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熊谷組の今

ものづくり最前線

斗南病院新築工事

工事が進む新病院建設
工事が進む新病院建設(平成28年2月撮影)

冬の寒さが厳しい北海道。その中心都市の札幌で、寒さを吹き飛ばすような熱さ溢れる熊谷組の現場が稼動しています。斗南病院新築工事、札幌駅から徒歩6分という街の中心地に243床の病院が産声を上げようとしています。病院が目指す「全員でつくる病院」を、発注者のみなさんと熊谷組の社員をはじめ工事に携わる人がひとつになって、完成に向かっています。特記すべきは、20ヶ月という、同規模の病院と比較すると短い工事期間。使う人、作る人の想いが積み重なり、そして工期短縮のために様々な工夫などが盛り込まれた斗南病院の建築現場をご紹介いたします。

今回の斗南病院新築工事は、昭和47年に熊谷組が新館増築工事を行った、現在の斗南病院の新築移転工事です。

現病院の新館増築工事
現病院の新館増築工事(昭和47年撮影)

赤レンガの道庁に併せた、レンガをあしらった病院誕生へ

3月の北海道新幹線開業に向けて、活気付く北の都 札幌。その中心部にある札幌駅のすぐ近くで現在、熊谷組が建設中なのが、高度先進医療を担う都市型急性期病院の斗南病院。現在、同病院は札幌市内で診療を行なっていますが、今回の工事は同じ北海道庁近くに移転・新築するものです。計画・運営するのは国家公務員共済組合連合会(KKR)で、病院は地上11階 地下1階 塔屋1階、病床数は243床、医療設備は最先端のものが配置され、札幌市だけでなく近隣市町村からもその完成が待ち望まれています。

完成予想図

建設地は歴史と風格が漂う北海道庁赤レンガ庁舎の目の前ということもあり、新病院の外壁には、階高5mの1階部分は本物の赤レンガをスライスして貼り付け、2階~5階までは赤レンガ色に特別製作したレンガ調のタイルを貼り付けし、北海道ならではの赤レンガの景観に沿った佇まいです。

工期は平成26年12月から平成28年の7月の20ヶ月。同規模の病院の建設工事と比較すると工期は短く、この期間で高品質の病院を完成させるために、工事計画段階から多くの対策を取り入れました。

鉄骨建て方も順調に進みました
鉄骨建て方も順調に進みました
施工が進む病院内
施工が進む病院内

工期を安全に短くするために

工事を取り仕切る阿部所長に話を聞くと、その工期は「ものすごいスピードの短距離走を20ヶ月やっているようなイメージです」と話します。しかし阿部所長は続けて「工期を縮めるのに、根性や業者への押し付けだけでやるのは熊谷組の工事ではない。厳しい工事を効率よく、安全に、品質の良いものを作っていくために、計画段階から作戦を色々と練りました」と。その取り組みは阿部所長のダイナミックさ、そしてうちに秘めた繊細さが感じられます。今回はそんな取り組みのなかから主な2つを紹介します。

地下天井裏足場の天井裏設備配管作業の様子
地下天井裏足場の天井裏設備配管作業の様子
地下天井裏足場の天井下間仕切壁作業の様子
地下天井裏足場の天井下間仕切壁作業の様子

まず、地下部分。地下の階高は6.8m、室内の天井高さは2.5m、天井裏4.0mは配管などの設備のスペースとなります。病院建築は設備工事量が多いのも特徴です。一般にはこのような場所での配管部分の施工は、高所作業車を用いて作業を行ないますが、地上から6m近くの作業車のバケットの中での作業は狭く、危険もともなうため作業員は常に緊張を強いられます。また、作業箇所の移動に伴って作業車を移動させる手間など作業効率も悪くなります。そこで、この現場では天井部分に鉄骨を組み、作業床を設置しました。頑丈な床なので天井裏の設備工事は可搬式作業台で施工することが可能となり、作業効率と安全性が格段に上がりました。工程的には天井裏の設備工事と天井下の建築工事が同時進行することができ、1.5ヶ月程の短縮ができました。天井が地震の時に揺れないように補強を施さなければなりませんが、4.0mの天井裏で設備配管が大量にある場所では、なかなか思うように補強できない、さらに作業姿勢も不安全になります。この天井鉄骨があると、そこから天井を吊るので補強が必要なく、安全に頑丈な天井が確実に施工できます。さらには、建物完成後もこの床の一部を残しておくことで、将来メンテナンスの際には、足場を組むことなく歩いて点検にいけるなど、建物を利用する人たちの使い勝手も考えたものとなっています。地下の設備工事期間の短縮は、上層階の設備工事期間との重複をなくし、無理な工期短縮をなくすことができます。無理な工期短縮は大幅に安全性を損ないます。その意味でも他の工種へ良い影響を与えることもできました。

