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熊谷組の今

ものづくり最前線

都市計画道路安浦下浦線深礎擁壁新設工事

横須賀市の東部を南北に伸びる都市計画道路、安浦下浦線。三浦半島の広域ネットワークの形成と周辺道路の交通渋滞緩和を目的として続けられてきたこの都市整備事業では、横須賀市長沢6丁目付近で丘を切り開いて440mの直線道路を構築します。地域に横たわる地層は、空気に触れるともろく崩れ、水分を含むと粘り気を帯びて急速にやわらかくなる特性の葉山層。このような地盤で工事を進めるには、万が一に備える安全への取り組みと、社員らの現場力、そして熊谷組の組織一丸となった技術力が不可欠です。巨大な杭が無数に立ち上がり、そしてその杭を取り持つような安定感のある梁が横たわる、竣工間際の現場を訪ねました。

安定感のある梁が横たわる竣工間際の現場

丘を貫く形で切り開く220mの道路

完成予想図
完成予想図

都市計画道路浦安下浦線は、神奈川県横須賀市の安浦町を起点として国道16号線及び国道134号線を経て、根岸町から下浦に至る11.5kmの主要幹線道路で、横浜横須賀道路佐原インターチェンジへの接続道路として、1日の交通量も非常に多い道路です。

今回の工事は浦安下浦線のうち長沢6丁目交差点から、三浦しらとり園入口交差点までの区間に幅22m・延長440mの四車線道路を整備するもので、このうち熊谷組(JV)は三浦しらとり園側の220mを担当しました。

当社JVが担当する区間は、既存の二車線道路が丘にそって大きく蛇行している小高い丘の部分。工事は道路の安全性と利便性を考慮し、この丘を貫くような形で直線道路を建設します。

この工事の最大の特徴は、葉山層と呼ばれる海成層の地盤に68本もの深礎杭を打設して造る巨大な壁(土留擁壁)。

工事ははじめに山側(標高の高い側)に31本の深礎杭を設置します。杭と杭の間には隔壁となる鋼矢板を取り付け、掘削しても地すべりを起こさないように地山を隔壁で押さえながら谷側(標高の低い側)を掘削します(1次掘削)。谷側の深礎杭を施工する高さまで掘削が終わったら、今度は谷側に19本、道路中央部に中柱となる17本の深礎杭を打設。山側と中柱、谷側の杭をストラットと呼ぶコンクリートの梁でつなぎ、さらにその下を掘削します(2次掘削)。山側と谷側の杭を梁でつなぐことによって一体の構造物となり、さらに強度と安全性が増すのです。実際に自動車が走行する高さまで2次掘削が完了したら、床を構築し舗装や排水工事を施して完成となります。

施工前
(1)施工前
山側の深礎杭の施工
(2)山側の深礎杭の施工
1次掘削
(3)1次掘削
谷側の深礎杭の施工
(4)谷側の深礎杭の施工
中柱となる深礎杭の施工
(5)中柱となる深礎杭の施工
ストラットの施工
(6)ストラットの施工
2次掘削
(7)2次掘削
底盤等を施工し完成
(8)底盤等を施工し完成

巨大構造物の緻密な管理

工事を担当した山口副所長、中山所長、里見さん
工事を担当した山口副所長、中山所長、里見さん

三浦半島のほぼ中央に横たわる葉山層は、1200万年以上前に泥や砂などが海底に堆積してできた地盤です。この地層は地面の下では非常に固い地盤ですが、掘削すると押えられていた力が解放されて急激な強度劣化を起こしてもろくなり、水を含むと急速にやわらかくなって地すべりを起こしやすくなるという特性があります。

現場を統括する中山所長は、「熊谷組の多くの先輩社員がこの葉山層と対峙し、困難を克服してきた」と話します。今回の工事でも、これまでに先輩技術者が蓄積してきたノウハウと最新の技術を用いて、万全の施工管理が行われています。

杭に設置した計測器
杭に設置した計測器

そのひとつが地山や杭等に対し数多く計測を行った動態計測です。観測データは現場事務所のパソコンに随時転送され、ミリ単位の変位も見逃さない監視が行われています。また、現場にはLEDを用いた計測器も設置されています。変位の程度によって光の色が6段階に変化するこの装置は、事務所でパソコンを見ていなくても、現場で誰もが状況を確認できるという利点があります。

外観は見上げるようなダイナミックな構造物ですが、表に見えないところではミリ単位の緻密な計測管理が行われています。

中山所長は「小さなことを見逃さないように注意し、小さな変化があった場合は、ひとつひとつ分析しながら工事を進めている」と万全の安全管理を強調する一方で、「計測機やカメラで現場の状況は常時監視できるが、社員は現場を重視し、現場に常駐する時間も長い。現場で視て、そして触れているからこそ分かることが沢山ある」と話します。

道路にトンネルの考え方を取り入れる

そして、緻密な管理が功を奏するときがやってきます。工事を進めるうち、想定外の大きな力(応力)が深礎杭にかかっていることが計測器によって確認されました。そこで、今後安全に工事を進めるために熊谷組の地すべりや構造などの土木技術専門部隊が集結、計測データの解析による原因究明と対策が検討されました。

