々と積極的に接している。それこそが地域と現場との大きな一体感を生み、この過酷な工事を円滑に進める原動力になっているのかもしれない。

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八雲第2トンネル見学会風景
八雲第2トンネル見学会風景
地域住民と現場点検後の交流
地域住民と現場点検後の交流
小学生の校外学習を兼ねた見学会
小学生の校外学習を兼ねた見学会

全国規模で貢献する国土強靭化事業

平成25年12月4日、「国土強靭化基本法」が参院本会議で可決、成立した。これは、大規模災害への、事前防災・減災対策を進めることによって、災害時にも政治や経済、社会活動が持続可能な、強くしなやかな国民生活の実現を目指している。同法では、東日本大震災からの復興の推進のほか、被災者への支援体制の整備、社会資本の老朽化対策や耐震化、大規模災害に強い社会基盤の整備などが明示されている。

熊谷組は、これまでインフラの復旧・新設工事をはじめ、ガレキの処理や除染作業など、多岐にわたって東日本大震災関連の工事を数多く担当してきた。さらに速やかな復興を促すために導入された、発注者が行ってきた業務を民間技術者が行う「事業推進PPP(Public Private Partnership)」という新しい発注方式にも対応する。また、全国各地では毎年のように異常豪雨がもたらす洪水被害の復旧工事や数々の防災工事に携わっている。

今後も長い年月をかけて培ってきた土木の技術や経験を活かし、復興事業はもとよりこの国に住む人々が、より安全で安心して生活できる、より豊かな社会づくりに貢献したいと願っている。

いま全国で強くてしなやかな国づくりに貢献しています

北上川下流長面下流地区築堤工事 - 宮城県
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発注者● 国土交通省東北地方整備局
復興を支える河川堤防の本格復旧工事

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発注者● 国土交通省九州地方整備局
雲仙普賢岳で無人化施工による火砕流・土石流災害対策工事


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