外壁を取り付ける前に建物内で先行塗装
外壁を取り付ける前に建物内で先行塗装
各施工で大活躍のタワークレーン
各施工で大活躍のタワークレーン

そしてもう一つの取り組みは、外壁の塗装。今回の工程ではちょうど冬季間に当ります。通常は外壁材を貼りつけてから、作業員が足場にあがり塗装を行います。しかし、冬の北海道は天気が悪い日も多く、寒い中での作業は体力を消耗し、安全性を低下させ、職人の指先の繊細な感覚を奪います。そこで、この現場では搬入した外壁材を建物の中に並べ、建物の中の床で塗装を行ない、それを外壁へ貼り付けることにしました。これにより、細部までより綺麗に仕上がり、品質も格段に上がり、また真冬の北海道でも天候に工期を左右されることなく安全に効率よく作業が行えます。また外壁の工期短縮は外部足場の早期解体を可能にします。実際にこの現場では、足場の組立完了が平成27年12月中旬、外部足場解体開始が平成28年1月中旬でした。タワークレーンは建物の内部を貫通して建てている為、早く解体して建物の床を作りたいのですが、タワークレーンがある間に完了させたい仕事が山ほどあります。そんな中で、今回はタワークレーンによる足場解体、屋上設備機械や電気機械のタワークレーンによる設置を可能にし、ここでも効率の良い安全な仕事に繋がりました。

このように地下部分の仮設鉄骨床、そして外壁の工事の工夫は工期短縮に大きく貢献しましたが、この他にも沢山の小さな工期短縮の取り組みがあり、それらは他の工種へも影響を与え、厳しい条件であっても安全に効率よく品質の良いもの造りが可能になります。

実際に使う人の思いに寄り添う

見学会の様子
見学会の様子

斗南病院では新病院の新設において、「全員でつくる病院」をスローガンに掲げ、病院に携わる方々にできるだけ多く参加してほしいとの意志を持っています。もちろん当社もその趣旨に賛同し、阿部所長は「病院は機能が第一。その重要な一つが看護師さんの看護動線。開院後、患者さんへ充実した医療サービスを提供して頂く為には、工事段階で実際に体験して頂き、たくさんの要望を出してもらうこと」と考えて様々な提案をしています。

その一つとして、病院の方々に実際に建物が出来上がっていく姿を見ていただきたいと考え、見学会を開催しています。実際に建物を使われる事務を担当する方から医師・看護師まで、1回の見学会が120人に及ぶこともあり、参加した方々から好評を博しました。またこれによって、熊谷組の社員も大きな刺激を受けました。

また今回の病院の設計では、「将来の病院は個室が主流となる」という先を見据えた考えから、総ベッド数の約50%が個室となっています。作業所では施工の早い段階で、実際に開院してから用いられるベッドや什器などを配置した模擬病室を作り、看護師のみなさんとともに、看護の動線を確認しました。これによって病室に持ち込まれるさまざまな医療機器だけでなく医療ガスアウトレットからの器具取り回しや、ストレッチャーや車椅子からの患者の乗せ換え動作、また患者の方々の洗面化粧台・トイレ・入浴など日常の行動や、家族が泊まる場合の動線まで想定し、その使い勝手を徹底的に確認しました。部屋のタイプによって、それは微妙に変わるため、模擬病室は8タイプに及びました。そうした実際に使う人たちの意見や提案を踏まえて、様々な工夫が施工に組み込まれていきました。

こうした取り組みができるのも、発注者の方々との打ち合わせを繰り返し、また日々のコミュニケーションを図っていくからこそ。発注者・設計事務所と先行して検討・相談し、これにすばやい対応をしていただけることで、早い段階で物事が決まると、施工に反映しやすくなり、さらに工期の短縮に繋がり、またより良い提案が可能になります。そうすることで、より使う側と造る側が満足のいく建物にグッと近づいていきます。

病室モデルの実地確認の様子
外壁のロゴマークや病院名サインも、工事の早い段階から検討
作業所では照明を内蔵した小型模型を制作し、
発注者のみなさんと検討を重ねました。

