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病院機能も入院患者もそのままに増改築工事を実現 岐阜市民病院 西診療棟改築工事

病院機能も入院患者もそのままに増改築工事を実現 岐阜市民病院 西診療棟改築工事

1931(昭和6)年に開業した岐阜市診療所を前身とする岐阜市民病院は、1941(昭和16)年に現在の岐阜市鹿島町へ移転。以来70年以上にわたり、岐阜市の中核病院として地域医療を支えてきたが、今後さらに専門的な医療提供、救急医療等の充実及び患者中心の医療体制の構築を目的に、老朽化した外来診療棟及び西診療棟の改築整備事業が進められた。

熊谷組は、当事業で西診療棟の増改築工事を担当。この工事は、敷地内にオープンスペースを設けることが不可能であり、入院患者や来院患者への影響を最小限に抑えながらの新棟建設が必要とされることからメガトラスによる上空架設工法を採用している。それは、病院機能を通常どおりに維持しながら、入院患者も仮設病棟へ移動することなく、既存病棟の上空に新病棟の上層部を建設、上層部完成後に入院患者らをそこに移動させ、下層部工事に着手するという、難易度の高い技術だ。

今回は、メガトラスで実現した入院患者も居ながらの病院の増改築工事を紹介する。

岐阜市民病院 西診療棟改築工事

発注者
岐阜市
設計監理
山下設計・岐創設計共同体
施工者
熊谷・共栄・松永特定建設工事共同企業体
延床面積
22,704m²
構造規模
鉄骨造・鉄骨鉄筋コンクリート造(免震構造)
地上11階・塔屋1階 建物高さ47.3m

仮設病棟等への移動なしで増改築を実現

岐阜市民病院は、開業以来今日まで、急性期医療、地域医療の充実に取り組んできた。

現在、医師・看護師をはじめ職員定数700名以上、多数の高度医療機器を備え、診療科22科・病床609床を有する、岐阜医療圏内でも有数な大規模病院だ。また県内初の地域医療支援病院の承認や地域がん診療拠点病院、周産期医療支援病院、災害拠点病院の指定を受けるなど、病院評価も高い。

今回、同院はさらなる医療提供体制の整備、拡充を図るため、築後40年ほど経過し老朽化した外来診療棟及び西診療棟の改築整備事業を進めた。

熊谷組JVは西診療棟の改築工事を請け負ったが、その施工条件は極めて厳しいものだった。病院敷地内にはオープンスペースがなく、駐車スペースも足りない状況での施工であるが、メガトラスによる上空架設工法を採用することにより病院を通常通り機能させ、入院患者・来院者への影響を最小限に抑え、仮設病棟を建設することなく工事を遂行するというものであった

まず解体予定の既存病棟を跨ぐように、上空にメガトラスを架設し、新病棟上層部を先に施工する。次に、上層部の完成後に病院の機能及び入院患者を移動させ、新病棟下層部の建設に着手。

高度な施工技術が必要だが、これにより病院の機能を維持し、入院患者を仮設病棟等に移動させることなく、自在な施設構成も可能となり、施工における諸条件をクリアすることができる。

既設病棟の上空に新病棟を浮かべるように建設

メガトラスの地組
メガトラスの地組

付属建物の設備切り回し等の準備工事の後、2010(平成22)年6月、綿密な工事計画のもと西診療棟の改築工事を開始。

既存病棟(入院患者が居るまま)を跨ぐように、上空21.3mにメガトラスを設置。最大スパン34m、梁成(トラスの高さ)3.7mのメガトラスを架けた上に上層部の鉄骨建方を行った。

メガトラスは、現場に搬入後、地組(地上での組立)を行い、キャンバー(トラスの上に所定の荷重がかかった状態で水平になるようにするためのむくり)量や全長等の確認を行い、本締め・現場溶接を行うことにした。施工に際しては、鉄骨精度の確保や、上層部完成までのメガトラスのたわみの制御など、高度な施工技術を要したが、事前に行われた施工プロセスに応じた応力解析に基づく綿密な施工計画により良好な結果を得ることができた。

