熊谷組ロゴ

治水・利水をめざす多目的ダム 大山ダム

治水・利水をめざす多目的ダム 大山ダム

大分県日田市の筑後川水系赤石川に建設中の大山ダム。
それは、たび重なる水害への対策、既得取水の安定化および河川環境の保全、さらに水道用水の確保を目的に進められている大型事業だ。着工当初から多くの期待が寄せられていたが、来年2013(平成25)年3月に竣工を迎えるいま、新たに注目を集めている。
原石運搬ルート新設などの高度な技術提案で、熊谷組は単独で当工事を受注した。今回、大山ダムの現状と着工以降5年にわたる熊谷組の取り組みを紹介する。

大山ダム

発注者
独立行政法人水資源機構
位置
大分県日田市大山町西大山地先
型式
重力式コンクリートダム
堤高
94m
堤頂長
370m
堤体積
約580,000m³
総貯水容量
約19,600,000m³

水害対策および慢性的な水不足解消へ

治水・利水をめざす多目的ダム 大山ダム

大山ダムは重力式コンクリートダムとして、大分県西部に位置する日田市(旧大山町)の筑後川水系赤石川に建設中だ。筑後川は、熊本県阿蘇山を源とし、熊本・大分・福岡・佐賀の4県を貫流して有明海に注ぐ、九州最大の一級河川として古くから地域経済の発展に寄与し、多くの人々から親しまれてきた。しかしその反面、豪雨による河川の氾濫で幾度となく甚大な被害に見舞われた。また降雨量が少ないと長期にわたり渇水し、慢性的な水不足に悩まされることもしばしばだった。

こうした状況を打開すべく、大山ダムは洪水調節、筑後川沿岸の既得取水の安定化および河川環境の保全、そして福岡県内における水道用水の供給を最大の目的に、筑後川の総合開発事業促進の一環として計画された。

それは、まさに多くの近隣・周辺住民がかねてから熱望していたダム建設の実現化だった。

高度技術提案による原石運搬ルートの新設

当事業の入札は、公共工事における総合評価落札方式が適用された。それを受けて、熊谷組は当社単独で 高度な技術提案を提示した。

治水・利水をめざす多目的ダム 大山ダム

それは、原石運搬ルートを原石山の南側にある沢の斜面に新設するという大胆なプランだ。標準案では骨材製造プラントが堤体の下流にあり、原石山との位置関係からダンプなどの大型車両は集落の中の工事用道路を往来する。そこで、思い切って骨材製造プラントをダム上流へ移し、それに伴い新たな原石運搬ルートを設置するというものだ。

これなら大型車両や骨材製造プラントから発生する騒音や振動、粉塵などを集落から遠ざけることができるので周辺住民の生活を脅かすことがなく、安全性も確保できる。

実はこうした環境対策への提案は、発注者の独立行政法人水資源機構が当工事に求めていた評価項目のひとつでもあった。これが高評価を得て、半年に及ぶ審査の結果、熊谷組は当工事を受注した。

ダム完成後は、ダムを中心に、地域の生活の幅が広がっていくことが最も望ましいことだ。

満杯のダムの水に見学者から感嘆の声が

2007(平成19)年4月より着工。翌年8月5日にダム堤体コンクリートの初打設。そして2年5カ月を経た2010(平成22)年12月20日に打設完了。この間、予期せぬ岩盤処理の発生や異常突風による砕石運搬用ベルトコンベヤーの支柱損傷など、さまざまな障害に阻まれてきたが、これまでに培った豊富な知識と経験を生かして難局を乗り切り、工程どおりに作業を終えた。

そうした作業中も、当現場において地元や一般の方々向けの見学会が開かれた。

展望所からの眺めもさることながら、その大きさはダム底まで降りて空を眺めたときに初めて体感する。見学者たちは「予想をはるかに超えた大きさに圧倒された」と驚きを口にし、「ダム造りの凄さに魅せられた」と感心する者もいた。こうした貴重な体験を多くの人々に提供できたことも、工事従事者として喜ばしい思いだ。

