熊谷組ロゴ

熊谷組の今

ものづくり最前線

野火止浄水場高架水槽築造工事

ドゥオーモ(大聖堂)のような水槽内部
ドゥオーモ(大聖堂)のような水槽内部

人が生きていく上で、欠かすことの出来ない水。その水を市内の全域に提供する水道事業は、市民の生活を守るもっとも大切な事業のひとつです。現在、埼玉県の新座市では、水に関わるひとつのプロジェクトが進んでいます。それは高さ33m、直径13mの巨大なステンレス製の高架水槽を築造するもの。災害時には被災者の給水拠点にもなるこの水槽は、メンテナンスや長期のコストなど様々な面から検討が行われ、導入が計画されました。熊谷組はこの事業に多くの技術を込めて施工を行なっています。この夏、大きな水槽が立ちあがった現場を訪ねました。

給水施設ともなる水瓶が誕生!

埼玉県南部に位置する新座市は、地域の半分が東京都に接し、交通の便がよいため住宅都市として大きく発展しており、現在では人口は約16万2千人に上ります。その新座市では、16万人が毎日使う水を支える水道事業で、今注目を集めるプロジェクトが進行しています。それは野火止浄水場内に高さ33m、直径13mのステンレス製の円筒形の水槽を水槽を築造するもので、貯水容量は4,000m³、市民の水瓶としての役割を担います。当社は水槽を設置する土台となる基礎工事、水槽築造工事、そして水槽から浄水場各施設につながる管工事、受水・配水流計室などの工事を担当しています。

新座市上下水道部 土屋 部長からお話を伺いました。

土屋部長
土屋部長

新座市の水道事業は、給水人口 約16万人、給水戸数約7万戸、年間の配水量は約1700万m³を数えます。市内のみなさんに安定した水事業を展開するために、今回の工事では老朽化した水槽を新しい高架水槽に造り替えます。新水槽の建設にあたっては、防災・コスト・景観の3点において特に留意して計画しました。

まず防災としては、東日本大震災以降、耐震化の重要性は大きな課題となっていますが、今回の工事により市内の浄水場施設の耐震化率が100% になり、災害時にもより安定した配水ができるようになります。また新水槽は災害時に給水拠点となることから、非常時に備えた対策として有効です。2つ目のコストについては、コンクリート製とステンレス製の水槽を比較し、コンクリート製の水槽は初期費用が安く済みますがメンテナンスや耐用年数が過ぎたあとの解体に手間がかかること、ステンレス製はそれらが簡単で、解体後は再利用できることなどトータル的なコストを検討し、ステンレス製の水槽を採用しました。3点目の景観ですが、同量の水量を確保するには、コンクリート製はステンレス製よりも径の大きな水槽が必要となります。ここは建設地が狭く、居住地域に隣接していることから、圧迫感が少なく、清々しい形状のステンレス製の水槽が有効だと考えました。

水を逃がさない!つなぎ目にこだわりを

高架水槽の33mという高さは水を送り出すためには必要な高さで、その内部から見上げると西洋の教会等にみられるドゥオーモ(大聖堂)のようにも見え、また整然と並ぶ壁面のステンレス鋼板はレンガの古代建築物のような壮観な印象をもちます。

そうした水槽の壁面を造るのは1つのステンレス製の鋼板で、1段を6つのピース鋼板で構成し、16段積み上げ、高さ33mという巨大な高さへと導いていきます。

2段目  5段目
水槽の施工が進む建設現場(左が2段目を施工、右は5段目に到達)

立ち上がった高架水槽

立ち上がった高架水槽
水槽には新座市のマスコットキャラクター「ぞうきりん」が微笑んでいます。

 

水を扱う構造物であるため、水漏れなどはもちろん許されず、鋼板を組み立てる際、継ぎ目部分に用いる溶接には高度な技術が必要です。そこで活躍しているのが協力会社である森松工業 株式会社の小関さん。小関さんは溶接歴20年以上のスペシャリストで、今回の工事では溶接作業を統括的に管理・指揮しています。

水槽は水圧に耐えられるよう上層段から下層段になるほど板厚が厚くなり、最下層部の厚さは32mmになります。これほどの厚さになると、溶接量が増え、溶接技術の難易度も格段に上がります。小関さんらは、今回、鋼板の継ぎ目部分に円形に保つための補助材をはさみこみ、鋼板の外側と内側から溶接を施します。また鋼板が厚くなると、熱による変形(熱ひずみ)が多く発生してしまうので、熱ひずみの発生を軽減する対策を講じながら作業を進めています。

このような卓越した溶接技術に加えて、万全を期するために溶接部分は通常義務付けられるレントゲン検査・浸透検査に加え、当社では独自に溶接部分に超音波探傷検査を実施しています。また、水に含まれる塩素によって溶接部分に錆びなどの腐食が発生しないように、SUS材と呼ばれるステンレス鋼材の材料は通常使われるものより高品質なものを用い、万全の対策を講じています。

