熊谷組ロゴ

熊谷組の今

ものづくり最前線

有楽町線小竹向原・千川間連絡線設置シールドトンネル工区土木工事

東京・板橋区、東京メトロ有楽町線の小竹向原駅と千川駅間の地下では、新たな連絡線を設置するためのトンネル工事が行なわれています。この区間では小竹向原駅を共用する副都心線が有楽町線と平面交差するため列車の通過待ちが生じており、輸送の安定性向上のために連絡線の建設が必要でした。

しかし、住宅地が近く、道路や複数の既存の線路が近接する地下でトンネルを掘り進めるには、十分な断面積が確保できません。そこで採用されたのが、複合円形と呼ばれる楕円形の断面を持つトンネル。今回はシールド工法で建設が進む地下トンネルの現場を訪ね、そこでプロジェクトに関わる山上所長、木下さん、そして協力会社の山口プロサイト(株)の宮川さんのシールド工事に挑む姿を紹介します。

施工中のシールドマシンの先端
施工中のシールドマシンの先端

輸送の安定性を求めて

東京メトロ有楽町線は、埼玉県和光市の和光市駅と東京都江東区の新木場駅を結ぶ、延長28.3kmの地下鉄(下図中の黄色)で、和光市駅からは東武東上線を経由して森林公園駅(オレンジ色)まで、小竹向原駅からは西武有楽町線を経て西武池袋線の飯能駅まで相互乗り入れしています(紫色)。そして2008年6月に和光市駅から渋谷駅間を運行する副都心線(茶色)が開通してからは、和光市駅から小竹向原駅間は二つの路線が同じ線路や駅等を共用し、小竹向原駅から池袋駅間は複々線化して並走しています。副都心線を経由すると東急東横線(赤色)・横浜高速鉄道みなとみらい線(エンジ色)へと接続し、埼玉県から東京都心を抜けて、神奈川県横浜市まで抜ける路線として、その利便性の高さから多くの利用者が利用しています。

このように6路線が相互に乗り入れする複雑な運行形態にくわえ、小竹向原駅と千川駅の間では二路線が平面で交差していることから、一方の列車に遅れが生じると、広い範囲でダイヤの乱れが発生し、複雑に絡む路線の列車運行に大きな影響が出てしまいます。

そうした事態を解消するため、そして将来の列車本数の増便に対応するため、現在進められているのが有楽町線上に連絡線を新設する工事で、平面交差を解消し、輸送の安定性を図ります。工事はA線(上り線 池袋方面)とB線(下り線 和光市方面)の連絡線の2本を構築するもので、A線は2013年3月16日から供用を開始しており、供用後A線ではダイヤの乱れが減少するなど新連絡線の建設の効果が出始めています。

様々なものが近接するエリアだから複合円形シールドを採用

シールドマシン
シールドマシン 手前が楕円形の複合円形のもの、
奥が通常の円形のシールドマシン

この大きな計画は二つの開削工区と一つのシールド工区に分かれており、当社(JV)はA線で175m、B線で145mの計320mのトンネルをシールド工法で施工しています。

シールド工法は、筒状の機械の先端にカッターヘッドと呼ばれる土砂を削るための刃を装着したシールドマシン(掘削機)で、カッターを回転させながら地中を掘り進めていきます。

シールドマシンの外殻が土砂の崩壊を防ぎ、その内側でセグメントと呼ばれるコンクリート製のブロックを組み立ててトンネル外壁を構築するので、安全に作業ができる工法です。

工事を進めるには、始めに地上から立坑と呼ばれる縦穴を掘ります(開削工法)。続いてその立坑から分解したシールドマシンを地下に降ろし、トンネルの掘削をスタートさせる位置で組み立て、いよいよ掘削が開始します。

マシンはコンピューターで制御され、1分間に2cmというスピードで掘り進めて行きます。そしてセグメント一個分の距離を掘り終えると1リング分のセグメントを組み立て、再び掘り進めるという作業を何度も繰り返して行います。

複合円形シールドの断面の様子
複合円形シールドの断面の様子。
黄色い丸は刃が伸び縮みするコピーカッター

通常のシールド工法では、円形の断面を持つシールドマシンを用いますが、今回の工事では住宅街が近接していることや、道路・既設路線などの地下構造物が近接しているため十分な大きさの円形の断面積が取れません。そこで今回採用されたのが、複合円形シールドです。これは様々な直径を持つ円で構成された、縦長の楕円形状で、円形よりも10%程度断面積が小さくて済むというメリットがあります。しかし一方で、作業には多くの課題がありました。径が均等な円形であれば、シールドマシンのカッターヘッドはそのまま回転させれば良いのですが、楕円形状という特異な形状では、径が短い部分でカッターヘッドが長すぎてしまいます。それを解決したのがコピーカッターという伸縮可能なカッターです。カッターヘッドが回転しながら、径が短い部分ではカッターが縮み、長い部分ではカッターが出てくる仕組みで、カッターヘッドが一回転する間に2回伸び縮みして掘り進めて行きます。