原石採取
原石採取
骨材製造
骨材製造
コンクリート製造設備
コンクリート製造設備
堤体コンクリート打設状況
堤体コンクリート打設状況
バイバックによるコンクリート締固め状況
バイバックによる
コンクリート締固め状況
基礎処理工施工状況
基礎処理工施工状況

その後、堤頂設備工・基礎処理工・仮設備の解体工を経て、2011(平成23)年5月10日午前10時より試験湛水を開始。試験湛水は、貯水池の水位を上昇および下降させて、ダム・基礎地盤ならびに貯水池周辺地山等の安全性を確認するための重要な工程だ。

同年6月17日に平常時最高貯水位に達すると、以降、貯水位を維持して非洪水期となる10月1日から常用洪水吐きに試験湛水用ゲートを設置し、洪水時最高水位に向けて貯留を開始した。

本年2012(平成24)年3月24日、貯水位が試験湛水の最高水位(洪水時最高水位/標高259m)に到達し、非常用洪水吐きから越流試験を行った。越流している水は毎秒約2トンで、下流域での大幅な水位の上昇などはなかった。

この日は一般にも公開された。訪れた人は、満杯になったダムの水面に感嘆の声をあげ、高さ約80メートルのコンクリート壁を勢いよく流れ落ちる水に驚愕し、好天に恵まれたなかでこの日の様子をカメラに収めた。

大山ダム工事所の岡本弾所長は「100年に一度起きるであろう大洪水を想定した最高水位は、まず今後見ることのない貴重な光景なので、見学された方々も驚かれたでしょうし、地元をはじめ多くのメディアにも取り上げられました」と話す。

夜間打設状況(光害となる照明設備にも配慮)
夜間打設状況(光害となる照明設備にも配慮)
貯水位が洪水時最高位に達成
貯水位が洪水時最高位に達成

ビオトープに幼虫放流 輝くホタルに児童らの笑顔

夜の森に乱舞するホタル
夜の森に乱舞するホタル

大山ダム周辺には、多種多様な動植物による生態系が形成されている。そこで、定期的な水質・騒音・振動の調査や動植物の生態等調査(発注者が実施)・学習会、環境パトロールを実施している。また絶滅危惧種キンランの移植(発注者が実施)、ネッコチップ工法による法面緑化のほか、仮設備の配色や光害となる照明設備にも配慮。水資源機構も遮音壁を設置し騒音の軽減にも努めるなど、工事現場はもとより周辺地域に至るまで環境保全対策にも積極的に取り組んでいる。

特にダム近く赤石川右岸の下山地区にホタルビオトープを設置し、地元の大山小学校の児童がゲンジボタルの幼虫約300匹を放流したことは話題になった。数カ月後、幼虫は無事に育ち、自然の森中を自由に輝きながら飛びまわった。それを見に来た児童らはホタルを追いかけて「きれいだね」「電球みたい」「手に乗ったよ」などと大はしゃぎ。この児童らの笑顔に、自然環境の意義を改めて感じとることができた。

大山地区に設置したホタルビオトープ全景
大山地区に設置したホタル
ビオトープ全景

ほかにも、リデュース(プレキャストコンクリートを使用することにより木製型枠の使用量を抑制)・リユース(伐採木を法面の植生用基盤として再利用)・リサイクル(多品目の徹底分別を行って再資源化を行うことにより、混合廃棄物を排出していない)を工事着工時より継続して実施していることが評価され、平成23年度「リデュース・リユース・リサイクル推進協議会会長賞」を受賞することができた。

観光資源としてまた地域住民の憩いの場に

いま工事期間も残り一年を切り、来年2013(平成25)年3月の竣工に向け、工事も最終段階に入った。

現在も貯水位を徐々に最低水位まで低下させ、ダム本体等の安全性を入念に検証する作業は続いている。また細かなダム周辺の環境整備にも取りかかった。来春には、ダムに隣接する自然環境豊かな公園、木々の緑に囲まれた山々がより美しく整備される予定だ。将来的には、新たな観光資源としての活用も図られるだろう。大山ダムは、今を生きるものたちはもとより、次世代を担う人々への大きな希望となることは間違いない。