通常、今回の工事のような場合には、山側から大きな力がかかっていると考えるのが一般的です。力が大きくなれば地すべりの発生が懸念されます。

しかし今回、熊谷組の技術部隊は、計測データを逆解析して検討を行なう中で、通常では考えにくい谷側から強い力が発生し、それが谷側の杭と底盤に大きな負荷をもたらし、トンネルで見られるような路面を下から持ち上げる「盤ぶくれ」が発生しているということを導き出しました。

底面に補強を行うインバートストラットの様子
底面に補強を行うインバートストラットの様子

そして、その解決策は谷側の杭を炭素繊維のシートで補強し、早期閉合を行うことだと結論づけました。もともと杭と梁は一体化していましたが、それに加えて底部分もしっかりと固定し、トンネルのように早期に囲われた一つの構造体とすること(閉合すること)で外部からの圧力に対してより強固にするものです。底部分はインバートストラットと呼ばれる、トンネルの施工において用いられる方法が取り入れられました。

この解決策にいたるまでには、道路の専門部隊だけでなく、トンネルなど様々な部門の専門技術部隊が集まり検討会を開きました。

こうした対応に中山所長は「計測結果からだけではわからない、谷側から力がかかっていることに気付けることが当社の組織力だと思う」と話します。道路への技術だけでなく、トンネルの技術を取り入れることで解決策が見つけられた。これは長年の経験に基づいた技術と知見があり、解決に向けて、ひとつになって考える風土があるからです。社内の検討会議では沢山の解決策が上がり、一つ一つ検証・逆解析する、その繰り返しを重ねて最も良い解決策を導き出してお客様に提案する。「この全社をあげての対応が、熊谷組の目指す建設サービス業につながっている」と。

もちろんこうした事態には当社だけではなく、社外有識者の方々による委員会が立ち上げられ、また、発注者である神奈川県横須賀土木事務所との協議も行い、全ての関係者がひとつに向かうことで解決へ向けて大きな弾みとなりました。

また工程管理を担当する里見さんは早期閉合という工法に「普段であれば、もっと効率よく作業を進めますが、今回は測定の結果を見ながら慎重に進めることが重要であり難しい点でした」と振り返り、工事は安全が重視した進め方で行なわれたことがわかります。

すべてはコミュニケーションから

スタッフでの打ち合わせの様子
スタッフでの打ち合わせの様子

安全第一、それは熊谷組で何より優先して進められていることです。この現場でも、工事の開始とともに、安全に関する3つのスローガンを事務所や朝礼広場に掲げ、工事に携わるすべての人に安全第一の意識を伝え続けています。

中山所長は「最初に恐怖や危険を感じた場所でも、人間はしばらくすると怖くなくなる。危険は何も変わっていないのに恐怖感がなくなることが『慣れ』だ。だからこそ常に意識を強める必要がある」と言います。そして「危険や慣れに対して、社員や協力会社の社員同士が注意できない現場になってしまっては安全の徹底は図れない。お互いに注意できる環境をつくることも重要なことと思っているし、実践している」とコミュニケーションを大切にしています。

歩道を通る人に見えるように生け花の展示地域の方に話しかけられることも
歩道を通る人に見えるように生け花の展示 地域の方に話しかけられることも
(出展協力:細川未生流 岡本陽甫)

また、工事は地元の方々の協力なくしては進められません。そこで地元の方々に工事を身近に感じてもらおうと、構造物にLEDライトを設置してライトアップしたり、生け花の展示(1回/2ヶ月)を行っています。これらは現場のスタッフの提案で実現したもので、「仕事はきつい部分ももちろんあるけれど、みんなでひとつのものを作る楽しさがある」とものづくりへの楽しさを話します。

この10月いよいよ工事は竣工を迎えました。

里見さんは「苦労は沢山ありましたけど、やはり道がつながったときの感激はひとしおでした」と。また中山所長は「工事は長期に渡ったが、終わってみると早く感じられた。一緒に働いた仲間と一丸となって進められたことは、楽しかったとの一言に尽きる」と。問題を解決し、乗り越えたときの達成感は携わる社員じゃないと分からないが大きなものだということが分かります。また、山口副所長は「いろいろな経験ができた現場で、今後この経験をいかに伝えるかも重要なことだと思う」と。

技術が結集して、出来上がった構造物に加えて、経験を通してより深めた技術と知見は脈々と今後も受け継がれていきます。

幻想的な雰囲気のライトアップ
幻想的な雰囲気のライトアップ

【工事概要】

工 事 名:
都市計画道路安浦下浦線深礎擁壁新設工事
工事場所:
神奈川県横須賀市長沢3丁目~6丁目
発 注 者:
神奈川県横須賀土木事務所
施 工 者:
熊谷・ガイアート・田中石材土木特定建設企業体
工 期:
平成23年12月20日~平成27年9月30日

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