いよいよ3つ目のハードルへ

阿部 所長
阿部 所長

2016年7月の竣工に向けて、工事は大詰めを迎えます。阿部所長は「この現場には3つのハードルがあります。1つ目は毎分15トンの地下水を汲み上げながらの地下10mの工事を7月いっぱいで完了させ8月から鉄骨を建てること。2つ目のハードルは鉄骨を11月に上棟させ床と外壁を12月いっぱいで完了させ囲いきって冬を迎えること。この2つのハードルはクリアしました。3つ目のハードルは5月(平成28年)に受電(建物に電気を引き入れること)することです。それを乗り越えた時に、この工事を無事完成に導く勝負に勝てると思います!」と話します。基礎工事の頃の写真を見つめながら、「この工事は北海道支店、そして自分自身にとっても大きなチャレンジです。発注者の方はもちろんのこと、苦しい時をともに過ごした協力会社の方々との結束力、そしてそれぞれの想いのためにも、この工事を成就させなくてはならないという強い信念をもって毎日現場に立っています」と意気込みを話します。阿部所長自身が若かりし頃、恩師と仰ぐ先輩社員から言われた言葉を今も受け継ぎ、「心なき現場に成功はない。思いやりこそが現場の基本」と毎日言い続けています。「苦楽を共にできる協力会社の方々、社員ら働く仲間の支えがあってこそ、この工事の完成がある、そうした人のつながりの大切さを改めて実感し、また現場の社員にもそれを伝えて行きたい。」と話します。

また、そうした「もの造り」への熱い想いについて尋ねると、「子供の頃、誰しも、砂場で山をつくってトンネルを掘ってみたり、積み木を積んで建物を作ってみたり、なにかしら作ることに喜びを感じたことがあるのではないでしょうか。実は私はその延長で仕事をしています。もの造りという人間本来が感じる喜びを、私はこの仕事で実感・実現できます。熊谷組には自分の手で測量をし、協力会社の方々と直接打ち合わせを行い、良い建物を造る為に真剣に議論をして施工図を描き、出来上がる姿をイメージしてそれを成就する喜びこそ、現場監督の生きがいとしている人が多くいます。会社にとって人材は宝だと思います。真のもの造りを体感できる場、それが熊谷組だと思います」と。

寒さ深まる季節が終わり、札幌に春が訪れ、初夏に光が差し込む頃、発注者のみなさん、そして社員が待ちに待った病院が完成します。造る喜びが満ちた病院は、携わる全ての人のベクトルをひとつに、完成という1点に向かって熱く進んでいます。

阿部所長が発案・デザインした仮囲いでも北海道新幹線開業を盛り上げます
阿部所長が発案・デザインした仮囲いでも北海道新幹線開業を盛り上げます
タワークレーンをバックに現場社員らで
タワークレーンをバックに現場社員らで

 

ここからは工事に携わる4人の若手社員のみなさんにお話を伺いました。

4人の若手社員のみなさん

病院の建設に携わって、一般的な建物の施工と違うところがありますか?

大室 副所長
大室 副所長
工務の主軸、設計事務所との打合せ、
病院の各部門との調整を担当。

大室:総合病院ということで、内科や外科をはじめ多くの診療科があります。「こういう医療を行うために、ここにこうものがなければいけない」というような、各部門や科ごとに専門的に要求されるものが違います。その各部署の要望を伺って、それをまとめて図面に反映していくというのが大変な業務ですね。病院の皆様とは多く打ち合わせしています。

:そうですね、発注者の方々とは現場視察など、目に見えて接する機会が多いですね。なので、そうした目を意識して仕事をすることが多く、それが私自身のモチベーションにつながっています。実際に自分たちが作ったものを使う人の意見や、どういう風に使うのかというのに、想像を膨らますことができます。お話の中で、発注者の方々の熱い想いを伺うことができたのも貴重な経験になりました。

現場では様々な任務があると思いますが大変なところなどはありますか?

森 工事主任
森 工事主任
鉄骨工事など重要工種を主軸に、工程や
作業計画など全般の概要の管理を担当。

日向野:工事の全体的な管理をしていくと、工事には沢山の工種があります。まだ覚えることがありすぎて、工程を把握して計画したりするのに、新しい知識に出会い苦労もしますが、そうすることで体に覚えこませています。

遠藤:正直に言えば、日々大変じゃないことがないですね(笑)。私はコンクリートや躯体の管理を行なっており、先輩たちが計画したものを実行しなくてはいけないのですが、それがうまく行くことばかりではないのも現場です。経験の多い先輩方とは、状況や見ている視点が違ったりして、学ぶところが多いです。自分の持っているレベルよりも常に上のレベルを見ながら仕事をしなくてはいけないと、そう思いで仕事を進めています。

工事を進めていく上で、やりがいや嬉しかったことがありますか?