楕円形状であるという特殊性は、シールドマシンが通過したあとに組み立てるセグメントの構造にも影響しています。普通の円形であれば全て同じ形のセグメントで構築していけますが、楕円形状のトンネルを構成する6つのセグメントは全て形が違います。セグメントの組み立て作業にも緻密な管理・技術が必要となります。

1ヵ月半、シールドマシンが掘り進む

B線においては、平成26年9月12日から10月29日まで、シールド機を稼動させ、145メートルを掘り終えました。入社して4年目の木下さんは、この工事で初めてシールドトンネルを担当していますが、現場を初めて見たときには土木の建設工事なのに重機などではなく、精密な機械で様々なデータを管理しながら進めていく緻密さに驚きを感じたといいます。

山上所長
山上所長

このプロジェクトを仕切る山上所長は「シールド工法は機械で掘り進めます。機械で掘るのだから簡単だろうと考えている人は多いかもしれませんが、やり直しのきかない工法なので、緻密な施工管理が要求されます。掘り始める前には周到な準備・検討を行ないますが、我々はシールド機の前を見ることができないので何が起こるかわかりません。何かあっても、シールド機は後退できないのです。トラブルが発生したらと考えるとプレッシャーに押しつぶされそうで眠れない日々が続きます」と掘進中の心境を話します。「でも、シールド機が到達してトンネルが貫通し、ふぅーっと風が吹いたとき、シールドを進めるためにやってきた多くのことが報われたと思います。この達成感のために仕事をしています。何現場やっても毎回涙を流してしまいます」と。その達成感は現場を取り仕切る協力会社の宮川 さんも「シールド工区というだけあって、掘り進めることが当たり前のこと。しかし、この特殊な断面のシールド機を動かす為にいろいろなことを考えて準備を進めていました。到達したとき、プレッシャーの中全員でがんばってきたことが報われる」と。

建設地は東京都板橋区、閑静な住宅街が広がり、交通量が多い地域です。それゆえ資材を仮置きする場所も十分に取れない状況にあり、その日使う資材のみを搬入し工事に使用しています。また、A線が先行して供用を開始すると、その効果が大きかったことからB線の工事も早期供用が望まれており、工期を短縮することが検討されています。施工管理は安全と品質だけでなく、技術的な管理に加えて資機材や工程の管理、技術者の確保など多岐にわたり、複合的かつ総合的に行われています。そうした一つ一つの課題をクリアし、仲間で積み上げていくからこそ、シールド機が到達した際の達成感は大きなものへとなっていきます。

施工中のトンネル内部
施工中のトンネル内部
シールドのカッター
シールドのカッター
シールド工が終わり、きれいにセグメントが組まれたトンネル内部
シールド工が終わり、きれいにセグメントが組まれたトンネル内部

クローズアップ!現場で働くみなさん 初代熊谷マイスター宮川さん(山口プロサイト(株))

宮川さん
宮川さん

現場で一般土木工事からシールド工などの専門工事までのほぼすべてを把握するのは山口プロサイト(株)の宮川さん。当社は特に優れた職長を熊谷マイスターとして認定していますが、宮川さんは初代熊谷マイスターです。宮川さんは工事を進める上で、熊谷組JVの社員と多くの協議をしながら、工事を進めていきます。工期が短縮されることになった場合は自身のネットワークを生かして解決していく。宮川さんは「限られた、決められた中でしっかりとした工程・品質・安全を管理して最高のものを作っていくこと」と職人として妥協のない姿勢を貫きます。また今回の工事ではA線施工後に、さらにB線の施工が始まりましたが、B線へ挑む意気込みを聞くと「A線の経験を踏まえて、B線はより良いものを、より早く、より綺麗に施工する」と。マイスターは常に更なる向上を目指しています。

ひとつのことを一緒にやろうという意識

工事を担当するスタッフ
工事を担当するスタッフ

先輩達から教えてもらいながら仕事を進める木下さん
先輩達から教えてもらいながら仕事を進める木下さん

現在B線の工事を担当する社員は6人。そして協力会社の方々を含めると工事の最盛期で30名が関わります。宮川さんは「現場は家族のような雰囲気があり、ひとつのことを一緒にやろうという意識が高い」と。山上所長は「熊谷組の社員や施工に携わる人たちは考え方が似ている。10を話さなくても情報共有ができる。長く働くには人間関係が大切で、そういう社風だから続けてこられた。言い難い話も腹を割って話せる、怒られるときも愛情がある怒られ方だった」と話します。

また木下さんは「熊谷組の先輩たちは厳しい経験をしてきて、技術力がありたくさんのことを知っている。考えていることのレベルが高いです。それに加えて、先輩たちとの距離も近く、技術について相談すると、惜しみなく教えてくれる。その姿勢は凄いなと感じています」と。B線から施工に携わることになった木下さんですが、明るい性格も相まって、先輩社員に支えられて一人前の土木技術者への階段を登っています。いいものを社員が一丸となって作るという熊谷組の社風は脈々と受け継がれています。

B線については27年度の供用が予定されています。首都圏を横断する地下鉄のより安定的な利便性を備えるために、現在も地下では施工が続いています。


Previous Page Go to Page Top