メガトラスの架設
メガトラスの架設

翌年、上層部が完成。既存病棟の機能や入院患者を上層部に移動し、既存病棟の解体(別途業者)及び、1階から5階部分の低層部の工事を実施した。

供用している上層部の下で下層部の鉄骨建方を行うにあたり、建方順序は慎重に検討を重ねて決定した。高さの制限があるうえに既存建屋に挟まれているため、建方のスペースも狭く、逃げ場がない。したがって、一方向からの建て逃げでは既存病棟との間に挟まれて鉄骨建方ができない部位もあるなど、鉄骨建方には通常とは違う配慮と技術が求められた。

何しろ見上げる頭上には、先に完成した上層部がある。そうした状況下の工事は、現場慣れした作業員たちも、さすがに勝手の違う思いを持ったという。

施工中には、病院関係者や患者らは「まるでビルがひとつ宙に浮いているようだ」と、この不思議な光景に足を止め、興味深げに眺めては驚いていた。

油圧ジャッキによりメガトラスのたわみを制御
油圧ジャッキによりメガトラスのたわみを制御
メガトラスの架設
メガトラスの架設
上層部が完成、既存病棟を解体した状況
上層部が完成、既存病棟を解体した状況
上層部の下での下層部の工事
上層部の下での下層部の工事
上層部の下で行われた下層部の鉄骨建方
上層部の下で行われた下層部の鉄骨建方

新設病棟は制震構造から免震構造への切り替え工事も実施

また今回の改築では、大地震に備えた耐震化工事も行われた。

完成時は建物の揺れを長周期化する免震構造となるが、施工中は、上層部工事から低層部1階床工事までの期間は制震構造とし、その後に制震構造から免震構造へと切り替えた。

上層部の施工中は、建物を仮設支柱、仮設壁で基礎に固定し、二重鋼管ブレースと粘性ダンパーで建物の揺れを抑える制震構造を採用した。そして全てのコンクリート打設後(全ての荷重をかけた後)に粘性ダンパーを免震層へ移設し、固定していた仮設支柱・仮設壁を取り外して、免震装置を開放、免震構造に切り替えるという、通常では行われることのない手順となった。

免震化工事中は、構造上不安定な状態となるため、地震はもちろん、暴風に対しても即座に対応できるよう、地震速報の一斉放送や、風速計の設置、そして各作業員へのメール配信準備など、危機管理体制にも万全な処置を施した。

現場で指揮を執った宇梶剛司作業所長は「初めて手掛ける工法であり、通常の建築物と異なることばかりで期待と不安が混在していたが、他では得難い貴重な経験ができた」と振り返る。

そして、さまざまな技術を結集させて施工した新病棟は、上層部と低層部の接合工事に入った。最終接続は、調整鋼管により行われた。調整鋼管上下部分の柱のずれは、僅かな範囲で、精度よく鉄骨建方を行うことができた。

免震装置(直動転がりアイソレータ)
免震装置(直動転がりアイソレータ)
仮設支柱・仮設壁により免震装置の機能を拘束
仮設支柱・仮設壁により免震装置の機能を拘束
調整鋼管の取り付け
調整鋼管の取り付け
高層部と低層部の接続前
高層部と低層部の接続前

需要拡大する増改築工事にこの技術と経験を活かしたい

既存病棟の解体前
既存病棟の解体前 ↓
既存病棟の解体後
既存病棟の解体後
(上層部は使用中) ↓
下層部の鉄骨建方
下層部の鉄骨建方 ↓
新病棟完成
新病棟完成

2011(平成23)年12月、地上11階建ての新病棟が完成した。屋上には災害時・非常事態に対応するヘリポート、11階には展望レストラン、そしてなによりも高度ながん治療体制として、県内で初めて診療から緩和医療までの診療部門を同一フロアに集約。さらに無菌病室8室を備えた血液腫瘍センター、産婦人科など女性外来の診療部門を一体化した女性専用フロアなど、各階に先進の医療設備や新たな施設が設けられた。もちろん、院内は広々としたスペースに清潔感があふれ、機能的で、まさに理想とする病院の姿に生まれ変わった。

新病棟について「ゆとりある快適な療養空間が出来上がった」と同病院の冨田栄一院長は満足気に語った。新病棟で勤務する看護師や医療スタッフも、新たな環境への賛辞を述べている。