溶接が施された壁面
溶接前 補助材を挟み込んだ状態
溶接前 補助材を挟み込んだ状態

クローズアップ!現場で働くみなさん 溶接のスペシャリスト 小関さん(森松工業(株))

小関さん
小関さん

現場を指揮している小関さんは「良い現場・仕事をするには、工事の計画段階から材料や機械の手配・準備、そしてその日1日という段取りの積み重ねだと思います。「段取り八分」じゃないですが常に段取りが重要になってきます。携わったものが完成したときの達成感もさることながら、今は自分の段取り次第で一緒に働く仲間たちの負担をどう軽減し、安全に効率よく作業できるかを考えることに大きなやりがいを感じます」と話します。小関さんは仕事に対する姿勢は厳しく、時には強い口調で指導することもありますが、休憩中などは仲間と笑いが溢れるオンオフのメリハリがついた様子。小関さんの周到な段取り、的確な指示、オンオフのメリハリがついた姿に若いスタッフからの厚い信頼を集めています。

災害時に活躍する施設ゆえの土台

水槽の重量は満水時で4,000tを超えます。大地震が発生した際、土台が揺らいでしまったら、水槽は倒壊してしまいます。この浄水場は災害が起きた際の、給水拠点としての役割を備えていることから、巨大な水槽を支える土台をしっかり構築することが不可欠です。

土台を構築するにははじめに、43本の杭を打ち、併せて水槽へ水を送る管と、送り出す管なども設置します。杭の設置が終わると、杭の上に鉄筋を細かく配置する基礎版工事を実施していきます。杭の数、鉄筋の配置量も通常の基礎工事よりも多くしっかりした土台を構築していきます。その後コンクリートで基礎版を覆い土台が完成します。工事を担当する佐野所長は「水槽を構築する作業に注目が集まりますが、土台を作る作業も万全の策を盛り込み丁寧に施工しました」と、細部に亘って誠実なものづくりの精神がしっかりと息づいています。

施工前
施工前
杭打後の様子
杭打後の様子
基礎版
基礎版
土台の完成
土台の完成
工事を担当する鈴木さん、佐野所長、山口副所長
工事を担当する鈴木さん、佐野所長、山口副所長

8月上旬には、仮設の足場等がはずされ、33mの輝く水槽が登場しました。これからは水槽と浄水場施設をつなぐ配管を設置する土木工事へと、工事の形態は変化していきます。

1日の工事に関わるのは30人ほどで、佐野所長は「社員が現場に出て、協力会社の方々と一緒にやるところが熊谷組の持ち味です。2月に降った大雪では関係者全員が一緒になって雪かきもしました。人数は多くはないが、作業員の顔やキャラクターも分かり、仕事がしやすいです」と話し、熊谷組の社員は現場が好きで、そして協力会社のみなさんと一緒になってひとつのものづくりに向かう姿勢が感じられます。

前出の土屋部長も「熊谷組の現場は、工程・品質・安全面において熊谷組の社員のみなさんがコントロールしており、施工管理というよりも、その周辺まで含めたマネジメントには誠実さを感じます。これからの工事も頑張って、事故・怪我なく関係者全員が竣工を笑顔で迎えてほしいと思います」と話します。来年1月の完成を笑顔で迎えられるよう現在も日々携わる人が一体となった工事が続いています。

クローズアップ!現場で働くみなさん 現場代理人を務める鈴木さん((株)熊谷組)

入社して9年目を迎える鈴木さんは、現場がスムーズに進むように、施工や工程・安全の管理、発注者や協力会社の方々との調整を行なっています。今回このような大きな鋼構造物に携わるのは初めてで、特に多く使われている高度な溶接技術に接し「本当に奥深い世界だということを実感した」と言い、現在は現場代理人を任され、奮闘中です。

工事中には、地域の方々に声を掛けられることも多く、工事の内容を説明すると「ありがとう、がんばってね」と言われることも。「地域の方々にありがたいと思ってもらえることがこの仕事のやりがいだと感じます」と。また所長をはじめ先輩たちと時間を共にし、「先輩たちは現場や協力会社への目の配り方が凄いなと感じます。いろいろな経験をしてきたことが大きな強みになっている。自分もいろいろ経験して技術者として成長していきたい」と力強く話します。

鈴木さん
鈴木さん
小学校のみなさんが書いた絵
仮囲いには近くの小学校のみなさんが書いた絵が
地域の方々から好評を得ています

【工事概要】

工事名:
野火止浄水場高架水槽築造工事
発注者:
新座市水道事業管理者 新座市長 須田 健治
施工者:
株式会社 熊谷組 首都圏支店
工 期:
平成25年8月1日~平成27年1月30日

Previous Page Go to Page Top