日向野 工事係
日向野 工事係
仮設工事・安全設備・内装工事
の管理を担当

:長いスパンの話としては、建物が無事に竣工して、工期どおりにお客様にお引渡して、工事が完了しますので、そのときに達成感を感じるのかなと思います。ただやっぱりそれに向けてひとつひとつ細かい仕事が沢山ありますので、それをこなすことが日々のやりがいですね。そして、やっぱり一番良かったと思うのは、朝来た作業員のみなさんが、何事もなく1日の仕事を終えて帰っていくこと。そういう1日1日当たり前のことの積み重ねが大切なのだなと感じています。

大室:発注者の方々の建物への並々ならない期待をひしひしと感じています。なんとかして期待に応えなくてはという想いがありますね。そういうところにやりがいを感じます。

日向野:この現場に携わって、1年が経ちます。あっという間に一年が過ぎてしまって、ふりかえらずずっと走ってきた感じがします。建物が完成して、工事が完了したときに、大きなやりがいを感じるのかなと思います。

遠藤:今まで経験したことがないくらい外からも見られる現場なので、お客様とふれあうことが出来る現場見学などが新鮮です。実際に使う人と触れ合うことがあんまりなかったので、モチベーションが上がってきますし、やりがいもあります。嬉しかったことは斗南病院の代表者の方に名前を覚えてもらったこと。この現場で携われていると自信になり嬉しかったです。

ではその終わったとき、竣工に向けて意気込みをお聞かせください。

遠藤 工事係
遠藤 工事係
鉄筋・型枠・コンクリートなど
躯体関係の管理を担当。

遠藤:最終的には使ったひとが満足を得られる。熊谷組に頼んでよかったというものを造っていきたい。欲を言えば関わっていただいた関係者の記憶に残りたい。熊谷組のなかでも、ぼくらがやった、熊谷組の○○さんがやったと覚えてもらえて、さらにお客様に満足していただけたら最高かなと思います。

:工事としては無事故・無災害で終わることが、一番大事なことなので、まずそこを達成できるようにしたいです。建物としては、引渡してから建物の機能を動かすことになりますから、お客様が使い始めて、10年20年経ったときに熊谷組に頼んでよかったなと思ってもらえる建物を造っていきたいです。

大室:竣工引渡のときに、お客様が喜んでいただけるようなものを造ること、そしてこの建物を使っていく中で、熊谷組に発注してよかったと思えるような建物を必ず提供するという意気込みでやっていきたいと思います。

日向野:お客様に満足してもらえるのが一番嬉しいことですね。満足してもらって今のいい関係を築いていきたいです。そして自身の経験を次に仕事に続ける、新しい現場でひとつ成長して仕事ができるように頑張っていきたいと思います。

【工事概要】

【工 事 名】
斗南病院新築工事
【工事場所】
札幌市中央区北4条西7丁目
【発 注 者】
国家公務員共済組合連合会
【設計監理】
株式会社 大建設計
【工 期】
平成26年12月1日~平成28年7月31日
【建物用途】
総合病院
【地区地域】
商業地域、都市計画区域内、市街化区域
【敷地面積】
3,311.29㎡
【建築面積】
2,837.80㎡
【延床面積】
21,540.69㎡
【構造規模】
鉄骨造 地上11階 地下1階 塔屋1階
【最高高さ】
52.9m
  • 病床 243床
    個室
    96室
    特別室
    5室
    2床室
    5室
    4床室
    30室
    無菌病室
    8室
    合計
    144室
  • 放射線部門(X、XTV、CT、MRI、リニアック、アンギオ)
  • 外来診療部門
    (内科、外科、形成外科、整形外科、泌尿器科、婦人科、眼科、耳鼻科、皮膚科、中央処置室)
  • 化学療法室(20床)、内視鏡検査室(5室)
  • 検査部門(生理検査・病理検査・生理化学検査)
  • 手術室(ハイブリット 陰圧 BCR ロボット 計7室)、ICU(5床)
  • 救急処置室、リハビリテーション室
  • コンビニエンスストア
  • エスカレーター(4機)、エレベーター(5機)

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