難易度の高い技術を必要とする施工ではあったが、無事に竣工を迎えることができた。その後、入院中の患者や医療スタッフから「狭いスペースの中で安全に工事を進めてもらいありがたかった」「新病棟に移動するときも至る所に気を配ってもらい、安心でした」、「病室が明るくなった」などという声を聞き、宇梶作業所長は、工事の緊張感からやっと解き放たれたという。そして、「そんな言葉が我々にとっては一番の謝辞ですね」と話した。

今後も需要の拡大が予想される病院の増改築、またはそれに類する多種多様な増改築工事において、今回の熊谷組の技術と経験は活かされてゆくだろう。

プロムナード
プロムナード
スタッフステーション
スタッフステーション
展望レストラン
展望レストラン
病室
病室
屋上ヘリポート
屋上ヘリポート
大会議場(サルビアホール)
大会議場(サルビアホール)
正面県道側から望む
正面県道側から望む(2012年9月現在)

今も全国各地でより安全・あんしんな病院づくりが進んでいます

北海道済生会小樽病院
北海道済生会小樽病院

これまでの病院の老朽化に伴う移転・新築工事。施工にあたり、地域住民と病院関係者との良好な関係構築を図るため、既存病院待合ホールに大きな工事紹介掲示板を設置し、患者などに工事の状況や完成までの過程を丁寧に紹介。また、春には病院職員と作業所社員・作業員が鯉のぼり100匹を持ち寄り200mにわたって泳がせ、冬には4,000球のLEDでイルミネーションを飾るなど、地域とのコミュニケーションづくりにも貢献。

発 注 者
社会福祉法人恩賜財団 済生会支部北海道済生会
設計者
三上建築設計・アトリエジーセブン、設計・監理業務共同企業体
構造・規模
病院棟/RC造 地上5階 塔屋1階 病床数258床 エネルギーセンター棟/RC造 地上2階
保育所棟/RC造 地上1階  延床面積約18,034m²
福井大学医学部付属病院
福井大学医学部付属病院

疾患ごとに病床を配置し、最新医療に対応可能な新病棟の建設工事。施工中は、騒音の低減を図るため簡易式防音壁を設置、さらに振動計を第三者も見られるように敷地に設置するなどの配慮を行っている。また棟外に病室モデルルームを設置して、病院デザインワーキンググループと色彩計画、仕様、納まりなどを検証し、現場に反映するように進めている。

発注者
国立大学法人福井大学
設計者
国立大学法人福井大学
構造・規模
SRC造(基礎免震構造) 地上8階地下1階
延床面積約25,089m² 病床数488床
兵庫県立尼崎総合医療センター(仮称)
兵庫県立尼崎総合医療センター

県立尼崎病院と塚口病院を統合し、尼崎市東難波町に建設されるもので、延床面積約7万7千m²、病床数730床を有する西日本最大級の公立病院。免震構造とするほか自家発電設備、受水槽等を上階に設置するなど災害時も機能し続けるように配慮。また、大規模太陽光発電の設置、井水の利用、屋上緑化及びグラスパーキングの採用、さらにLED照明、病室ルームエアコン、コージェネ廃熱の利用など環境に優しいエコホスピタル。

発注者
兵庫県
設計者
株式会社日建設計
構造・規模
SRC・RC・S造(免震構造) 地上11階・地下1階・塔屋2階
延床面積約77,000m² 病床数730床
社会医療法人鹿児島愛心会 大隈鹿屋病院
社会医療法人鹿児島愛心会 大隈鹿屋病院

新病院を鹿屋市の核とした街づくり構想のもとに、地域経済振興と活性化を目指して建築中。施工にあったては合理化を図るため、病院本館の地下部分ではソイルセメント柱列壁の応力負担材(H型鋼)を利用したATOMIK合成壁工法(当社独自工法)、通所リハビリテーション棟では柱を鉄筋コンクリート造、梁を鉄骨造としたハイブリッド工法を提案し、採用されている。

発注者
社会医療法人鹿児島愛心会
設計者
株式会社梓設計
構造・規模
本館/RC造(免震構造) 地上10階 地下1階
通所リハビリテーション棟/RC造 地上2階
渡り廊下棟/S造 地上2階  エネルギーセンター棟/RC造 地上2階
延床面積約38,427m² 病床数313床

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