本年6月現在、熊谷組は、大山ダムに関わる地域の発展と周辺住民の安全・安心な未来を構築すべく、工事完了に向けて鋭意作業を進めている。

「最後まで周辺住民へ迷惑をかけることなく細心の注意を払い、熊谷組の施工に対する誠実さを貫き、無事に職務を全うしたい」と岡本所長。さらに「ここを訪れる人や地域住民の憩いの場になってくれたら嬉しいですね」と将来への期待を込めた。

ダム堤最上部の「非常用洪水吐き」4門から越流試験を実施
ダム堤最上部の「非常用洪水吐き」4門から越流試験を実施
ダム上流部よりダム堰堤を望む:貯水位を徐々に低下させたところ(平成24年5月現在)
ダム上流部よりダム堰堤を望む:
貯水位を徐々に低下させたところ(平成24年5月現在)

大更新時代のダムリニューアル

熊谷組は、今日までに徳山ダム、大滝ダムなど国内外に150以上のダム建設を手がけてきた。

しかし、日本におけるインフラ整備は「大更新時代」に突入する。大規模な構造物を新設することから、維持・更新による長寿命化が中心となるように変わっていくだろう。

ダムにおいても嵩あげやゲートの改修等、既存ダムをリニューアルしていくことが今後ますます増えていくだろう。近年、熊谷組が施工したダムのリニューアル工事を紹介する。

萱瀬ダム
萱瀬ダム

長崎県大村市にある治水、上水用ダムで、昭和37年に県内で初めて建設されたコンクリートダム。洪水調節機能の向上と水源確保のため昭和56年から平成13年にかけて14.5mの嵩上げ工事を実施。既存のダム機能を維持したままの施工を完成させた。工事とともに水辺には親水公園も整備、市民の憩いの場・観光名所となっている。

発注者
長崎県
構造・規模
重力式コンクリートダム
嵩上げ高14.5m 堤高65.5m 堤頂長240m 堤体積207,000m³ 総貯水容量6,810,000m³
笹倉ダム
笹倉ダム

島根県益田市にある、平常時は貯水せず、洪水時に貯水する農地防災ダムとして昭和41年に竣工。平成19年に渇水時の取水の安定化と、河川環境の保全に必要な流量確保するために再開発を実施。越流部(水の流れる部分)を拡幅し、全面越流型ダムに改良した。

発注者
島根県
構造・規模
重力式コンクリートダム
堤高36.2m 堤頂長92.5m 堤体積32,300m³ 総貯水容量480,000m³
菅生ダム
菅生ダム

昭和54年、兵庫県姫路市に流れる二級河川の支川菅生川の上流に完成した多目的ダム。洪水時のダム管理をより安全・確実にするため、既設の非常用放流設備を撤去して越流部を拡幅するゲートレス化を行った。洪水時最高水位に達すると自然に放流できる自然調節ダムだ。平成23年完成。

発注者
兵庫県
構造・規模
重力式コンクリートダム
堤高55.7m 堤頂長157m 堤体積98,700m³ 総貯水容量1,950,000m³
西郷ダム
西郷ダム

昭和4年に竣工した宮崎県内を流れる耳川水系で最も古いダム。平成17年の台風により大規模な洪水・土砂災害が発生し、通砂機能向上を図るために改造工事を計画。平成28年完成を目指し、8つある洪水吐きのうち中央4門を撤去し、大型洪水吐きゲート2門を新設する予定。安全確保のため工事は渇水期にしか行えないため、綿密な施工管理が要求される。

発注者
九州電力株式会社 耳川水力整備事務所
構造・規模
重力式コンクリートダム
堤高20m 堤頂長84.54m 堤体積13,000m³ 総貯水容量2,452,000m³

Previous Page Go to Page Top